◎ボビー・ウーマック、17年ぶりに日本のステージに: 伝説の来日に感謝

【Bobby Womack: Last Soul Man’s Theory : Show Must Go On】

ラスト。

「ラスト・ソウル・マン」ことボビー・ウーマックが17年ぶりに日本のステージに立った。ボディーガードに付き添われ、杖をつきながらステージ中央に。バックバンドは、ドラムス、ギター、ベース、キーボード2人、コーラス3人、ホーンセクション3人という大所帯11人。これにボビーでオン・ステージは総勢12人。さすがにオールド・スクールのソウル・ショーは大所帯だ。

また、客席は日本のソウル関係者全員が集まってきたのではないかというほどの大集合で、超満員。2日4公演がソールドアウトという伝説らしき集客を見せた。

一言で言えば、「伝説を見られたことに感謝」。あのスライ・ストーンを初めてみたときと同じような感覚を持った。

イントロからいきなり「アクロース110th(ハンドレッド・テンス)ストリート」へ。しかし、すぐにスツールに座って、ほとんど座ったままの歌唱だった。見た目にもかなり疲れているのか、体調が悪い様子。またかなり老けてやせた印象を持った。前半はなかなか声も思うように出ていない感じだ。以前のライヴでは大迫力で、声だけで観客をぶっとばすほどの力があったが、残念ながら、声を出すのも苦しそう。とはいえ、徐々にときおり往年の光輝くあの「ボビー節」が出てくるから、ファンとしてはそれだけで嬉しいところ。

次々とヒット曲がメドレーで歌われ、曲によってはイントロが流れるだけで、「ウォーーッ」と歓声があがる。セットリストはまさにベスト・オブ・ボビー・ウーマックという感じ。

驚いたのは「ノーバディー・・・」のところで、ボビーがぽつりと「本当はここにいるべきじゃないんだ。俺は二度も手術して、癌で心臓も悪くてな…」なんてことを言ったこと。半分ボビー特有のジョークと取る人もいたが、ちょっと気になるコメントだ。

4曲目の「ハリー・ヒッピー」で3人の女性シンガーの一番センター寄り、客席から見て左のシンガーと一緒に歌ったが、見事な歌声を聞かせた。素晴らしい迫力。紹介されなかったのだが、リサ・フレイジャーのようだ。彼女はワシントンDC出身のシンガーで、かつてレイス(Lace)というグループのメンバーだった人物。2000年に自身のアルバム『ハート・オブ・ゴールド』をイタリアのレーベルから出している。これまでにボズ・スキャッグスなどのバックコーラスでも来日している。(ちなみに右端もリサ) そして、このあたりから、ボビーの歌の調子があがってきた。

「ストップ・オン・バイ」のところでは、マーヴィン・ゲイの思い出話などをしたのだが、英語がもごもごして、かなり聴き取りににくくよくわからなかった。ただ彼の語りは、いかにも曲に乗ってしゃべるような感じになるので、詩人ボビー・ウーマックの趣も感じさせた。

圧巻だったのは、ボビーにとっての大先輩であり師匠であるサム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を歌ったところ。真ん中のコーラスを呼び出し、「俺の弟の娘だ」と紹介した。彼女の歌声もさすがに力強く、ボビーもそれに影響されて、歌に力が加わった。

彼女は、メンバー表にある「ゼカチャグーラ・ゼカリアス」だ。つまり、ボビーの弟セシルと、サム・クックの娘リンダ夫妻の間に生まれた子供の一人、そう、サム・クックの孫なのだ。サムの孫と師匠であるサムの曲を、ボビーが熱唱する。この1曲だけでも、聴く価値があるというもの。(ちなみにその前に「サプライズ」と言って、ボビーの娘を紹介し、一節歌わせたが、すぐに止めさせた。まあ、これはご愛嬌というところ)

