【「ソウル・サーチン・ザ・セッション」いよいよ土曜日】

リハーサル。

それにしても、かなり盛りだくさんな内容になっている。木曜、都内のスタジオで長時間リハーサルをやった。ケイリブとソウル・サーチャーズたちが一堂に会し、ルーサー曲の練習、音合わせ。音が出来上がっていくのを聴いていると本当にわくわくする。

最初がバンド、途中からシンガーたちがやってきて、歌っていく。ディーヴァ・グレイに初めて直接会った。気のいいとてもフレンドリーな人物だった。彼女の歌のリハを終えた後、少々雑談。すると、しゃべるしゃべる。

ルーサーとの思い出話とか、ニューヨークのスタジオ・ミュージシャンの話とか、「わかった、わかった。とめといて、本番までとっておいてください」というくらいの立て板に水状態だ。おもしろかったのは、シックの最初のヒット「ダンス・ダンス・ダンス」をルーサーと一緒にレコーディングした時のこと。「あの時のギャラは、1曲歌って115ドルだったわ。まあ、通常のセッションとしては、OKっていう金額かしら。で、それが大ヒットして、次の『ル・フリーク』の時は、『ワン、ツー、ア〜〜、フリークアウトッ』っていう歌詞でしょ。ルーサーと一緒に、レコーディングが終わったら馬鹿みたいな歌詞ね、と、馬鹿にしてたのよ。(笑) そしたら、その何週間か後に、ルーサーが電話してきた。『おい、信じられないぞ、ビルボードを見てみろ、あのアホな曲がナンバーワンになってる! (笑) この曲はアトランティック・レコードの史上もっとも早いスピードでナンバーワンになった曲なのね」

で、「ル・フリーク(おしゃれフリーク)を歌った時のギャラはいくらだったんですか」と尋ねた。「スリー・フィフティーン(315ドル)よ」 しかし、この中途半端な15ドルはなんなんだ? (笑) 「でも、この曲にはまだあとの話があるのよ。(車の)フォードがCMを作る時に、『フリーク・アウト』をもじって、『ブレイク・アウト』という曲を録音したの。それを私が歌ったのね。ルーサーは参加しなかった。その曲で私は4万ドルもらったのよ(笑)」 へ〜〜〜、すごいっ。

ディーヴァは現在音楽学校で、ヴォーカル・トレーニングの先生をしている。日本人は日本語の発声の仕方ゆえに、歌う声の出し方がなかなかむずかしい、というかなり専門的な話をしてくれた。日本語は、特に小さな声でしゃべると「口元でしゃべる」感じで、英語を話す時は「おなかから声をだしている」感じがある。もちろん、日本語もマイクを通して、ちゃんとしゃべろうとすると、おなかから声を出すようになるが、日本語がそれほどはっきりと声をださなくてよい言語らしく、その違いを痛切に感じるという。

少々ネタばれになるが、彼女が歌う予定の曲をそっとお知らせしよう。ディーヴァ・グレイが歌う曲は、ルーサーの最後のスタジオアルバム『ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー』に収録されている「バイ・ミー・ア・ローズ(バラを買って)」という曲だ。何年か連れ添った夫婦の間にはもう愛がないのかもしれない。愛している気持ちを、表して欲しいと願う彼女。そんな彼女の願いは、「バラを買って」という些細なもの。

ルーサーが倒れた後、有志が集まりテレビ番組『オプラ・ウィンフリー・ショウ』で、ルーサーがよくなるようにと、みんなでこの曲が歌われた。ディーヴァはその番組を見ていて、自分も歌うならこの曲をぜひ歌いたいと申し出てくれた。改めてCDで聴くと、なんとも素晴らしいバラードだ。もし、ルーサーのアルバムをお持ちの方は、ぜひ予習してみるのもいいだろう。

先ほど、彼女がリハで歌っているところを見て、素晴らしいなと感動した。そして、ちょっとしたアイデアを思いついた。土曜日に『ソウル・サーチン・ザ・セッション』にいらっしゃる方の中で、もしよければ、一輪でいいのでバラの花をお持ちいただけないだろうか。彼女は第二部でトーク・セッションの後、この曲をケイリブのピアノ演奏で歌う。その時、途中から、ディーヴァにバラの花を観客席から彼女にあげるというのはいかがだろうか。僕もバラを何本か用意していくつもりだ。

シンガーが観客にバラを手渡すシーンは何度も見たが、観客からシンガーにバラを渡すというのは見たことがない。もし、そんなことをやってもいい、と思われた方は、ぜひ当日1本のバラをお持ちください。(笑) 「Buy Me A Rose」と、ローズは単数なのだ。(笑) 1本でいいから、バラでも買って、というニュアンスなんでしょう。

こんな歌です。

『バイ・ミー・ア・ローズ』

彼は、彼女が欲しいと思ってるものをすべて与えようと
一生懸命働いている
だが、そんなものは彼女の心には触れないので、
彼女は涙にくれる
夜遅く帰ってきて、おやすみのキスをするために、彼女を起こす
彼女のこんな思いを、彼は読めないのだろう

「1本でいいからバラを買って、
仕事場から1本でいいから電話をして
私のためにドアを開けて、別になにも損はしないでしょう
あなたの愛を心の目で語ってほしいわ
私の人生でもっとも欲しいものが、そんな些細なことなの」

こうして彼女は長年、孤独を感じてきた
彼に何かまちがったことをしてしまっただろうか
彼を振り向かせるためには、なんでもしていたからか
そんなことして、何か変わるのか

男は年を取れば取るほど、愛を表現しなくなる
だが、女が愛を与えれば与えるほど、男にもわかるはずだ
そう、これは君と僕の物語だったんだ

だから、僕は帰り道、バラを買ってきた
僕が傷つけてしまった君の心を癒すために
僕の愛を、僕の目に感じて欲しい
これから一生、僕はちゃんと君を愛していく
君を抱きしめ、些細なことを一生やっていくよ

(訳詞:ザ・ソウル・サーチャー)

Buy Me A Rose
(Written by Jim Funk & Erik Hickenlooper)
(Sung by Luther Vandross)

He works hard to give her all he thinks she wants
But it tears her apart cause nothing’s for her heart
He pulls in late to wake her up with a kiss goodnight
If he could only read her mind, she’d say?

[CHORUS]

Buy me a rose, call me from work
Open a door for me, what would it hurt
Show me you love me by the look in your eyes
These are the little things I need the most in my life
Now the days have grown to years of feelin’ all alone
As she sits and wonders if all she’s doin? is wrong
Cause lately she’d try anything just to turn his head
Would it make a difference if she said, if she said?

[CHORUS]

[BRIDGE]
And the more that he lives the less that he tries
To show her the love that he holds inside
And the more that she gives the more that he sees
This is the story of you and me
So I bought you a rose on the way home from work
To open the door to a heart that I hurt
And I hope you notice this look in my eyes
Cause I’m gonna make things right for the rest of your life
And I’m gonna hold you tonight, tonight
Do all those little things for the rest of your life

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