【両手いっぱいの薔薇】

薔薇。

ソウル・サーチャーズのメンバーがステージにあがり、ケイリブが紹介を始めた。ジーノ(日野賢二)は、足元にマイ扇風機を持っていて、そこから吹いてくる風で彼の前髪がふわふわ揺れる。マイケル・ジャクソンみたいだ。(笑) 彼の説明では「暑くて汗かくと譜面読めなくなるからね」とのこと。ケイリブが言う。「ルーサーには本当にいい曲がたくさんある。次にやるときには、2晩にわたってやらないとね」 ということで、ここでは4曲をさらりとメドレーに。

そして、サプライズ・ゲストでゴスペラーズから黒沢さん登場。やはりレコーディングで来れない可能性が高かったのだが、水曜あたりに電話で来れることになった。元々もし来れることになったら、「ソー・アメイジング」か「ノックス・ミー・オフ・マイ・フィート」を歌いたいというリクエストだったので、ケイリブとは「ソー・アメイジング」を準備。黒沢さんが来られない場合は、ケイリブとマルとのデュエットで歌われることになっていた。

さすがに黒沢さんはステージ慣れしていて、一気につかむ。そして、マルも堂々とした歌いっぷり。見事なデュエットだった。これを聴いていた航志君は後から僕に「くろさわさんとまるのでゅえっとは、100000てんですよ」とメールをくれた。

「歌い手側から言わせてもらうと、スティーヴィーとルーサーの歌い方は真逆の人なんですよ。スティーヴィーは押しの人、ルーサーは引きの人。(歌い方を一瞬やってみせる) だから、(二人が両極端なので)むずかしいんですけど・・・」と黒沢さんが解説。とはいうものの、スティーヴィー節とルーサー節を端々に入れ込み、さらに黒沢節もまぶし、このあたりは、歌い方の徹底的な研究家である黒沢さんらしさが存分にでている。「僕はぱっとひらめきで歌えないんで、スティーヴィーを歌うとなると、100回聴くんですよ」という。黒沢さんのこの研究熱心なところは、頭が下がる。しかも彼の「歌いたがり」のところは大好き。(笑) 

黒沢さん、マルに続いて、シャンティの2度目の登場。ここではアップテンポの「ギヴ・ミー・ザ・リーズン」。マルやケイリブのバックコーラス、ゲイリーのサックスソロ、ちょっとアーニー・アイズレー風のガッツのギターなど、いかにもソウルっぽいバンドサウンドがまとまっている。

そして、今回のルーサー・トリビュートの中でのハイライトのひとつが、ルーサーと親交のあったディーヴァ・グレイの登場だ。ディーヴァは、ルーサーのいろいろな話を、おもしろおかしく話してくれた。「みなさんはご存知ないと思いますが、ルーサーは、私、ロビン・クラークなどとともに、シックのアルバムで歌っていたんです」 「ルーサーはふだんはとってもおもしろい人なんです」 「私もダイエットをしていて、新しいダイエット方法があると、電話してきた」 「ルーサーは、倒れて病床にあった時でも、見舞いに行ったら、一言『アイ・ラヴ・フード』(食べることが大好きなんだ)と言ってた。(笑)」 「シックのレコーディングのメンバーと(ジャケットなどに映ってる)写真のは違うのよ。(コーラスをしているメンバーが違うという意味)」 「遅刻していったら、ナイル・ロジャース(プロデューサー)がギャラを差し引くと行った。ルーサーは、仕事をした分はしっかりギャラをもらうべきと、彼らと戦ってくれた(笑)」 

チェンジのヒット曲「パラダイス」もディーヴァが歌っていた。すると、ケイリブが反応。すぐにピアノでワンフレーズを弾き始め、ディーヴァも一緒に歌いだす。しばし、「パラダイス」が歌われ、会場も拍手して大歓迎。

トークを終えてディーヴァが「バイ・ミー・ア・ローズ」を歌う。ルーサーが病床にあったときに、友人たちがよくこの曲をルーサーの枕もとで歌っていたという。ディーヴァは、ゴスペル、ソウルだけでなく、実はクラシックも歌えるようで、ここではしっとりと感動的に少しオペラ風に歌いあげた。しかも、この曲は元々男性(ルーサー)の視点で歌われたもの(6月30日付けブログの歌詞を参照のこと)だが、ディーヴァは女性なので、しっかり女性の視点で歌うために、歌詞の一部を変えていたのだ。

