【スティーヴィー・ワンダー・ライヴ、さいたまスーパーアリーナ】
集中。
スティーヴィー2日目。前日を7割の出来とするなら、この日は5割5分くらいの出来か。オープニング当初は、「これはいい調子、昨日より長くなりそう」と思ったのだが、なぜか途中から、喉の調子が悪いのか、若干失速気味。改めて振り返ってみると、下記セットリスト16曲目の「アンティル・ユー・カンバック・トゥ・ミー」で”流れ”が変わってしまったのかな、と思った。それまでは観客からのリアクションもよく、観客の掛け声にしっかり答え、ごきげんもよかったはず。
この「アンティル・・・」は、スティーヴィーがアレサ・フランクリンのために書いた作品で、アレサの歌で1973年に大ヒットしたもの。スティーヴィーがアレサに「あなたのために1曲書いたんだけど」と言ったところ、アレサがそれを聴くこともなく即座に「I’ll take it(もらうわ)」と言ってレコーディングした作品だ。スティーヴィーのヴァージョンは、長く公開されていなかったが、1977年にリリースされたスティーヴィーのベストアルバム『ルッキング・バック』で初めて披露された。
この日は「ア・プレイス・イン・ザ・サン」の後、思いついたようにキーボードで音を探し、「リン、キムは、いるかな。(これで)キーは高すぎる? どう?」と言い、キムが「やってみるわ」と言って始まった。ところがキムが歌詞を覚えていなくて、スティーヴィーも途中あやふやになり、なんとかリン・フィードモントが歌って形を整えた。僕個人としては、この曲を歌うところで瞬間嬉しかったが、残念ながらパフォーマンスとしては不出来なまま終わってしまい、観客も気に入ってはいなかった。そして、この後がなかなか盛り上がらなくなってしまった。
しかし、その後、「サー・デューク」「アイ・ウィッシュ」のメドレーをやれば、絶対に流れを引き戻せたはずなのに、それが叶わなかった。しかも、最後は「アズ」〜「アナザー・スター」のメドレーを「アズ」だけで切り上げてしまった。疲れていたのか、集中が切れてしまったのだろう。まあ、スティーヴィーにもこういう日があるということだろう。
この日のハイライトは、10曲目の「ネヴァー・ドリームド・ユード・リーヴ・イン・サマー」。めったにやらない曲。そして、「リボン・イン・ザ・スカイ」の後半にジョン・コルトレーンの「ジャイアント・ステップ」を挟み込み、また「リボン・・・」に戻った。時々、ジャジーな気分になるとスティーヴィーがやる手法だ。1999年の国際フォーラムでもやっていた。
「アコースティック・ピアノ・バラード・セクション」では、前日に引き続きナット・キング・コールの「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」を披露。ライヴ後スティーヴィーと話す機会があり、それを尋ねた。「なんでまた、ナット・キング・コールの『ホエン・アイ・・・』を歌ったのですか」 すると一言。「好きだからさ(Because I like it)。ナット・キング・コールは大好きなんだ」との答え。この曲から「リボン・・・」のイントロへの流れは最高にいい。日本ツアーの間中、歌いそうな気配だ。
最後にスティーヴィーがバンドメンバーを紹介したが、その中に、キーボードでロニー・フォスターが入っていたのには驚いた。ロニー・フォスターの1978年のコロンビアからの最初のアルバム『ラヴ・サテライト』の「ハッピー・ソング」では、誰あろうスティーヴィーが、なんとドラムスを叩いている。
結局、「サー・デューク」「アイ・ウィッシュ」、さらに「アナザー・スター」をやれば、2時間10分は超えたはずだが、トータル1時間55分で終了。終わってみれば前日より5分短く終了してしまったことになる。スティーヴィーのライヴは、1時間半で終わることもあれば、3時間になることもある。その日の気分と体調と、観客のリアクション次第。若干消化不良で終わった。
僕はこの日、ステージ、ライヴ・パフォーマンスにも、例えば、スポーツの試合のように、ほんの些細なきっかけから、流れが大きく変わることがあることを知ったような気がする。だから、逆に観客の声援ひとつ、掛け声ひとつ、リアクションが、いいパフォーマンスを作っていくことにつながるのだ。ライヴは、本当に「生き物」だ。
スティーヴィーの場合、しかし、元のミュージシャン力が圧倒的に高いので、彼の55点のパフォーマンスでも、8割以上の観客を満足させられる。例えば50点のミュージシャン力のミュージシャンが満点のパフォーマンスを見せても、50点にしかならないが、スティーヴィーは200点のミュージシャン力があり、そこで55%のパフォーマンスとしてもそれでも普通の人の100点は超えるということになる。だからもし彼が完璧なパフォーマンスなんかを見せた日には、とてつもない奇蹟の夜が訪れることになるのだ。ライヴのポイントとは、そのミュージシャン力とその日のパフォーマンス点を掛け合わせなければならないということになる。
■ メンバー
Keith John (vocal)
Lynn Fiedmont (vocal)
Panzie Johnson (vocal)
Kimberly Brewer (vocal)
