ドラマ。

武道館が暗転した。すると、前方のスクリーンにヴィデオが映し出された。会議室。そこでメアリーJをいかにして売るかの会議が侃々諤々(かんかんがくがく)行われている。メアリーはスタッフたちの「商品として売れなきゃだめだ」と言わんばかりの発言と、いかにして金儲けをするかの話し合いに嫌気がさし、会議を退席する。男が追っていく。「いいか、メアリー。金がなけりゃ音楽は作れないんだ。これは、ビジネスなんだよ」 メアリーが反論する。「ちょっと、覚えておいてよ。私がここにいるのは、お金のためじゃないわよ。ファンのためにいるのよ。ファンが存在するからこそ、私がいるんだから」

そして、会議室を飛び出してやってきた本物のメアリーが武道館の中央に登場。音が鳴り響き、「ユー・リマインド・ミー」が始まった。ドラマ仕立てのオープニングである。

「こんばんは、東京! 今日は私の過去、現在、未来、すべてをみせるわ!」 一挙に4曲目の「ラヴ・ノー・リミット」までノンストップで歌ったメアリーJブライジは、そう宣言した。

前回来日(2002年3月)からおよそ2年2ヶ月ぶり。現在全米でも進行中の「ラヴ&ライフ・ツアー」の日本での公演。すっかり「クイーン・オブ・ヒップホップ」としての風格を漂わせ、今回のライヴは前回同様、彼女のふっきれた部分が全面にでて、しかも大仕掛けなセット、ヴィデオとのリンクなどで一大エンタテインメントショウになっていた。

80分のショウを前回同様、3つのパートにわけて、次々と曲を歌う。下記セットリストで、1曲目から7曲目までが第一部、8曲目から14曲目までが第二部、最後が第三部と仮にここでは名づけておこう。ちょうど、その合間にドレスチェンジをしている。一部と三部は一曲あたり2分程度で、ヒット曲を次々と歌い、展開が実にはやい。もっとも驚かされたのがヴィデオとのリンクと寸劇なども含めた演出。半分以上の作品にヴィデオが付随するので、視覚的にもかなりくる。しかも、曲間がほとんどなく、次々と流れていくので、まったく飽きがこない。

前回のツアーも三部構成で、第二部に70年代のソウルヒットメドレーをいれかなり入魂の歌を聞かせたが、今回は自身の作品をじっくり歌い、聴かせた。彼女が3つの部の中でここにもっとも力をいれていることがよくわかった。歌を聴かせるという点においてもっとも顕著だ。時間もここが43分近くあった。つまり半分以上だ。それは、ヒップホップのクイーンからソウル、R&Bのクイーンへ向かうという彼女の大いなる宣言でもある。彼女は、今、一番何がやりたいのかといえば、歌を聴かせたいのだろうと痛感した。それも、自身で書いた自身の分身である作品を。

二部の途中で彼女は、「私は今、自分が好き。私はメアリーJブライジが大好き」と宣言した。前回も同じように発言していたが、本当にふっきれている様子がわかり、嬉しく思う。

プロモヴィデオを始め、数々のヴィデオとのリンクがじつにうまくできている。この構成はかなり緻密によくできていた。前回よりさらにスケールアップしたショウと言っていいだろう。ただし観客の入りは、2階、3階はかなり空席あり。1時間20分ちょうど。「ファミリー・アフェアー」が終ると、アンコールなしで、いきなり客電がつきショウに終止符が打たれた。

一言で言えばドラマティックなショウだった。More Drama On The Showといったところ。

関連記事。

メアリー・J・ブライジ・ライヴ 『抑圧からの解放』 (2002年3月)
http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/mary20020313.html

Setlist
show started 19.26

01. You Remind Me (Remix)
02. You Don’t Have To Worry/Real Love (Remix)
03. Happy
04. Love No Limit
05. My Love
06. I’m The Only Woman
07. I Can Love You

08. Message In Our Music (Interlude/Summer Madness)
09. Children Of The Ghetto
10. My Life
11. Your Child
12. The Love I Never Had
13. Not Gon’ Cry
14. It’s A Wrap

15. I Want To Be Free (Interlude)
16. No More Drama
17. Love At First Sight
18. Oohh
19. You Are Everything
20. Not Today (Vibe) With Rap
21. Family Affair

show ended 20.46

(2004年5月31日月曜、日本武道館=メアリーJブライジ・ライヴ)

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