【ブレンダ・ヴォーン・ソロ・ライヴ〜「レディー・ソウル」の語彙が蘇る】
レディー・ソウル。
ブレンダは自らのことを「ソウル・シンガー」と呼ぶ。日本を本拠に活躍する本格派女性ソウル・シンガー、「ソウル・サーチン」でも歌ってくれているブレンダ・ヴォーンのソロとしてのほぼ初のフル・ショウがブルースアレーで行われた。バンドも含めて、現在東京、いや、日本で見られるこれだけのレディー・ソウルのライヴは他にないだろう。
ライヴの冒頭、彼女の古い映像や現在のインタヴューなどが紹介され、最強のソウルバンドが登場し、インストゥルメンタルからスタート。ダニー・ハザウェイの「ゲットー」だ。後半からケイリブ・ジェームスらのヴォーカルがはいり、バックコーラスのロビー・ダンジーがからみ、最後にフィリップ・ウーのMCでブレンダが登場する。ジェイ・スティックスのドラムス(前日、コットンでケニー&シャンティのドラムを叩いたという。ドラマーの来日が一日遅れたため急遽プレイしたそうだ)、クリフォード・アーチャーのベース(この日はものすごく、ベースの音がよく聴こえ、いつになくグルーヴ感がすごかった)、そして、ファンキーな石成正人さんのギター。フィリップとケイリブのダブルキーボードは、今、東京で聴かれるベスト・ファンキー・キーボード横綱2人を揃えた感じだ。東京ズ・ベスト・ソウルバンドと言ってもいい。
ファーストセットは、「かなりナーヴァスになった」とブレンダは言っていたが、「アイム・ゴーイング・ダウン」から堂々とした歌いっぷり。このところすっかりおなじみになった「ラヴ・チェンジス」などすっかりこなれてきた。さらに、プリンス、アリシアらで知られる「ハウ・カム・ユー・ドント・コール・ミー」は後半に独自のアドリブいれておもしろくしていた。
「ワースト・イズ・オーヴァー」は、彼女が数年前に書いたオリジナル曲。フィリップのアコースティック・ピアノも印象的な、そして、歌詞の内容も感動的な1曲だ。いろいろな悪いことが重なって起こったとしても、もう最悪の時は終わった、これからは最高のことが起こるというひじょうに前向きな、ゴスペル的要素もある作品だ。
セカンドセットは、ブレンダがよりリラックスして歌う。最初のショウストッパーは、アレサでおなじみの「ナチュラル・ウーマン」。アレサ、パティー・ラベル、グラディス・ナイト、シャカ・カーンあたりが、彼女の大フェヴァリットということはよくわかるが、この作品などアレサのものを下敷きにすっかりブレンダ自身のものにしている。後半の迫力といったらない。あんなに小さな身体のどこから、あれだけの声がでてくるのだろう。見事、完璧だ。
そして、前回のフィリップのライヴで初めて知った「ゴーイング・アップ・ヨンダー」。聴くのは二度目だがやはり、とてもいい曲。グラディスの「ニーザー・ワン・オブ・アス」は、観客から男性3人をステージにあげて、ピップスにしたてあげ、みなを楽しませた。これは、彼女がオークランド時代からやっていたパフォーマンスだという。地元でもずいぶんと受けていたそうだ。ブレンダのエンタテイナーとしての役割も実に見事。観客とのやりとりもうまいので、客は決して飽きることがない。シーズンズ・ヴェテランということだ。
そして、本編最後がパティー・ラベルの作品。この日、遊びに来ていた東京在住のシンガーたちをステージにあげた。アルとグリニスのマーティン兄弟、ダニエル・モーガン、そして、ブラジル系のイナシオ、そして、我らがマル。それぞれにちょっとソロを取らせたところがあった。そんな中、マルは日本語で例によってメロディーに載せ「ブレンダ・呼んでくれてありがとう・・・」と歌う。周りの歌い手はみなアメリカ人の中でのその日本人孤軍奮闘ぶりは、メジャーリーグにひとり出向いて後の日本人活躍に門戸を開いた孤高の野茂選手を思わせるくらい、感動した。ゲスト全員のコーラスは、ミニ・ゴスペル・クワイアーとなってまさにブルースアレーを「ゴスペル・アレー」に変えていた。
そして、アンコールはカーク・フランクリンの最新作からパトリース・ラッシェンの「ハヴンチュー・ハード」をサンプリングした「ルッキング・フォー・ユー」。最後のコーラスを観客に歌わせ、それが続く中、ミュージシャンたちがひとりずつステージを去っていく演出もよかった。
これだけの女性ソウル・シンガーのライヴは、なかなか見られない。立ち見も出る盛況で、これからブレンダには、ぜひ定期的にライヴをやってほしい。彼女が「ソウル・シンガー」と名乗る意味がよくわかったライヴだった。そして僕は彼女のこのフルショウを見て、「レディー・ソウル」という言葉がぴったりだと思った。しばらく辞書のどこか片隅に追いやられていた「レディー・ソウル」というヴォキャブラリーが、今まさにブレンダによって蘇えったのだ。ブレンダはもはや日本を代表する「レディー・ソウル」だ。Lady Soul Is Here To Stay, そして、Soul Music Is Here To Stay.