Nathan Watts (bass)
Chris Johnson (drums)
Morris O’Conner (guitar)
Ronnie Foster (keyboards)
Munyungo Jackson (percussion)
Ryan Kilgore(sax)
Dwight Adams (trumpet)
■ セットリスト スティーヴィー・ワンダー
Setlist: Stevie Wonder @ Saitama Super Arena
February 18, 2007
[trascribed by yoshioka masaharu]
show started 15.22
01. Too High
02. Visions
03. Living For The City
04. Higher Ground
05.You’re The Sunshine Of My Life
06. Superstition
07. Don’t You Worry About A Thing
08. If You Really Love Me
09. Signed, Sealed, Delivered, I’m Yours
10. Never Dreamed You’d Leave In Summer (1971)
--. "Acoustic Piano Ballad Section" (11-14)
11. Stay Gold
12. Overjoyed
13. When I Fall In Love (Nat King Cole)
14. Ribbon In The Sky -- Giant Step (John Coltrane) -- Ribbon In The Sky
--. "Little Stevie Wonder Section" (15,17)
15. A Place In The Sun
16. Until You Come Back To Me (Kim & Lynn)
17. My Cherie Amour
--. "Big Hits Section" (Finale)
18. Part Time Lover
19. I Just Called To Say I Love You
20. So What The Fuss
21. As
show ended 17.17
(2007年2月18日日曜、さいたまスーパーアリーナ=スティーヴィー・ワンダー・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Wonder, Stevie
2007-22
集中。
スティーヴィー2日目。前日を7割の出来とするなら、この日は5割5分くらいの出来か。オープニング当初は、「これはいい調子、昨日より長くなりそう」と思ったのだが、なぜか途中から、喉の調子が悪いのか、若干失速気味。改めて振り返ってみると、下記セットリスト16曲目の「アンティル・ユー・カンバック・トゥ・ミー」で”流れ”が変わってしまったのかな、と思った。それまでは観客からのリアクションもよく、観客の掛け声にしっかり答え、ごきげんもよかったはず。
この「アンティル・・・」は、スティーヴィーがアレサ・フランクリンのために書いた作品で、アレサの歌で1973年に大ヒットしたもの。スティーヴィーがアレサに「あなたのために1曲書いたんだけど」と言ったところ、アレサがそれを聴くこともなく即座に「I’ll take it(もらうわ)」と言ってレコーディングした作品だ。スティーヴィーのヴァージョンは、長く公開されていなかったが、1977年にリリースされたスティーヴィーのベストアルバム『ルッキング・バック』で初めて披露された。
この日は「ア・プレイス・イン・ザ・サン」の後、思いついたようにキーボードで音を探し、「リン、キムは、いるかな。(これで)キーは高すぎる? どう?」と言い、キムが「やってみるわ」と言って始まった。ところがキムが歌詞を覚えていなくて、スティーヴィーも途中あやふやになり、なんとかリン・フィードモントが歌って形を整えた。僕個人としては、この曲を歌うところで瞬間嬉しかったが、残念ながらパフォーマンスとしては不出来なまま終わってしまい、観客も気に入ってはいなかった。そして、この後がなかなか盛り上がらなくなってしまった。
しかし、その後、「サー・デューク」「アイ・ウィッシュ」のメドレーをやれば、絶対に流れを引き戻せたはずなのに、それが叶わなかった。しかも、最後は「アズ」〜「アナザー・スター」のメドレーを「アズ」だけで切り上げてしまった。疲れていたのか、集中が切れてしまったのだろう。まあ、スティーヴィーにもこういう日があるということだろう。
この日のハイライトは、10曲目の「ネヴァー・ドリームド・ユード・リーヴ・イン・サマー」。めったにやらない曲。そして、「リボン・イン・ザ・スカイ」の後半にジョン・コルトレーンの「ジャイアント・ステップ」を挟み込み、また「リボン・・・」に戻った。時々、ジャジーな気分になるとスティーヴィーがやる手法だ。1999年の国際フォーラムでもやっていた。
