◇○☆ワックス・ポエティックス第19号~ディスコ・ミックスの父、トム・モウルトン・インタヴューはリミックスの歴史満載
【Wax Poetics #19: Tom Moulton Interview】
ディスコ・ミックス。
ダンス系、ブラック系のアーティストなどのインタヴューを掲載している音楽誌ワックス・ポエティックスの最新号(2011年12月30日発行、第19号)が30日に発売される。
今回マイケル・ジャクソンの『イモータル』のアルバムについて、詳しく解説を書いたのだが、「マッシュアップ」を解説する中でリミックスの歴史を簡単に紹介し、その父とも言える「トム・モウルトン」のことを書いた。そうしたら、偶然、同じ号にそのトム・モウルトンのインタヴュー記事が掲載されており、興味深く読んだ。
トム・モウルトンに関しては、1970年代からあちこちでたくさん書いてきたが、直接会ったことはない。ただいろいろ噂話なども聞いていて、最近フェイスブックでつながったりした。いずれ、どこかで会うなりして、じっくりインタヴューしてみたい人物だ。ただ、このワックスのインタヴューは十分、おもしろく読み応えがあるので、リミックスの歴史などに興味がある方はぜひお読みになるといいと思う。
トム・モウルトンは、「ディスコ・ミックスの父」と言われ、いわゆるディスコ・ミックスの生みの親、ブレイク・ビーツの元を発明した人物である。それより以前は、ジュークボックス用の7インチ・シングル(ドーナツ盤)のセールスマンをしていた。
誕生。
たとえば、ものすごく面白いストーリーのひとつは12インチ誕生の瞬間の話だ。
いつもトムは、自分がリミックスしたものをアセテート盤というラッカー盤に焼いて、ディスコで試していた。これはやわらかい盤面に音を直接カッティング(刻む)して、盤を作る。しかし、盤面がやわらかいもので、その場でカッティングできて、一応、盤にはなるのだが、10回くらいプレイしてしまうともう溝が削れて使えなくなってしまう。今だったら、出来上がったミックスをCDRに焼くが1970年代はまだまだこのアセテート盤に焼いて、いろいろなオーディオ機器で試して聴いて、低音が不足してるとか、高音が出すぎとか、ヴォーカルが小さいなどと調整するために、使っていた。
ちょうどアル・ダウニングの「アイル・ビー・ホールディング・オン」をミックスして例によってアセテート盤を作ろうとしたら、たまたま7インチのブランクのアセテート盤がなく、しかたなく12インチに刻んだ。ところが3-4分ほどしかない曲を12インチに刻むと、外側の2-3センチくらいにしか、その刻みがなく、あとはまったくのブランクになる。それでは、あまりにかっこうが悪いので、溝を中央まで均等に刻みなおした。それをすると、今度は、音量が足りないことがわかり、大きな音量で、12インチのかなりの盤面を使ってカッティングした。溝の幅自体が広く刻まれたのだ。それをディスコに持っていったら、音が大きく入っていて、ものすごい迫力で再生された。そして、これはいい、ということになり、ディスコ用の12インチ・シングルというものが出来た、というのだ。
たまたま7インチのアセテートがなかったから、12インチを使ったところ、それがものすごくよくて、次々これで行こうとなった。まさにひょうたんから駒、怪我の功名、災い転じて福となす状態である。
トム・モウルトンの話は計10ページにわたって紹介されているので、ほかにも、おもしろい逸話が存分に出てくるのでわくわくしながら読んだ。ちなみに、筆者のマイケルの話は6ページ、それから日本のファンキーなキーボード奏者、スウィング・オーさんのインタヴュー記事も4ページ、デトロイト・テクノ特集、ロン・ハーディー特集など、満載だ。
クレジット。
ちなみに、僕がすべてのライナーノーツの最後のクレジットに「An Early Bird Note」と表記しているのは、トム・モウルトンがすべてのミックスを施したレコードに「A Tom Moulton Mix」というクレジットをつけていたところからインスピレーションを得て、つけたものだ。1975年のこと。「A」という不定冠詞がついているところが、「唯一の」という感じがしてよいと思った。たまたまアーリーバードの場合、不定冠詞につづくEが母音だったので、Aではなく、Anになったのだが。最初は「A Early Bird Note」かなあと思ったが、すぐにAnでなければならないことに気づいた。ただ、An かあるいは、The がいいのかどうかは、すごく迷った。もうひとつ、通常「ライナーノーツ」と複数なので、単数でいいのかなあというのも迷ったが、Liner Note でもNotesでも間違いないということ、同じ意味のSleeve Noteは単数だったので、ま、いいかと思って、そうした。
話がそれたが、トム・モウルトンとリミックスについては、いくらでも書けるので、また機会をみて書いてみようと思う。
■ワックスポエティックス・ジャパン 2011年12月30日発売号、第19号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486113434X/soulsearchiho-22/ref=nosim/"
■ワックス・ポエティックス 2009年9月号 第6号~渾身のマイケル・ジャクソン特集書きました
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861134196/soulsearchiho-22/ref=nosim/"
MAGAZINE>Wax Poetics Japan>#19