So I bought you a rose on the way home from workのところをYou bought me a rose に、Do all those little things for the rest of your lifeをDo all those little things for the rest of my life にしていた。なるほど、さすがだ。

そして、2番の後半あたりから、一輪の薔薇が彼女の元に。実は僕のほうでも少し用意していたのだが、曲が終わると一斉に薔薇を持った人たちがステージにかけつけたのだ。途中から、ディーヴァもさすがに驚いたようで、「オー・マイ・ゴッド」を連発。ディーヴァが持ちきれなくなり、ゲイリーが代わりに受け取って持つほどまでに。ディーヴァの両腕は抱えきれないほどの薔薇で一杯になった。ディーヴァも感激しただろうが、僕も感激しました。ディーヴァはおそらく汗もかいていたがきっと涙も混ざっていたと思う。

ディーヴァが叫んだ。「オー・マイ・ゴッド、誰か助けて。ルーサー、これはあなたのものよ。アイ・ミス・ユー・ソー・マッチ!」 両腕に薔薇を抱えてマイクをもてなかったので、僕が彼女の口元にマイクを持っていった。「アメリカでは、ブラック・ミュージシャンはなかなかポップへクロスオーヴァーできないけれど、ルーサーはそのことについて戦っていました。いいものは、いい。いいものはいい。(good is good is good...) でも、ルーサーは(グッドよりも上の)エクセレント(すばらしい)でした。ルーサーは素晴らしいものを作るために、努力し戦っていました。この光景をルーサーが見ていたら、どれほど嬉しかっただろうか、きっと喜んでいたと思います」

みんなが薔薇を手渡すのに、しばし時間がかかった。4-50本はあったのかなあ。驚きました。薔薇を持ってきていただいたみなさん、本当にありがとうございます。

興奮冷めやらぬうちに、最後のゲスト登場。昨年のミニアルバムでルーサー曲「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」をカヴァーしていた和田昌哉さんだ。プログラム進行的には、このディーヴァの後に歌う人は誰でもつらいものになる。逆にしておけばよかったと後で反省。

実はここは、最初は「ア・ハウス」だったが、誰も「ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー」を歌わない感じだったので、和田さんの歌で「ダンス・・・」を行こうということにしていた。ところが、リハのところで高山さんが「ダンス・・・」をCDでフルでかけることになったので、また「ア・ハウス・・・」に戻していただいた。和田さん、バタバタしてすいませんでした。

最後はアップテンポの「ラヴ・ザ・ワン・ユア・ウィズ」(スティーヴブン・スティルスのオリジナル、アイズレー・ブラザースのカヴァーでも有名)を全員で。全員総立ちになった。ミュージシャンがステージから引いて、また戻る時間がもったいなかったので、ケイリブが「戻ったことにして、アンコールをやろう」といい、アンコール曲へ。

これもルーサーがアルバム『ザ・ソングス』でカヴァーしていたマクファーデン&ホワイトヘッドの作品「エイント・ノー・ストッピン・アス・ナウ」だ。このアップテンポ2曲、予想外によかった。ライヴバンドとしてのグルーヴがとてもよかった。僕は、「ラヴ・ザ・ワン・・・」より、「スーパーレイディ」あたりで終わって欲しいとリクエストしたのだが・・・(笑)。結果大正解だった。「エイント・ノー・ストッピン」はもちろん大好きな曲。ディーヴァがさきほどとはまったく違ったファンキーな歌声を聴かせた。航志くんの声もすごい。熱い暑いアンコール終了は、23時20分だった。

2nd Set

show started 21:45
01. (medley) Don’t You Know That (Kaleb & The Soul Searchers)
--Since I Lost My Baby (Kaleb& The Soul Searchers)
--Your Secret Love (Kaleb & The Soul Searchers)
--Wait For Love (Kaleb & The Soul Searchers)
02. So Amazing (Kurosaw Kaoru & Maru & The Soul Searchers)
03. Give Me The Reason (Shanti & The Soul Searchers)
--. Le Freak (a riff of the song) (Diva)
--. Paradise (a riff of the song) (Diva)
04. Buy Me A Rose (Diva Gray & Kaleb James,Gats, Gary)
05. A House Is Not A Home (Wada Masaya & Kaleb James)
06. Love The One You’re With (Soul Searchin’ All Stars)
Enc. Ain’t No Stoppin’ Us Now (Soul Searchin’ All Stars)
show ended 23:20

(2006年7月1日土曜、目黒ブルースアレー=「ソウル・サーチン・ザ・セッション VOL.1〜トリビュート・トゥ・ルーサー・ヴァンドロス」)

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