◎ ベン・ロンクル・ソウル~60年代ソウルを今、洗練されたグルーヴ
2012年3月19日 音楽◎ベン・ロンクル・ソウル~60年代ソウルを今、洗練されたグルーヴ
【Ben L’oncle’s Soul: Pop, Fashionable, And Real Soul】
ソウル。
「みんなは、ソウル・ミュージックは好きかあ???」「オオッ、イエー」限りなく観客席も熱く盛り上がる。ほぼ無名の新人ながらブルーノートは超満員。みんな情報早いなあ。観客は若いファンとブルーノートのファンと外人グループ。
ステージ中央、サスペンダーに蝶ネクタイという実におしゃれないでたちのベン・ロンクル・ソウルたちが観客を煽る。彼らの日本初来日ライヴ。なんと2010年にフランスのモータウンと契約し、デビュー。2011年のジャズ・フェスでいきなり大注目を集めた新人グループだ。今回は東京2日だけ。
もちろん初めて見たが、予想以上に素晴らしいライヴだった。きっちりした「ソウル・ショー」、バンド演奏も歌も、そして、踊りを含めたパフォーマンス、すべてが完成していた。
そこにはジェームス・ブラウン、テンプス、マーヴィン、スティーヴィーなどのモータウン、オーティス・レディング、サム&デイヴなどのスタックス、アイク&ティナ・ターナーまで、1960年代のソウルのエッセンスがこれでもかと詰まっていた。こんなソウル・ショーはなかなか見られない。最近のものでいえば、ラファエル・サディーク、エイミー・ワインハウス、そして、ライアン・ショーなどの流れと同一線上にいる素晴らしいソウル・グループだ。僕がレコード会社のA&Rマンだったら、何も言わず即座に契約する、そんなアーティストだった。
彼らは2009年ごろ、フランスで結成された、現在は9人組。トランペット、サックス、ギター、ベース、キーボード、ドラムスにコーラス2人、そして、リード・シンガーのベン・ロンクル・ソウル。
アップテンポの曲で始まった「ソウル・ショー」は、いきなりダニー・レイを思わせるMCからジェームス・ブラウン・バンドばりのブリッジで曲に突入。バンドはブラス・セクションが2人いることから、実に60年代のリアルなソウル・バンドという感じが醸し出される。しかも二人のコーラスは、実に激しく動く。エイミー・ワインハウスのコーラス/ダンサー並みによく踊る。それも、シンプルな動きなので、観客もすぐに覚えられそう。それがまたバックのメンバーをからめた振り付けをするので、実に楽しい。
各楽器のソロも存分に見せるが、なによりもショーすべてがショーアップされ、徹底的にエンタテインメントとして完成されているから、飽きることがない。しかも、みんなネクタイをしていて、ちゃんとした洋服で、それがいちいちおしゃれだ。ベンなどサスペンダーにめがねというのが、トレードマークで自分のブランド・スタイルといういでたちだ。全体的なプロデュースがとてもよくできている。ファンク、グルーヴたっぷりだが、それがヨーロッパのせいか大変よく洗練されている。ファンク曲でもメロディアスなところがあり、日本人好み。
そして何よりも、ベンのソウルフルな声が素晴らしい。これまでだとライアン・ショー、ラファエル、しばらく前だとイギリスのファイン・ヤング・カニバルズあたりを思わせる声自体がソウルな声だ。僕はファイン・ヤング・カニバルズを思い出した。(そういえば彼らはどうしたんだろう) オーティス・レディングの声を声質はそのままに、少しポップに明るくしたような声とでもいえばいいだろうか。このポップかげんがちょうどいい。
ベース奏者と2人のコーラス、ベンがブラックだが、あとは白人。白人にグルーヴは作り出せないと言ったのは誰だ。それが間違いだということを彼らは証明している。
ベン・ロンクルはフランスのトゥール出身。本名、ベンジャミン・ドゥテールド。お母さん、おばあさんがソウル・ミュージック好きで、自然にそういうものに親しみ、好きになっていったという。ステージでベンは、オーティス・レディング、スティーヴィー・ワンダー、レイ・チャールズ、マーヴィン・ゲイ、ジェームス・ブラウン、ダニー・ハサウェイ、スライ&ファミリー・ストーンらの名前をよく聞いてきたアーティストとしてあげていた。
2004年、19歳か20歳の頃、トゥールーズのフィティアヴァナ・ゴスペル・クワイアーに参加。同グループは2009年に『アイ・ハヴ・ア・ドリーム』をリリース。
その後、自身のグループを作り、いくつかカヴァー曲を録音しそのビデオを作りインターネットにアップした。その中のホワイト・ストライプスの「セヴン・ネーション・アーミー」がフランス・モータウンの目に留まり契約。最初6曲入りのEP『ソウルウォッシュ』を出し、その後フル・アルバム『ベン・ロンクル・ソウル』を出した。最初からジャケットなどイメージが統一されており、かなりプロデュースされている感じがする。