【Wax Poetics #19: Tom Moulton Interview】
ディスコ・ミックス。
ダンス系、ブラック系のアーティストなどのインタヴューを掲載している音楽誌ワックス・ポエティックスの最新号(2011年12月30日発行、第19号)が30日に発売される。
今回マイケル・ジャクソンの『イモータル』のアルバムについて、詳しく解説を書いたのだが、「マッシュアップ」を解説する中でリミックスの歴史を簡単に紹介し、その父とも言える「トム・モウルトン」のことを書いた。そうしたら、偶然、同じ号にそのトム・モウルトンのインタヴュー記事が掲載されており、興味深く読んだ。
トム・モウルトンに関しては、1970年代からあちこちでたくさん書いてきたが、直接会ったことはない。ただいろいろ噂話なども聞いていて、最近フェイスブックでつながったりした。いずれ、どこかで会うなりして、じっくりインタヴューしてみたい人物だ。ただ、このワックスのインタヴューは十分、おもしろく読み応えがあるので、リミックスの歴史などに興味がある方はぜひお読みになるといいと思う。
トム・モウルトンは、「ディスコ・ミックスの父」と言われ、いわゆるディスコ・ミックスの生みの親、ブレイク・ビーツの元を発明した人物である。それより以前は、ジュークボックス用の7インチ・シングル(ドーナツ盤)のセールスマンをしていた。
誕生。
たとえば、ものすごく面白いストーリーのひとつは12インチ誕生の瞬間の話だ。
いつもトムは、自分がリミックスしたものをアセテート盤というラッカー盤に焼いて、ディスコで試していた。これはやわらかい盤面に音を直接カッティング(刻む)して、盤を作る。しかし、盤面がやわらかいもので、その場でカッティングできて、一応、盤にはなるのだが、10回くらいプレイしてしまうともう溝が削れて使えなくなってしまう。今だったら、出来上がったミックスをCDRに焼くが1970年代はまだまだこのアセテート盤に焼いて、いろいろなオーディオ機器で試して聴いて、低音が不足してるとか、高音が出すぎとか、ヴォーカルが小さいなどと調整するために、使っていた。
ちょうどアル・ダウニングの「アイル・ビー・ホールディング・オン」をミックスして例によってアセテート盤を作ろうとしたら、たまたま7インチのブランクのアセテート盤がなく、しかたなく12インチに刻んだ。ところが3-4分ほどしかない曲を12インチに刻むと、外側の2-3センチくらいにしか、その刻みがなく、あとはまったくのブランクになる。それでは、あまりにかっこうが悪いので、溝を中央まで均等に刻みなおした。それをすると、今度は、音量が足りないことがわかり、大きな音量で、12インチのかなりの盤面を使ってカッティングした。溝の幅自体が広く刻まれたのだ。それをディスコに持っていったら、音が大きく入っていて、ものすごい迫力で再生された。そして、これはいい、ということになり、ディスコ用の12インチ・シングルというものが出来た、というのだ。
たまたま7インチのアセテートがなかったから、12インチを使ったところ、それがものすごくよくて、次々これで行こうとなった。まさにひょうたんから駒、怪我の功名、災い転じて福となす状態である。
トム・モウルトンの話は計10ページにわたって紹介されているので、ほかにも、おもしろい逸話が存分に出てくるのでわくわくしながら読んだ。ちなみに、筆者のマイケルの話は6ページ、それから日本のファンキーなキーボード奏者、スウィング・オーさんのインタヴュー記事も4ページ、デトロイト・テクノ特集、ロン・ハーディー特集など、満載だ。
クレジット。
ちなみに、僕がすべてのライナーノーツの最後のクレジットに「An Early Bird Note」と表記しているのは、トム・モウルトンがすべてのミックスを施したレコードに「A Tom Moulton Mix」というクレジットをつけていたところからインスピレーションを得て、つけたものだ。1975年のこと。「A」という不定冠詞がついているところが、「唯一の」という感じがしてよいと思った。たまたまアーリーバードの場合、不定冠詞につづくEが母音だったので、Aではなく、Anになったのだが。最初は「A Early Bird Note」かなあと思ったが、すぐにAnでなければならないことに気づいた。ただ、An かあるいは、The がいいのかどうかは、すごく迷った。もうひとつ、通常「ライナーノーツ」と複数なので、単数でいいのかなあというのも迷ったが、Liner Note でもNotesでも間違いないということ、同じ意味のSleeve Noteは単数だったので、ま、いいかと思って、そうした。
話がそれたが、トム・モウルトンとリミックスについては、いくらでも書けるので、また機会をみて書いてみようと思う。
■ワックスポエティックス・ジャパン 2011年12月30日発売号、第19号
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486113434X/soulsearchiho-22/ref=nosim/"
■ワックス・ポエティックス 2009年9月号 第6号~渾身のマイケル・ジャクソン特集書きました
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861134196/soulsearchiho-22/ref=nosim/"
MAGAZINE>Wax Poetics Japan>#19
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