【悲しみを黄金に変えるピアニスト、フジ子ヘミング】
黄金。
楽譜とは、音の高さ、長さをメモ書きしたものにすぎない。楽譜とは、小説や文章で言えば、ただの一文字の羅列だ。
文章をコンピューターが読むと、ひじょうに平板になる。よくある機械音が話すような抑揚がない感じだ。しかしナレーション、朗読が上手な人が読めば、心がこもる音になり物語に血が通う。文章をどのように上手に読むか、それはその読む人、声を出す人の心、気持ち、ソウルにかかってくる。歌も同じだ。歌詞カードに書かれた文字は、どのような文字で書かれていても、みな同じである。しかし、そこに感動が吹き込まれるのは歌い手によって「命」が与えられるからだ。
日曜日(2007年7月1日)にテレビ朝日系列で放送された『永遠のカンパネラ〜フジコ・ヘミング愛と魂の200日〜』がなかなかおもしろかった。その中で美輪明宏との対談で、クラシック・ピアノ奏者フジ子ヘミングは、とある音楽評論家が彼女のショパンの演奏を、楽譜で書かれた音符よりも何倍も演奏して何事かと批判的に書いていたことを笑っていた。
彼女と美輪明宏の言葉には、いくつも素晴らしいメッセージがあった。そのいくつかをアットランダムに。
フジコ。「ごはんは残すのが嫌い。米粒ひとつ残すのも嫌い。そういう風に母、祖母に育てられたんですよ。あるとき、ごはん粒をこぼして、納屋にいれられたことがあった。でも、あれはいい教育だったと思いますね。今、日本のレストランってたくさん物を残すでしょう。あれだけのものがあれば、どれだけ世界中の人を救えるのか。どうなっちゃってるんでしょうねって思いますね」
フジコ。「ある音楽評論家が、私のショパンを聞いて、楽譜では四分音符なのに、なぜ、フジコは3倍も伸ばすのかって批判してた。譜面にかかれている中から詩を読み取って、人に涙を流させる演奏をするのが、演奏家の才能であってね。譜面にないことをするのが、演奏家なんですよ(笑)」
美輪。「初めてテレビであなたの演奏を見て、それからCD買って聴いて、演奏会に行って、いつも言うんだけど、あなたの音楽は『現代のもの』とは思えないって。それに感動しちゃってね・・・。(あなたの音楽の素晴らしさは)時代とか、人間性とか、(あなたが持つ)美意識だと思う。美しいものに対する感度ね・・・」
フジコ。「ミシャ・マイスキー(ラトビアの世界的チェロ奏者)が(私のピアノを聴いて)別世界だと言ったそうよ」
フジコ。「自分の演奏を、(上手に弾いて)聴かせてやろうなんて思うと、必ず間違える。神様のバチがあたるのね。いったい、神様、どこで見てるんだろうって(笑)」
フジコ。「(ピアニストとしていい演奏をしても)ずっと認められないで終わる人もたくさんいますよ。でも私の場合(幸運にも)一夜にして認められた。きっと、神様が私のために(そういう)プログラムを作っておいてくれたんだと思う。いつも、周りの人に愛を与えなさい、って言われてたから、そうしてきた。それをやってれば、神が助けてくれますよって。モーツァルトは、(晩年不遇で)死んでしまったけど、私は生きて、今こうしている・・・」
フジコ。「相手を受け入れるということをすれば、戦争なんか起きないわよ。相手が気に入らない、ってことがあるからいさかいが起こる」
美輪。「音楽というのは、情緒とか心とか、そういうプラス・アルファだと思うんですよね。人間が持っている心、魂、ロマンとか、そうしたものがその指先から出て、ピアノに伝わって振動となってお客さんの心に波動として伝わる。お客さんにそういう受信機があれば、その波動が伝わる。つまり、それは『精神の波動』ね。メカニックのようなものと音楽という芸術のようなものは、まったく対極にあると思う。そうしたメカニックな(心が通っていない)ものばっかりに触れていると、若い人は精神的、神経的におかしくなってしまうのではないかしら。そこには潤い(うるおい)とか、美意識とか、情緒とかそうしたものがないから。だから、平気で人を傷つけたり、殺したりして『なんでいけないの』ってなことになってしまうんだと思う」
フジコ。「私は自分のピアノ聴いて、泣くなんてことはない。泣くなんて浅いですよ。若い頃、涙が枯れるくらい本当に泣いたからね。(笑)(数々の自分の苦難の歴史による)悲しみが、私(の場合)は、黄金になったからね。今、思い出したら、よかったと思いますよ。(あの頃のことが)私の雨となり、血となって、汗となって、私の体に入り込んだんだから。あれがなかったら(何もない)」
芸術家、アーティストという職業は、どんな苦しいこと、悲しいこと、そして、うれしいことが何十年と続いてもそれを黄金に変えられる唯一の職業である。だから、これ以上どん底はない、悲しい、苦しいと思ったら、職業をアーティストにしてしまえばいい。
彼女のピアノは「魂のピアノ」と呼ばれる。
彼女はその「魂のピアノ」を弾く自分の指を「大根のような指」という。
彼女は60歳を超えてから注目されるようになった。
彼女は「黄昏(たそがれ)」が好きだ。特に10月の。
彼女は20匹近くのネコと1匹の犬とともに(日本では)下北沢に暮らしている。
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00007KL69/soulsearchiho-22/ref=nosim/
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00002DDHJ/soulsearchiho-22/ref=nosim/
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フジ子ヘミングの表記は、フジコ・ヘミング、フジ子・ヘミングなどがあります。また英文字表記は、Fujiko Hemming が一般的ですが、正確にはIngrid Fuzjko Von Georgii-Hemming とFuzjkoになるようです。
