◎グレッチェン・パーラート~万華鏡のような音世界

【Gretchen Parlato : Sounds Like Kaleidoscope】

万華鏡。

ニューヨーク近辺のたとえば、ロバート・グラスパーやホセ・ジェームスあたりから、はてはハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターなどの大物ジャズ・ミュージシャンまでを虜にしているジャズ・ヴォーカリスト、グレッチェン・パーラート。3度目の来日。日本でも熱心なファンがいて祝日ということもあってか会場は満員。僕は周囲からソウル系ともつながりがあるので、見た方がいいと言われて初めて見た。

客層は30代から50代中心か、若干20代もいるかもしれないが、6:4で男性が多い印象。やはりメインはジャズ・ファンなのかな、それにクラブ、DJ系の音楽を好むファンが加わる感じ。

ドラムスとベースがブラックで、どうも冒頭の録音された呼び込みアナウンスはベース奏者の声らしい。実に低くていい声。番組のタイトルコールでもやってもらいたいと思った。(笑) 

グレッチェンも事前にセットリストがない。最初の1-2曲と全体的な骨格だけ決めておいてあとはでたとこ勝負、そのときの雰囲気とのりで曲を自由自在に入れ替える。

ただし今回のセットリストは、3枚目のアルバム『ザ・ロスト・アンド・ファウンド』からの作品が中心。シンプリー・レッドのカヴァー、ハービー・ハンコック作品、オリジナル曲などアンコール含めて8曲、60分強。

バンドはドラムス、ベース、キーボード3人にグレッチェン。ステージに向かう姿、写真のイメージとまったくちがい、とても小柄。160センチくらいか。一言で言えば見事なヴォーカリーズ。喉、声が様々な表情を見せる。透明感のある声がささやくように歌う姿を見て、以前見た『コクリコ坂から~』のテーマを歌う手嶌葵を思い浮かべた。声が楽曲の中のツールになっているという意味で。あと、セルジュ・ゲンズブール&ジェーン・バーキンの「ジュ・テーム」あたりも思い浮かべた。音が静かで、音楽的にはずいぶんと実験的なこともチャレンジしている。

全体的にはラウンジっぽい感じで、軽い雰囲気、静かな空気だ。

ドラムスはアフロヘアで一見ルーツのクエストラヴみたい、ベースは帽子を被り最近のおしゃれミュージシャン風、キーボードもピアノ、エレピ、両方を曲によって使い分ける。

ときどき(1曲目や6曲目)、グレッチェンが両手に小さなパーカッションというか紐がついたものを持ってうまく振り回して、変わった音を出していた。なかなかいいアクセントをつけていたが、見たことがなかったので、あれはなんという楽器かとライヴ後本人に尋ねた。

「いや、私もよく知らないの。ガーナから友人がおみやげでくれたの。その友人はこれのことを『カチャサ』とか『キジプ』と言っていた。私もどんなスペルかもわからないのよ、実は(笑)。 けっこう練習した。アフリカではなんか子供たちが誰もがこれを使って遊んでいるそう。おもちゃらしいわ」と言う。

その「カチャサ」か「キジプ」とやらを使った6曲目はポルトガル語で歌われ、他の3人のミュージシャンたちもそれぞれの楽器を「叩いて」パーカッションにしていた。ピアノは鍵盤の下あたりを叩き、ベースもボディーを叩く。ドラムはパーカッションぽく叩く。打楽器とグレッチェンのヴォイスだけでその曲が生まれた。同じ楽器でもこんな使い方で万華鏡のように違う音が生み出される。

彼女のヴォイス、歌唱を聴いているとシャーデーや日本のTOKU、「コーリング・ユー」のジェヴェッタ・スティールあたりを思い浮かべた。そしてウォン・カーワイあたりが作る映画の音楽になったらぴったりあいそうな気がした。映画用のBGMにとてもあうと思う。

アンコールで歌った「マグナス」という曲はロスの友人の息子マグナス君のことを歌った曲だそう。

声を楽器のひとつのように使うという意味で、アル・ジャロウ、ボビー・マクファーリン的な立ち位置のシンガーと感じた。

CDを聴いてファンになってライヴを見れば、もっとファンになるだろう。まちがいない。しかし、ニューヨークのミュージシャンの層は厚いなあ。

■グレッチェン 3枚目最新作(2011年)

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■2枚目(2009年)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B002FUIICU/soulsearchiho-22/ref=nosim/"

■ファースト(2005年)

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■ドラムスは違いますが、ほかのサポートは同じ

http://youtu.be/MLVu7G1oiz8



■ メンバー

Gretchen Parlato(vo) グレッチェン・パーラト(ヴォーカル)
Taylor Eigsti(p,key) テイラー・アイグスティ(ピアノ、キーボード)
Burniss Travis(b) バーニス・トラヴィス(ベース)
Justin Brown(ds) ジャスティン・ブラウン(ドラムス)

■セットリスト
Setlist : Gretchen Parlato @ Bluenote Tokyo, March 20, 2013

show started 17:02
01.Juju (Wayne Shorter)
02.Holding Back The Years (Simply Red)
03.Butterfly (Herbie Hancock)
04.Circling (Original)
05.Blue In Green
06.Alô Alô
07.Better Than (Original)
Enc. Magnus (Original)
Show ended 18:05

(2013年3月20日水曜、東京ブルーノート、グレッチェン・パールト・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Parlto, Gretchen

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