【新人プロモーションはいかに対応するか】

学習。

先日の『ソウルブレンズ』にとあるゲストがやってきたのだが、これがちょっとやっかいだったので書いておきたい。実はこの出演者(女性2人組)、シングルのプロモーションでやってきたのだが、出身地は公開しない、名前は公開しない、行っていた音楽学校は公開しない、となにもしゃべらないのだ。まったく話にならないのであきれた。

その昔、アーティストをベールに包むためにプロフィールを秘密にしようなどというやり方があったが、今時、そんなことをやるアーティストも珍しいのだが、まあ、百歩譲ってそういう方針でやるなら、それもいいだろう。だったら、プロモーションで、のこのこラジオなんかに出なくてもいいのではないか。ずっとスタジオにこもって作品を一生懸命作ってればいいだけの話である。

別にこの子たちには、番組側からどうしてもでてくれ、と言って頼んだわけではない。レコード会社からプロモーションで出してください、ということで出演していたのだ。ラジオ番組というのは、ゲスト出演者に「しゃべってもらって」初めて成り立つ。しゃべれない人、しゃべりたくない人は、別に無理して出てくる必要はないのだ。もちろん、アーティストの中には音楽を作る才能はあるが、しゃべりが得意でない人もいるだろう。だが、誠実に対応してくれれば、それはそれでリスナーにもちゃんと伝わる。

インタヴュー嫌いのプリンスだって、ちゃんと初期には取材に答えていたし、今でこそめったにインタヴューを受けないマイケル・ジャクソンだって、デビューしたての頃は膨大な取材をこなしていた。この二人をプリンス、マイケルと比べるのも、プリンスたちに大いに失礼ではあるのだが。事務所の方針なのか、本人たちの考えなのかは知らないが、まあ、この二人組、10年早いよ。(笑) こういう調子だと、接した人たちはみんな応援しようとは思わないんじゃないか。

先日ゴスペラーズの事務所の社長小林さんが、村上氏のライヴ後の打ち上げでひじょうにすばらしいことをおっしゃっていた。たまたまこんどデビューすることになった新人歌手がいて、その人への言葉だったのだが、こうだ。「まず自分のレコードを宣伝してくれる(レコード会社の)プロモーター(宣伝)に気にいってもらわないとダメ。その次に媒体の人、ラジオ局のDJやディレクターやプロデューサー、雑誌や新聞記者などに気に入ってもらう、そして、そういう人たちが気に入ってくれて、やっとその先のユーザー(一般のレコードを買う人)に初めて(作品が)届く。最初はユーザーは一番遠くにいる。まず一番近い、プロモーターの人たちに自分たちの作品や自分たちが気に入ってもらえないで、どうして、それが最後のユーザーまで届くか。届くわけないでしょう。だから一番近いところから一生懸命やらないとだめなんだよ。デビューするまでよりも、本当はデビューしてからのほうが大変なんだ。デビューしたということは、もうその日その瞬間から、例えば、ゴスペラーズと同じ土俵に立つということだから。普通の人にとっては、同じように見えるわけだからね」 いやあ、さすが社長! 日本一!(拍手) 

アーティストの中には、たまに、取材側に対して必要以上に壁を張り巡らす人物がいる。それは、人見知りの性格のため、自分を守りたいため、あるいは、人とのコミュニケーション能力の欠如のためなどいろいろな要因があるのだが、メディアに出るという決断をしたのであれば、コミュニケーションの技術を持ってもらわないと困る。もし、自分はコミュニケーション能力がないと思うなら、メディアには出ないことである。それが一番いい。出ないという選択肢は、それでそれで別にかまわない。

今回のことで、こちら側が学習したこと。それはこうだ。今後ゲストのオファーがあったら、「ちゃんとしゃべれますか」「ちゃんとコミュニケーションできますか」「普通のことで公開できないことなどありませんね」ということを確認してから、出演許諾を出すことにしよう、と。

ENT>ESSAY

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