ENT>MUSIC>TV>Hemming, Fujiko
ENT>MUSIC>ARTIST>Hemming, Fujiko
黄金。
楽譜とは、音の高さ、長さをメモ書きしたものにすぎない。楽譜とは、小説や文章で言えば、ただの一文字の羅列だ。
文章をコンピューターが読むと、ひじょうに平板になる。よくある機械音が話すような抑揚がない感じだ。しかしナレーション、朗読が上手な人が読めば、心がこもる音になり物語に血が通う。文章をどのように上手に読むか、それはその読む人、声を出す人の心、気持ち、ソウルにかかってくる。歌も同じだ。歌詞カードに書かれた文字は、どのような文字で書かれていても、みな同じである。しかし、そこに感動が吹き込まれるのは歌い手によって「命」が与えられるからだ。
日曜日(2007年7月1日)にテレビ朝日系列で放送された『永遠のカンパネラ〜フジコ・ヘミング愛と魂の200日〜』がなかなかおもしろかった。その中で美輪明宏との対談で、クラシック・ピアノ奏者フジ子ヘミングは、とある音楽評論家が彼女のショパンの演奏を、楽譜で書かれた音符よりも何倍も演奏して何事かと批判的に書いていたことを笑っていた。
彼女と美輪明宏の言葉には、いくつも素晴らしいメッセージがあった。そのいくつかをアットランダムに。
フジコ。「ごはんは残すのが嫌い。米粒ひとつ残すのも嫌い。そういう風に母、祖母に育てられたんですよ。あるとき、ごはん粒をこぼして、納屋にいれられたことがあった。でも、あれはいい教育だったと思いますね。今、日本のレストランってたくさん物を残すでしょう。あれだけのものがあれば、どれだけ世界中の人を救えるのか。どうなっちゃってるんでしょうねって思いますね」
フジコ。「ある音楽評論家が、私のショパンを聞いて、楽譜では四分音符なのに、なぜ、フジコは3倍も伸ばすのかって批判してた。譜面にかかれている中から詩を読み取って、人に涙を流させる演奏をするのが、演奏家の才能であってね。譜面にないことをするのが、演奏家なんですよ(笑)」
美輪。「初めてテレビであなたの演奏を見て、それからCD買って聴いて、演奏会に行って、いつも言うんだけど、あなたの音楽は『現代のもの』とは思えないって。それに感動しちゃってね・・・。(あなたの音楽の素晴らしさは)時代とか、人間性とか、(あなたが持つ)美意識だと思う。美しいものに対する感度ね・・・」
フジコ。「ミシャ・マイスキー(ラトビアの世界的チェロ奏者)が(私のピアノを聴いて)別世界だと言ったそうよ」
フジコ。「自分の演奏を、(上手に弾いて)聴かせてやろうなんて思うと、必ず間違える。神様のバチがあたるのね。いったい、神様、どこで見てるんだろうって(笑)」
フジコ。「(ピアニストとしていい演奏をしても)ずっと認められないで終わる人もたくさんいますよ。でも私の場合(幸運にも)一夜にして認められた。きっと、神様が私のために(そういう)プログラムを作っておいてくれたんだと思う。いつも、周りの人に愛を与えなさい、って言われてたから、そうしてきた。それをやってれば、神が助けてくれますよって。モーツァルトは、(晩年不遇で)死んでしまったけど、私は生きて、今こうしている・・・」
フジコ。「相手を受け入れるということをすれば、戦争なんか起きないわよ。相手が気に入らない、ってことがあるからいさかいが起こる」
美輪。「音楽というのは、情緒とか心とか、そういうプラス・アルファだと思うんですよね。人間が持っている心、魂、ロマンとか、そうしたものがその指先から出て、ピアノに伝わって振動となってお客さんの心に波動として伝わる。お客さんにそういう受信機があれば、その波動が伝わる。つまり、それは『精神の波動』ね。メカニックのようなものと音楽という芸術のようなものは、まったく対極にあると思う。そうしたメカニックな(心が通っていない)ものばっかりに触れていると、若い人は精神的、神経的におかしくなってしまうのではないかしら。そこには潤い(うるおい)とか、美意識とか、情緒とかそうしたものがないから。だから、平気で人を傷つけたり、殺したりして『なんでいけないの』ってなことになってしまうんだと思う」
フジコ。「私は自分のピアノ聴いて、泣くなんてことはない。泣くなんて浅いですよ。若い頃、涙が枯れるくらい本当に泣いたからね。(笑)(数々の自分の苦難の歴史による)悲しみが、私(の場合)は、黄金になったからね。今、思い出したら、よかったと思いますよ。(あの頃のことが)私の雨となり、血となって、汗となって、私の体に入り込んだんだから。あれがなかったら(何もない)」
芸術家、アーティストという職業は、どんな苦しいこと、悲しいこと、そして、うれしいことが何十年と続いてもそれを黄金に変えられる唯一の職業である。だから、これ以上どん底はない、悲しい、苦しいと思ったら、職業をアーティストにしてしまえばいい。
彼女のピアノは「魂のピアノ」と呼ばれる。
彼女はその「魂のピアノ」を弾く自分の指を「大根のような指」という。
彼女は60歳を超えてから注目されるようになった。
彼女は「黄昏(たそがれ)」が好きだ。特に10月の。
彼女は20匹近くのネコと1匹の犬とともに(日本では)下北沢に暮らしている。
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フジ子ヘミングの表記は、フジコ・ヘミング、フジ子・ヘミングなどがあります。また英文字表記は、Fujiko Hemming が一般的ですが、正確にはIngrid Fuzjko Von Georgii-Hemming とFuzjkoになるようです。
ENT>MUSIC>TV>Hemming, Fujiko
ENT>MUSIC>ARTIST>Hemming, Fujiko
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