ライヴではコール&レスポンスもうまく、途中のブレイクで客をじらすあたりも、ジェームス・ブラウンや先輩ソウル・アーティスト譲り。
ベンはなんども「ドゥ・ユー・ライク・ソウル・ミュージック?」と聞く。きっと「R&B」ではなく、「ソウル・ミュージック」なのだろう。
彼は昔はロンクル・ベンとみんなに呼ばれていたそうだ。それは、彼がいつもサングラスをして帽子を被っていて、アメリカのライスのブランド、ベン・ロンクルのキャラクターと似ていたから。しかし、ロンクル・ベンだと、商標権などの問題がありそうなので、ベン・ロンクルとひっくりかえしてバンド名にした。
ライヴの最後は、手で「ピース(Vサイン)」「ラヴ(ハートマーク)」、「ソウル(握りこぶしをつきあげる)」のジェスチャーで締めくくった。
ファーストから超満員。なんと前日当日でいきなり予約が伸びたそうだ。何があったのだろうか。それにしてもこれほど素晴らしいライヴを見せてくれれば、次は4-5日ブルーノートでできそうだ。
ここ1-2年で見た新人では一番よかった。彼らのように完成しているアーティストだったら「即・契約」というのは最大の褒め言葉だ。
そうそう、一体このベン・ロンクル、いくつなのだろうって気になった。そこで彼に誕生日を尋ねたら、1984年11月10日生まれということで、まだ27歳である。若い! 当然、ジェームス・ブラウン、オーティス、サム・クックなど、みんな彼が生まれる前のスターということになる。こうやって音楽の鎖はつながっていくのだなあ、と思った。若い世代がこうして昔のソウルを今風の解釈でやるのは、だんぜんありだと思う。
いやあ、だから、エレクトリック・エンパイアーにしろ、このベン・ロンクル・ソウルにしろ、こういうグループって、絶対に日本でもできると思うんだけどなあ。
■音源・映像
Ben, l’oncle Soul - Seven Nation Army
http://youtu.be/C4XKNNl31Gc
http://www.youtube.com/watch?v=C4XKNNl31Gc&feature=relmfu
Ben L’Oncle Soul - Soulman
http://youtu.be/-nuutH_TRNs
ギターのリフに「ドック・オブ・ザ・ベイDock Of The Bay」
Ben l’Oncle Soul - "Petite soeur" official video clip
http://youtu.be/Pa3GwHbYKFQ
これはマーヴィン&タミーの「エイント・ノー・マウンテイン・ハイ・イナフ Ain’t No Mountain High Enough」を下敷きにしたような曲。
■ベン・ロンクル・ソウル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003IWOVN4/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ メンバー
Ben L’oncle Soul(vo) ベン・ロンクル・ソウル(ヴォーカル)
Ulrich Adabunu(back vo) ウルリック・アダブヌ(バック・ヴォーカル)
Cyril Mencé(back vo) シリル・メンセー(バック・ヴォーカル)
Julien Duchet(sax,tp) ジュリアン・デュシェ(サックス、トランペット)
Bertrand Luzignant(tb) ベルトラン・ルージニャン(トロンボーン)
Christophe Lardeau(g) クリストフ・ラルドー(ギター)
Gabin Lesieur(key) ガビン・レシエル(キーボード)
Olivier Carole(b) オリヴィエ・キャロル(ベース)
Loic Gerard(ds) ロイック・ジェラルード(ドラムス)
DJ : March 17, DJ JIN
■ セットリスト
Setlist : Ben L’oncle Soul, Bluenote Tokyo, March 17, 2012
show started 18:02
01.Intro – Seven Nation Army [White Stripes]
02.Soul Man (Original)
03.Elle Me Dit
04.I Don’t Wanna Waste
05.Come Home
06.Crazy [Gnarls Barkley]
07.Petite Soeur
08.My Girl [Temptations]
09.Kiss [Prince]
10.What’d I Say [Ray Charles]
11.Ain’t Off The Back
Show ended 19:23
(2012年3月17日土曜、ブルーノート東京、ベン・ロンクル・ソウル)
ENT>LIVE>Ben L’oncle Soul