「アコースティック・ピアノ・バラード・セクション」では、前日に引き続きナット・キング・コールの「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」を披露。ライヴ後スティーヴィーと話す機会があり、それを尋ねた。「なんでまた、ナット・キング・コールの『ホエン・アイ・・・』を歌ったのですか」 すると一言。「好きだからさ(Because I like it)。ナット・キング・コールは大好きなんだ」との答え。この曲から「リボン・・・」のイントロへの流れは最高にいい。日本ツアーの間中、歌いそうな気配だ。
最後にスティーヴィーがバンドメンバーを紹介したが、その中に、キーボードでロニー・フォスターが入っていたのには驚いた。ロニー・フォスターの1978年のコロンビアからの最初のアルバム『ラヴ・サテライト』の「ハッピー・ソング」では、誰あろうスティーヴィーが、なんとドラムスを叩いている。
結局、「サー・デューク」「アイ・ウィッシュ」、さらに「アナザー・スター」をやれば、2時間10分は超えたはずだが、トータル1時間55分で終了。終わってみれば前日より5分短く終了してしまったことになる。スティーヴィーのライヴは、1時間半で終わることもあれば、3時間になることもある。その日の気分と体調と、観客のリアクション次第。若干消化不良で終わった。
僕はこの日、ステージ、ライヴ・パフォーマンスにも、例えば、スポーツの試合のように、ほんの些細なきっかけから、流れが大きく変わることがあることを知ったような気がする。だから、逆に観客の声援ひとつ、掛け声ひとつ、リアクションが、いいパフォーマンスを作っていくことにつながるのだ。ライヴは、本当に「生き物」だ。
スティーヴィーの場合、しかし、元のミュージシャン力が圧倒的に高いので、彼の55点のパフォーマンスでも、8割以上の観客を満足させられる。例えば50点のミュージシャン力のミュージシャンが満点のパフォーマンスを見せても、50点にしかならないが、スティーヴィーは200点のミュージシャン力があり、そこで55%のパフォーマンスとしてもそれでも普通の人の100点は超えるということになる。だからもし彼が完璧なパフォーマンスなんかを見せた日には、とてつもない奇蹟の夜が訪れることになるのだ。ライヴのポイントとは、そのミュージシャン力とその日のパフォーマンス点を掛け合わせなければならないということになる。
■ メンバー
Keith John (vocal)
Lynn Fiedmont (vocal)
Panzie Johnson (vocal)
Kimberly Brewer (vocal)
Nathan Watts (bass)
Chris Johnson (drums)
Morris O’Conner (guitar)
Ronnie Foster (keyboards)
Munyungo Jackson (percussion)
Ryan Kilgore(sax)
Dwight Adams (trumpet)
■ セットリスト スティーヴィー・ワンダー
Setlist: Stevie Wonder @ Saitama Super Arena
February 18, 2007
[trascribed by yoshioka masaharu]
show started 15.22
01. Too High
02. Visions
03. Living For The City
04. Higher Ground
05.You’re The Sunshine Of My Life
06. Superstition
07. Don’t You Worry About A Thing
08. If You Really Love Me
09. Signed, Sealed, Delivered, I’m Yours
10. Never Dreamed You’d Leave In Summer (1971)
--. "Acoustic Piano Ballad Section" (11-14)
11. Stay Gold
12. Overjoyed
13. When I Fall In Love (Nat King Cole)
14. Ribbon In The Sky -- Giant Step (John Coltrane) -- Ribbon In The Sky
--. "Little Stevie Wonder Section" (15,17)
15. A Place In The Sun
16. Until You Come Back To Me (Kim & Lynn)
17. My Cherie Amour
--. "Big Hits Section" (Finale)
18. Part Time Lover
19. I Just Called To Say I Love You
20. So What The Fuss
21. As
show ended 17.17
(2007年2月18日日曜、さいたまスーパーアリーナ=スティーヴィー・ワンダー・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Wonder, Stevie
2007-22
コメント