【ニック岡井氏告別式〜華麗なソウル・ステップよ、永遠に】

早朝。

前日の喧騒の通夜から12時間余。臨海斎場、朝10時45分。昨日とは少し違い人の出足が遅い。さすがソウル・バー業界、ソウル音楽業界、みな朝に弱いか。しかし予定の11時より15分早く、お経が始まった。その間、徐々に勢いを増して人が集まり、30分もしないうちに、席が埋まった。川畑さんも10時半過ぎに登場。2時間しか寝ていないそうだ。

お経が始まる。焼香が始まる。歯を食いしばっての江守さんの弔辞、泣けた。そして、ニックへ最後のお別れ。祭壇に飾られた花がはずされ、参列者の手に行き、参列者から棺の中に入れられる。みるみるうちに、ニックの周りは白い花でいっぱいになった。そして、多くの人に見守られ、出棺。そして焼き場へ。多くの人がその後を追った。

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待合室。

前日、ニックへ捧げたCDが置いてあった。江守さんがニックのために、そして、ニックの奥さんのために作ったものだ。そのCDに曲名がプリントされていた。さっそく書き写した。全部で19曲も入っていた。昨日かかったのは、12曲目くらいまでだった。こんな曲を、江守さんが「ニックの好きな曲」として選んだ。

Songs For Brother Nick: Selected By Brother Emo, November 2007

01. My Girl (A Cappella) / Temptations
02. Sexual Healing / Marvin Gaye
03. Thank You For Your Love / Dramatics
04. Baby, Baby, Baby / Aretha Franklin
05. Abraham, Martin & John / Marvin Gaye
06. People Get Ready / Impressions
07. Going In Circles / Friends Of Distinction
08. Ooh Child / Five Stairsteps
09. Wonderful World / Sam Cooke
10. “T” Plays It Cool / Marvin Gaye
11. Mercy Mercy Me / Marvin Gaye
12. Ball Of Confusion / Temptations
13. Shoo-Be-Doo-De-Doo-Da-Day / Stevie Wonder
14. Hang On In There Baby / Johnny Bristol
15. Your Precious Love / Marvin Gaye & Tammi Terrell
16. Have You Seen Her / Chi-Lites
17. Stay In My Corner / Dells
18. Walk Away From Love / David Ruffin
19. Slippin’ Into Darkness / War

シャイ・ライツ、デルズなんかも入っていたんだ。ニック好きだったもんなあ。しかし、曲面(きょくづら)を見てるだけでニックの顔が浮かぶなんて、なんと素晴らしいDJだろうか。10曲目がちょっとわからなかったので江守さんに聞くと、マーヴィンの『トラブル・マン』に入っている曲だという。あ〜〜、なるほど。ドラマティックスはニックが「ホワッチャ・シー・イズ・ホワッチャ・ゲット」をよくかけていたのを思い出す。江守さんによれば、「それもそうだけど、ニックが本当に好きだったのはこの曲だったんだよ」という。

しかし、このCDいいなあ。「吉岡、別に曲は全部持ってるでしょ」と江守さんは言う。ま、確かにそうなんだが、江守さんがニックのために選んだ曲で作ったCDというところが、ものすごくヴァリューがある。オムニバスの選曲というのは、そういうことなのだ。

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バカ話。

待ち時間に赤坂ミラクル川畑さん、恵比寿ブラウン・シュガー白河さんとしばし談笑。いろんなソウル・バーの話になって、川畑さん「うちってよく『敷居が高い』なんて言われるんだよねえ、ぜんぜんそんなことないのに」とこぼす。「へえ、そんなこと言われるんですか。客に怒るからですか」と僕。「違うよ、客に怒るのは、こっちだよ!」と白河さんを指す。すると白河さん「いや、別に怒りませんよ。10人くらいで来た客に『うちは、騒げない店ですよ』とびしっと言うだけですよ」。十分だ。川畑さん「いっそのこと、入口にど〜んと高い敷居でも作ってやろうかと思っちゃうよ(笑)」 どこからともなく現れたマイケル鶴岡(三宿ソウルナッツ)「うちは鴨居が低いんだけどね」。

今にもニックが割り込んできそうなバカ話をしているうちに、約1時間。ニックの集骨の時間となった。ニックの葬儀に集まった弔問客の年齢は、それこそ10代から50代、60代まで本当に幅広かった。ニックにじかにダンスを教わった子供たちから、一緒にステップを踏んだ50代、60代まで、彼はその人柄からみんなに愛された。

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記録。

勝本氏や、ニックさん、そして江守さんたちが残してきたものというのは、決してメジャーなものではなかったかもしれない。江守さんが言った。「僕らがやってきたものって、結局、アングラみたいなものじゃない。だけど、みんなそれに一途だった。やはり、そういうのは誰かが記録しないとだめなんだよね。カツが死んで、ニックがこうなって、もうおちおちしてられないよ。吉岡にも書いて欲しいけど、僕も小説、エッセー、一生懸命書いてるよ」 やりましょう、やりましょう。遅くなる前に。

ニックが残したソウル・ステップの集大成作品『ソウル・ステップ・アンド・ソウル・ダンス』(DVDで3枚になって発売)は、そんなアンダーグラウンド・カルチャーとしてのソウル・ステップの素晴らしい記録である。だが、僕はニックが動く姿を今日はまだ見ることができない。

華麗なソウル・ステップよ、ニック岡井さん、永遠に・・・。

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ENT>OBITUARY>Okai, Nick (9.29.1947 – 11.11.2007, 60)

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