2012-
【Ben L’oncle’s Soul: Pop, Fashionable, And Real Soul】
ソウル。
「みんなは、ソウル・ミュージックは好きかあ???」「オオッ、イエー」限りなく観客席も熱く盛り上がる。ほぼ無名の新人ながらブルーノートは超満員。みんな情報早いなあ。観客は若いファンとブルーノートのファンと外人グループ。
ステージ中央、サスペンダーに蝶ネクタイという実におしゃれないでたちのベン・ロンクル・ソウルたちが観客を煽る。彼らの日本初来日ライヴ。なんと2010年にフランスのモータウンと契約し、デビュー。2011年のジャズ・フェスでいきなり大注目を集めた新人グループだ。今回は東京2日だけ。
もちろん初めて見たが、予想以上に素晴らしいライヴだった。きっちりした「ソウル・ショー」、バンド演奏も歌も、そして、踊りを含めたパフォーマンス、すべてが完成していた。
そこにはジェームス・ブラウン、テンプス、マーヴィン、スティーヴィーなどのモータウン、オーティス・レディング、サム&デイヴなどのスタックス、アイク&ティナ・ターナーまで、1960年代のソウルのエッセンスがこれでもかと詰まっていた。こんなソウル・ショーはなかなか見られない。最近のものでいえば、ラファエル・サディーク、エイミー・ワインハウス、そして、ライアン・ショーなどの流れと同一線上にいる素晴らしいソウル・グループだ。僕がレコード会社のA&Rマンだったら、何も言わず即座に契約する、そんなアーティストだった。
彼らは2009年ごろ、フランスで結成された、現在は9人組。トランペット、サックス、ギター、ベース、キーボード、ドラムスにコーラス2人、そして、リード・シンガーのベン・ロンクル・ソウル。
アップテンポの曲で始まった「ソウル・ショー」は、いきなりダニー・レイを思わせるMCからジェームス・ブラウン・バンドばりのブリッジで曲に突入。バンドはブラス・セクションが2人いることから、実に60年代のリアルなソウル・バンドという感じが醸し出される。しかも二人のコーラスは、実に激しく動く。エイミー・ワインハウスのコーラス/ダンサー並みによく踊る。それも、シンプルな動きなので、観客もすぐに覚えられそう。それがまたバックのメンバーをからめた振り付けをするので、実に楽しい。
各楽器のソロも存分に見せるが、なによりもショーすべてがショーアップされ、徹底的にエンタテインメントとして完成されているから、飽きることがない。しかも、みんなネクタイをしていて、ちゃんとした洋服で、それがいちいちおしゃれだ。ベンなどサスペンダーにめがねというのが、トレードマークで自分のブランド・スタイルといういでたちだ。全体的なプロデュースがとてもよくできている。ファンク、グルーヴたっぷりだが、それがヨーロッパのせいか大変よく洗練されている。ファンク曲でもメロディアスなところがあり、日本人好み。
そして何よりも、ベンのソウルフルな声が素晴らしい。これまでだとライアン・ショー、ラファエル、しばらく前だとイギリスのファイン・ヤング・カニバルズあたりを思わせる声自体がソウルな声だ。僕はファイン・ヤング・カニバルズを思い出した。(そういえば彼らはどうしたんだろう) オーティス・レディングの声を声質はそのままに、少しポップに明るくしたような声とでもいえばいいだろうか。このポップかげんがちょうどいい。
ベース奏者と2人のコーラス、ベンがブラックだが、あとは白人。白人にグルーヴは作り出せないと言ったのは誰だ。それが間違いだということを彼らは証明している。
ベン・ロンクルはフランスのトゥール出身。本名、ベンジャミン・ドゥテールド。お母さん、おばあさんがソウル・ミュージック好きで、自然にそういうものに親しみ、好きになっていったという。ステージでベンは、オーティス・レディング、スティーヴィー・ワンダー、レイ・チャールズ、マーヴィン・ゲイ、ジェームス・ブラウン、ダニー・ハサウェイ、スライ&ファミリー・ストーンらの名前をよく聞いてきたアーティストとしてあげていた。
2004年、19歳か20歳の頃、トゥールーズのフィティアヴァナ・ゴスペル・クワイアーに参加。同グループは2009年に『アイ・ハヴ・ア・ドリーム』をリリース。
その後、自身のグループを作り、いくつかカヴァー曲を録音しそのビデオを作りインターネットにアップした。その中のホワイト・ストライプスの「セヴン・ネーション・アーミー」がフランス・モータウンの目に留まり契約。最初6曲入りのEP『ソウルウォッシュ』を出し、その後フル・アルバム『ベン・ロンクル・ソウル』を出した。最初からジャケットなどイメージが統一されており、かなりプロデュースされている感じがする。
ライヴではコール&レスポンスもうまく、途中のブレイクで客をじらすあたりも、ジェームス・ブラウンや先輩ソウル・アーティスト譲り。