■Members
Brenda Vaughn (Vocal)
Philip Woo (Keyboard, Piano)
Kaleb James (Keyboard)
Clifford Archer (Bass)
Jay Stix (Drums)
Ishinari Masato (Guitar)
Robie Danzie (Background Vocal)
maru (Backgroud Vocal)
Setlist ( ) = Original Artist
0. Video footage
show started 19:50
1. Ghetto (Donny Hathaway)
2. I’m Going Down (Rose Royce)
3. Love Changes (Mothers Finest, Kashif & Melisa Morgan)
4. How Come You Don’t Call Me Anymore? (Prince, Stephanie Mills, Alicia Keys)
5. Sweet Thing (Rufus Featuring Chaka Kahn)
6. Stop On By (Bobby Womack, Rufus)
7. The Worst Is Over (Brenda Vaughn)
8. Ain’t Nobody (Rufus Featuring Chaka Kahn)
show ended 20:45
Second Set
show started 21:18
1. Always There (Ronnie Laws, Side Effect)
2. Sistah Shakin (Brenda Vaughn)
3. (You Make Me Feel Like A) Natural Woman (Aretha Franklin, Carol King)
4. Going Up Yonder (Tramain Hawkins)
5. Neither One Of Us (Wants To Be The First To Say Goodbye) (Gladys Knight & Pips)
6. You’re My Friend (Patti LaBelle) (with all friends, Maru, Robbie, Glynis Martin, Al Martin, Daniel Morgan, Inacio)
Enc. Looking For You (Kirk Franklin, Patrice Rushen)
show ended 22:36
(2006年9月19日火曜、目黒ブルースアレー=ブレンダ・ヴォーン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Vaughn, Brenda
2006-175
レディー・ソウル。
ブレンダは自らのことを「ソウル・シンガー」と呼ぶ。日本を本拠に活躍する本格派女性ソウル・シンガー、「ソウル・サーチン」でも歌ってくれているブレンダ・ヴォーンのソロとしてのほぼ初のフル・ショウがブルースアレーで行われた。バンドも含めて、現在東京、いや、日本で見られるこれだけのレディー・ソウルのライヴは他にないだろう。
ライヴの冒頭、彼女の古い映像や現在のインタヴューなどが紹介され、最強のソウルバンドが登場し、インストゥルメンタルからスタート。ダニー・ハザウェイの「ゲットー」だ。後半からケイリブ・ジェームスらのヴォーカルがはいり、バックコーラスのロビー・ダンジーがからみ、最後にフィリップ・ウーのMCでブレンダが登場する。ジェイ・スティックスのドラムス(前日、コットンでケニー&シャンティのドラムを叩いたという。ドラマーの来日が一日遅れたため急遽プレイしたそうだ)、クリフォード・アーチャーのベース(この日はものすごく、ベースの音がよく聴こえ、いつになくグルーヴ感がすごかった)、そして、ファンキーな石成正人さんのギター。フィリップとケイリブのダブルキーボードは、今、東京で聴かれるベスト・ファンキー・キーボード横綱2人を揃えた感じだ。東京ズ・ベスト・ソウルバンドと言ってもいい。
ファーストセットは、「かなりナーヴァスになった」とブレンダは言っていたが、「アイム・ゴーイング・ダウン」から堂々とした歌いっぷり。このところすっかりおなじみになった「ラヴ・チェンジス」などすっかりこなれてきた。さらに、プリンス、アリシアらで知られる「ハウ・カム・ユー・ドント・コール・ミー」は後半に独自のアドリブいれておもしろくしていた。
「ワースト・イズ・オーヴァー」は、彼女が数年前に書いたオリジナル曲。フィリップのアコースティック・ピアノも印象的な、そして、歌詞の内容も感動的な1曲だ。いろいろな悪いことが重なって起こったとしても、もう最悪の時は終わった、これからは最高のことが起こるというひじょうに前向きな、ゴスペル的要素もある作品だ。
セカンドセットは、ブレンダがよりリラックスして歌う。最初のショウストッパーは、アレサでおなじみの「ナチュラル・ウーマン」。アレサ、パティー・ラベル、グラディス・ナイト、シャカ・カーンあたりが、彼女の大フェヴァリットということはよくわかるが、この作品などアレサのものを下敷きにすっかりブレンダ自身のものにしている。後半の迫力といったらない。あんなに小さな身体のどこから、あれだけの声がでてくるのだろう。見事、完璧だ。