「アイ・キャン・アンダースタンド・イット」では、自身が曲を書いたウィルソン・ピケットや親友のスライへのトリビュートを示した。

ボビーは、この日朝方日本に到着、バンドのドラマーは夕方到着でファースト・セットぎりぎりに間に合ったそうだ。

それにしても、90分超のライヴを2セットもやってくれて、本当に感謝感謝である。

ボビーのライヴを見ていて、「自分は何があってもステージは勤める、Show Must Go Onだからな」というセオリーを強く感じた。たぶん、ジェームス・ブラウンもそうなのだろう、オーティス・レディングも。オーティスはそれで事故にあった。彼らは仕事があったら、何が何でも穴をあけずにやり遂げる。それはオールドスクールのソウル・マンたちの生きる哲学なのだと思う。そこまで無理しなくてもと思うのだが、そうした感情は2010年のホイットニー・ヒューストンのライヴを見たときにも巻き起こった。

もちろん、初来日のときは声も出て動きもあり本当に素晴らしかった。今回はそのパフォーマンスと比較するすべもないが、ボビー・ウーマックには一言、そんな体調をおしてまで来日してくれてありがとう、と言いたい。そしてサムの孫であるゼカチャグーラとのデュエットで歌った「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を僕は一生忘れない。

ボビー・ウーマック、1944年3月4日生まれ、まだ67歳。来月68歳だ。体調を戻して、また日本に戻ってきて欲しいと切に願う。

■ボビー・ウーマック関連記事

前回来日時インタヴュー記事
ボビー・ウーマック、インタヴュー『僕たちの地震』(1995年5月記)
http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/interview/womack19950501.html

2008年10月08日(水)
ボビー・ウーマック、ベストはリミックス入り
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20081008.html

■ソウル・サーチン、第5章「ウーマック・ウーマック」でサム・クック~ボビー・ウーマックらについて書いてあります

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/427623302X/soulsearchiho-22/ref=nosim/"

■ラスト・ソウル・マン ベスト・オブ・ボビー・ウーマック

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0012PYHGK/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■Poet I & II アナログ2枚が1枚のCDに

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001P58F0Q/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■ボビーの師匠、サム・クックのベスト

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000CFWP0Q/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■ メンバー

ボビー・ウーマック/ BOBBY WOMACK(Vocals)
リサ・フレイジャー / LISA FRAZIER (Vocals)
リサ・コールター / LISA COULTER(Vocals)
ゼックチャグーラ・ゼッカリヤーズ / ZEKKUJCHAGULA ZEKKARIYAS (Background Vocals)
コーリ・ジェイコブス / CORI JACOBS(Keyboards)
サンドラ・マニング / SUNDRA MANNING(Keyboards)
チャールズ・グリーン / CHARLES GREEN(Saxophone)
ブライアン・マンツ / BRIAN MANTZ(Trumpet)
エルムエリト・ナヴァロ / Ermuelito Navarro(Trombone)
ウッドワード・アプラナルプ / WOODWARD APLANALP(Guitar)
エルバート・アレン・ジュニア / ELBERT ALLEN JR(Bass)
アーノルド・ラムゼイ / ARNOLD RAMSEY(Drums)

■ ボビー・ウーマック・セットリスト
Bobby Womack Setlist: February 22, 2012, Billboard Live
2012年2月22日水曜、セカンド、ビルボードライブ

show started 21:42
01.Intro
02.Across 110th Street
03.Nobody Wants You When You’re Down & Out
04.Harry Hippie
05.Daylight
06.I Wish He Didn’t Trust Me So Much
07.That’s The Way I Feel About Cha
08.Woman’s Gotta Have It
09.(You’re Welcome) Stop On By
10.A Change Is Gonna Come
11.Looking For A Love – Everybody Say Yeah
12.If You Think You’re Lonely Now
13.Jesus Be A Fence
14.Love Has Finally Come At Last
15.I Can Understand It – a riff of Land Of 1000 Dances – a riff of I Wanna Take You Higher
16.(No Matter How High I Get) I’ll Still Be Lookin’ Up To You
Show ended 23:08

(2012年2月22日水曜、六本木・ビルボードライブ、ボビー・ウーマック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Womack, Bobby


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