【「ソウル・ミュージック・ライヴ・VOL.5」Part2】

存在意義。

ゴスペラーズに続いてはニュースをはさんでいよいよ木下航志くんの登場となった。ドラムスのないいわゆる「アコースティック・セット」で、ギター、ベース、サックス、ハーモニカ、コーラス2人らのバックで、航志くんがピアノを弾きながら歌うスタイル。いきなりの「ジョージア・・・」が以前聴いた時よりも深みを増していた。「ソウル・サーチン・トーキング」で航志くんがこの曲を歌ったのは、半年前のこと。この日の「ジョージア」は2005年12月のジョージアということになる。また半年たったら、違うヴァージョンになっているのだろう。

航志くんの声も以前よりも太くなっているような気がした。たぶん、16歳という年齢は日々様々なことが成長しているのだろう。身体も大きくなれば、筋肉も発達する。それにともなって声帯も変化していく。

この日の圧巻その1は、初披露となったカーティス・メイフィールドの「ピープル・ゲット・レディー」。こういうカヴァーは、もうたまらない。かなり練習をしたらしいが、その成果が見事にでた。しかも、スペシャル・ゲストにあのブレンダ・ヴォーンが登場! 

航志くんはのってくると、ところどころで、音がフラットしたりすることがある。また、「た行」「さ行」の発音にちょっと難があり、滑舌(かつぜつ)が若干よくないところがある。が、それを凌駕する声の存在感がある。ということを、終った後の雑談の中でゴスの村上さん、黒沢さんらが言った。その通りだと思う。本当にこの声と歌唱は、天からの贈り物だ。まさに、ギフテッド! これは、この日初めて航志くんを見たブラザー・ケイ・グラントの言葉。

そして、圧巻その2。ブレンダとのデュエットで「アメイジング・グレイス」。これは、まさにアメイジングとしか表現がしようがない。それにしても、ブレンダが一声だすと、本当にその場の空気が瞬間に変わる。後半のブレンダと航志くんのコール&レスポンスはすごいものがあった。こういうことが出来てしまう底力というか。

さらにサプライズ! 6月の「ソウル・サーチン・トーキング」で実現した黒沢さんと航志くんのデュエットが、ここに再現だ。あの「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」で、二人が共演。いやあ、まさかまたこの二人でこの曲が聴けるとは。もともと二人のからみはなかったのだが、2日ほど前に、尾臺さんに「ゴスと航志くんのからみがあればいいですね」というような感じのメールを送っていたら、どうもそれが伝わったらしく、さらに、リスナーからのそのような要望も多数あったようで、前日に急遽、これが決まった。前日夜遅く、黒沢さんから「明日航志くんとユーヴ・ガット・ア・フレンド、一緒にやるよ」というメールが来て、驚嘆した。

6曲目の「絆」は航志くんとお母さんの絆を歌った作品だが、2004年8月のライヴで、タイトル未定のまま歌われていた曲だ。それがいよいよ完成しレコーディングされた。

航志くんは結局7曲歌ったわけだが、やはり、カヴァーのほうが圧倒的にインパクトがある。

航志くんに続いては、今度はフリー・ファンクというPファンク、ロジャーなどをベースにしたファンク・バンドが登場した。96年に結成されたグループということだったが、初めて聴いた。最初、ちょっと観客もバンドも温まっていなかったが、4曲目でヴォコーダーにゲストのシュンタロウさんという方が登場していきなりヒートアップした。彼が思い切りヴォコーダーを遣ったのが、ザップのカヴァー「ドゥ・イット・ロジャー」と「ソー・ラフ・ソー・タフ」。後半は一気にファンク一色に染めてくれた。今度一度、ゆっくりフルのライヴを見てみたい。

そして、アーティスト最後がブラザー・トム。ピアノ1本の伴奏で彼が歌った。始まるまで、ピアノだけで一体何をやるのか、まったく見当つかなかったが、これにはやられた。なんとレイ・チャールズの「アイ・キャント・ストップ・ラヴィン・ユー」、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」を日本語にして歌ったのだ。トムさんによれば、その日に日本語を作ったということで、後者の「がんばんべい、おじさん」にはまいった。前者の日本語もなかなかはまっていた。これはおもしろい試みだ。

それにしても、トムさんは話がうまい。真の語り部だ。その話術に本当に引き込まれる。子を持った父という立場での語りをいれて、歌った3曲目。これは、トムさんたちがやったミュージカル『ミラクル・ブラインド・ボーイズ』の挿入歌「ブラインド・ラヴ」だった。その歌詞におそらく涙した人も多いのではないだろうか。

いやあ、密度の濃い5時間。本当にNHKでなければできなような番組だ。それにしても濃い。長丁場、疲れた。(笑) でも、また、次回もよろしく。楽しみにしてます。フリーファンクのような地道に活躍しているソウル系バンドをサポートする意味でも存在意義のでてきた番組になっている。僕も紹介したいバンドをいくつか思いつくので、ぜひどんどん新人に機会を与えてくれればと思う。

Setlist: Kishita Kohshi

01. Georgia On My Mind
02. 通り雨
03. 太陽の道 風の道
04. People Get Ready
05. Amazing Grace
06. 絆
07. You’ve Got A Friend

Setlist: Free Funk ftg. Shutarou, Orito

01. Midnight Jam
02. (Not Just) Knee Deep
03. Maggot Brain (シュウタロウ)
04. Do It Roger〜So Ruff, So Tuff
05. 鮑の艶話 (オリト、シュウタロウ)
06. 自由自在
07. Freefunk Shuttle

Setlist: Brother Tom

01. 愛さずにはいられない(日本語)
02. ドック・オブ・ザ・ベイ(日本語)
03. ブラインド・ラヴ (日本語)

(2005年12月23日金、木下航志、フリーファンク、ブラザー・トム・ライヴ〜NHK−FM『ソウル・ミュージック』ライヴVol.5)

ENT>MUSIC>LIVE>Kishita Kohshi, Freefunk, Brother Tom
ENT>MUSIC>RADIO>"Soul Music"-NHK-FM

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