そして、前回のフィリップのライヴで初めて知った「ゴーイング・アップ・ヨンダー」。聴くのは二度目だがやはり、とてもいい曲。グラディスの「ニーザー・ワン・オブ・アス」は、観客から男性3人をステージにあげて、ピップスにしたてあげ、みなを楽しませた。これは、彼女がオークランド時代からやっていたパフォーマンスだという。地元でもずいぶんと受けていたそうだ。ブレンダのエンタテイナーとしての役割も実に見事。観客とのやりとりもうまいので、客は決して飽きることがない。シーズンズ・ヴェテランということだ。
そして、本編最後がパティー・ラベルの作品。この日、遊びに来ていた東京在住のシンガーたちをステージにあげた。アルとグリニスのマーティン兄弟、ダニエル・モーガン、そして、ブラジル系のイナシオ、そして、我らがマル。それぞれにちょっとソロを取らせたところがあった。そんな中、マルは日本語で例によってメロディーに載せ「ブレンダ・呼んでくれてありがとう・・・」と歌う。周りの歌い手はみなアメリカ人の中でのその日本人孤軍奮闘ぶりは、メジャーリーグにひとり出向いて後の日本人活躍に門戸を開いた孤高の野茂選手を思わせるくらい、感動した。ゲスト全員のコーラスは、ミニ・ゴスペル・クワイアーとなってまさにブルースアレーを「ゴスペル・アレー」に変えていた。
そして、アンコールはカーク・フランクリンの最新作からパトリース・ラッシェンの「ハヴンチュー・ハード」をサンプリングした「ルッキング・フォー・ユー」。最後のコーラスを観客に歌わせ、それが続く中、ミュージシャンたちがひとりずつステージを去っていく演出もよかった。
これだけの女性ソウル・シンガーのライヴは、なかなか見られない。立ち見も出る盛況で、これからブレンダには、ぜひ定期的にライヴをやってほしい。彼女が「ソウル・シンガー」と名乗る意味がよくわかったライヴだった。そして僕は彼女のこのフルショウを見て、「レディー・ソウル」という言葉がぴったりだと思った。しばらく辞書のどこか片隅に追いやられていた「レディー・ソウル」というヴォキャブラリーが、今まさにブレンダによって蘇えったのだ。ブレンダはもはや日本を代表する「レディー・ソウル」だ。Lady Soul Is Here To Stay, そして、Soul Music Is Here To Stay.
■Members
Brenda Vaughn (Vocal)
Philip Woo (Keyboard, Piano)
Kaleb James (Keyboard)
Clifford Archer (Bass)
Jay Stix (Drums)
Ishinari Masato (Guitar)
Robie Danzie (Background Vocal)
maru (Backgroud Vocal)
Setlist ( ) = Original Artist
0. Video footage
show started 19:50
1. Ghetto (Donny Hathaway)
2. I’m Going Down (Rose Royce)
3. Love Changes (Mothers Finest, Kashif & Melisa Morgan)
4. How Come You Don’t Call Me Anymore? (Prince, Stephanie Mills, Alicia Keys)
5. Sweet Thing (Rufus Featuring Chaka Kahn)
6. Stop On By (Bobby Womack, Rufus)
7. The Worst Is Over (Brenda Vaughn)
8. Ain’t Nobody (Rufus Featuring Chaka Kahn)
show ended 20:45
Second Set
show started 21:18
1. Always There (Ronnie Laws, Side Effect)
2. Sistah Shakin (Brenda Vaughn)
3. (You Make Me Feel Like A) Natural Woman (Aretha Franklin, Carol King)
4. Going Up Yonder (Tramain Hawkins)
5. Neither One Of Us (Wants To Be The First To Say Goodbye) (Gladys Knight & Pips)
6. You’re My Friend (Patti LaBelle) (with all friends, Maru, Robbie, Glynis Martin, Al Martin, Daniel Morgan, Inacio)
Enc. Looking For You (Kirk Franklin, Patrice Rushen)
show ended 22:36
(2006年9月19日火曜、目黒ブルースアレー=ブレンダ・ヴォーン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Vaughn, Brenda
2006-175
コメント
You are always great. I really enjoy your performance.
Keep up your good work. You like it, "Lady Soul"!
Yoshioka