ベンはなんども「ドゥ・ユー・ライク・ソウル・ミュージック?」と聞く。きっと「R&B」ではなく、「ソウル・ミュージック」なのだろう。
彼は昔はロンクル・ベンとみんなに呼ばれていたそうだ。それは、彼がいつもサングラスをして帽子を被っていて、アメリカのライスのブランド、ベン・ロンクルのキャラクターと似ていたから。しかし、ロンクル・ベンだと、商標権などの問題がありそうなので、ベン・ロンクルとひっくりかえしてバンド名にした。
ライヴの最後は、手で「ピース(Vサイン)」「ラヴ(ハートマーク)」、「ソウル(握りこぶしをつきあげる)」のジェスチャーで締めくくった。
ファーストから超満員。なんと前日当日でいきなり予約が伸びたそうだ。何があったのだろうか。それにしてもこれほど素晴らしいライヴを見せてくれれば、次は4-5日ブルーノートでできそうだ。
ここ1-2年で見た新人では一番よかった。彼らのように完成しているアーティストだったら「即・契約」というのは最大の褒め言葉だ。
そうそう、一体このベン・ロンクル、いくつなのだろうって気になった。そこで彼に誕生日を尋ねたら、1984年11月10日生まれということで、まだ27歳である。若い! 当然、ジェームス・ブラウン、オーティス、サム・クックなど、みんな彼が生まれる前のスターということになる。こうやって音楽の鎖はつながっていくのだなあ、と思った。若い世代がこうして昔のソウルを今風の解釈でやるのは、だんぜんありだと思う。
いやあ、だから、エレクトリック・エンパイアーにしろ、このベン・ロンクル・ソウルにしろ、こういうグループって、絶対に日本でもできると思うんだけどなあ。
■音源・映像
Ben, l’oncle Soul - Seven Nation Army
http://youtu.be/C4XKNNl31Gc
http://www.youtube.com/watch?v=C4XKNNl31Gc&feature=relmfu
Ben L’Oncle Soul - Soulman
http://youtu.be/-nuutH_TRNs
ギターのリフに「ドック・オブ・ザ・ベイDock Of The Bay」
Ben l’Oncle Soul - "Petite soeur" official video clip
http://youtu.be/Pa3GwHbYKFQ
これはマーヴィン&タミーの「エイント・ノー・マウンテイン・ハイ・イナフ Ain’t No Mountain High Enough」を下敷きにしたような曲。
■ベン・ロンクル・ソウル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003IWOVN4/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ メンバー
Ben L’oncle Soul(vo) ベン・ロンクル・ソウル(ヴォーカル)
Ulrich Adabunu(back vo) ウルリック・アダブヌ(バック・ヴォーカル)
Cyril Mencé(back vo) シリル・メンセー(バック・ヴォーカル)
Julien Duchet(sax,tp) ジュリアン・デュシェ(サックス、トランペット)
Bertrand Luzignant(tb) ベルトラン・ルージニャン(トロンボーン)
Christophe Lardeau(g) クリストフ・ラルドー(ギター)
Gabin Lesieur(key) ガビン・レシエル(キーボード)
Olivier Carole(b) オリヴィエ・キャロル(ベース)
Loic Gerard(ds) ロイック・ジェラルード(ドラムス)
DJ : March 17, DJ JIN
■ セットリスト
Setlist : Ben L’oncle Soul, Bluenote Tokyo, March 17, 2012
show started 18:02
01.Intro – Seven Nation Army [White Stripes]
02.Soul Man (Original)
03.Elle Me Dit
04.I Don’t Wanna Waste
05.Come Home
06.Crazy [Gnarls Barkley]
07.Petite Soeur
08.My Girl [Temptations]
09.Kiss [Prince]
10.What’d I Say [Ray Charles]
11.Ain’t Off The Back
Show ended 19:23
(2012年3月17日土曜、ブルーノート東京、ベン・ロンクル・ソウル)
ENT>LIVE>Ben L’oncle Soul
2012-
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