【ソウル談義〜恵比寿の夜は更けて】

一気通貫。

ジョニー・ギルのライヴを黒沢さんと一緒に見に行ったのだが、ショーが始まる前に、なんと松尾潔さんが山下達郎さんと来ていた。近くで食事をしていて、ウィスパーズかジョニー・ギルを見に行こうという話になり、達郎さんがウィスパーズは見たことがあったので、ジョニー・ギルにやってきたという。ライヴ後、どこかへ行きましょうということになった。

さらにショーが終わるとブラック系のライターでもある林剛さんが元ワーナーの湯山さんといらしていて、達郎さんたちと話していた。そこで、みんなで恵比寿のソウルバー「アリオリ」に行くことになった。階段を上がって外にでると、そこにジャズ界の重鎮、伊藤八十八さんが通りかかり、松尾さんが「今から恵比寿で飲むんですけど、一緒にいかがですか」と誘ったところ、即OK。車3台に分乗し移動した。すごい成り行き。いいね、こういうの。黒沢さんは翌日、横浜でライヴだが「達郎さんに誘われたら、行かないわけにいかないでしょう!」と半ば苦笑しながら覚悟を決めた様子。

アリオリに入るや否や、達郎さん、「ここは80年代はかかるけど、サザン系がかからないんだよなあ」と宣言。それを受けて、マスター小野寺さん、いきなりジャッキー・ムーアのケイヴェット盤『メイク・ミー・フィール・ライク・ア・ウーマン』をかける。(笑) 

ジョニー・ギル談義は、ライヴ自体が短かったこともあり、あっさり終わり来年1月9日に目黒のブルースアレーでやるディーヴァ・グレイ・ショーの話になった。ニューヨークのトップ・スタジオ・セッション・シンガーで、自分名義のアルバムも出してるんですよ、と説明すると、ふと思い出したように、「ああ、それ、俺、持ってるよ!」と。おおっ、さすが。あのアルバムを持ってる人はなかなかいない。そしてちょうどできたばかりのフライヤーを渡す。ぜひ遊びにいらしてください、と言うと「行く、行く」。

林さんとは初対面。お互いに名前は知っていた。前日の映画『ドリームガールズ』を林さんも見ており誰が誰かという話になった。そこで、僕がジェイミー・フォックスがベリー・ゴーディーで、エディー・マーフィーがジャッキー・ウィルソンで、ビヨンセはダイアナ・ロスで〜〜みたいな話をしたところ、ほぼすべて意見が一致した。林さんは、最後のシーンでの「ドリームスは4人組でした」というところがデスティニーズ・チャイルドを想起させると言い、僕もえらく納得。下記日記でのその部分の(C)(著作権)は、林さんです。(笑) 

December 22, 2006
"Dreamgirls"(Part 2) : Between Fiction And Non-Fiction
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_12_22.html

一方で黒沢さんは達郎さんと、達郎さんのアルバムの話をしている。黒沢さんからすると達郎さんは大先輩で、『フォー・ユー』のアルバムは、3枚持ってるとか、『オン・ザ・ストリート・コーナー』は4枚持っているとか、すごい話が続々でてきた。なんで、そんなになるかというと、アナログ・アルバムでまず買い、普通のCDが出て買い、デジタル・リマスターのCDが出て買いとかでどんどん増えてしまったそうだ。

そうこうするうちに、松尾さんが携帯で話をしながら、誰かを迎えにちょっとだけ店を出た。そして、戻ってくるや、誰を連れてきたかというとなんと、久保田利伸さん。いやあ、びっくり。やはり近くで食事をしていたとかで、松尾さんの誘いに乗ってやってきたみたいだ。

しかし、山下達郎→久保田利伸→黒沢薫→松尾潔とまさに日本のソウル・ミュージックという役で一気通貫ではないか! 達郎さんは、久保田さんに「で、あなたは誰が一番好きなの?」と質問。この質問もすごい質問だが、「いやあ、よく聴かれるんですが、誰ひとりって絞れないんですよ。あるときはこの人が好きだったり、別のときは、違うシンガーが一番だったり。いっぱいいすぎて答えられなくないですか。達郎さんはそういう風に聞かれたらなんて答えるんですか」と逆質問。すると達郎さん「俺は、ジェームス・ブラウンだよ。みんなあの人をそういう風には評価しないけど、何がなんでも歌が一番うまいね」 

達郎さんのジェームス・ブラウン好きは以前から知っていたが、そこまでとは思わなかった。原盤のシングルも200枚以上持っているそうだ。「僕がね、自分で作った歌のうまいジェームス・ブラウンのコンピレーションCDあるから、今度あなたに焼いてあげるよ」と久保田さんに言っていた。

達郎さんは「俺はもともとドゥワップ(が好きで)で、ソウルばっかりだった。ドゥワップもラップも、同じだよ。ドゥワップが今だったら、ラップになってるんだ。そう言っても僕の世代の仲間は誰も理解してくれないんだけどね」と言う。まさにその通り。以前どこかに同じことを僕も書いたが、ドゥワップもラップも黒人のストリート・カルチャーで同じなのだ。

何がきっかけでソウルの道に入ったか、という話になり、久保田さんは「テレビでナタリー・コールの『ミスター・メロディー』や、マリリン・マックー&ビリー・デイヴィスの『星空のふたり』あたりを聴いてから」という。なるほど、75年から76年にかけてのことだ。達郎さんと久保田さんの話を聞いていた黒沢さんは、「もう、目の前でこんな放談を聴けるだけで大感激ですよ、僕は」と感動中。

達郎さんは1953年生まれ、久保田さんは1962年生まれ、そして黒沢さんは1971年生まれ。きっちり9年ごとに誕生している。となると、次代の日本のソウルシーンをになうのは1980年生まれ、さらに1989年生まれになるのか。ソウルシンガー9年周期誕生説? 80年生まれと言えばマル、89年生まれと言えば、我らが木下航志くん。

思わぬソウル・サミット・イン・エビスであった。ジョニー・ギルのライヴより、こっちのほうが強烈なインパクトがあったりして。(笑) 全部録音しておきたかったなあ。(笑) それにしても、こんなメンツを集める松尾潔氏、おそるべし! さすが、大プロデューサー! いよっ。楽しい夜をありがとう。

■ソウルバー・アリ・オリ
August 24, 2005
Soul Bar Searchin’ : Bar "Ali Ollie" 
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_08_24.html

ENT>ESSAY>
ENT>SOULBARS>Ali Ollie

コメント