◎山下達郎の音楽を知っている人生と、知らない人生

(2012年4月5日の山下達郎ライヴを見ての感想文です。ご本人の意向を反映し、極力ネタバレには配慮していますが、これからごらんになる方で、先入観を持ちたくない方はご注意ください。すでにごらんになった方、行く予定のない方、行こうかどうか迷っている方などは心置きなくごらんください)

【Yamashita Tatsuro: Life With Knowing Tasuro’s Music, Life Without Knowing His Music】

濃密音楽愛。

暗転してから3時間半。まさに濃密で音楽愛のあふれる空間と時間だ。何度となくこれまで自分が音楽が好きでよかったなあ、と心底感じ取った瞬間があった。音楽が趣味で、楽しみで、好きでそれを見に行って感動できる。これは平和な時代の最高の贅沢だ。

人生には二つある。

音楽の良さを知っている人生と、知らない人生。僕は幸いにも前者だ。とても幸せなことだと思う。

良い(良質の)音楽を知っている人生と、知らない人生。僕は幸いにも前者だ。とても幸せなことだと感じる。

もうひとつ。

人生には二つある。

山下達郎の音楽を知っている人生と、知らない人生。僕は幸いにも前者だ。とても幸せなことだ。

そんなことを3時間半の間、ずっと思った。

僕が山下達郎の音楽を知ったのは1979年夏。西麻布のバー「トミーズ・ハウス」だった。初めて山下達郎のコンサートに行ったのは1980年12月、中野サンプラザだった。

今のようにあまりコンサートに行く機会がなかったあの時代、サンプラザで見たアーティストはとてもよく覚えている。グラディス・ナイト&ザ・ピップス、クール&ザ・ギャング、スタイリスティックス、バリー・ホワイト、マンハッタンズ、クルセイダーズ…。どれもそのときの空気、雰囲気を良く覚えている。当然そうしたラインナップに山下達郎は入る。(ちょっと僕が見てるラインアップが偏っているのはご容赦ください(笑))

最近、比較的小さなライヴハウスでのライヴを見る回数のほうが多くなっているが、やはりこうしたコンサート・ホールでのライヴは格別にいいなあ、と感じさせられた。

ハジタツ。

ライヴが始まる前、サンプラの1階のカフェでヤンキー風のおにいちゃんがかわいい女の子に「ヤマタツ見にきたの?」と声をかけていた。その子は「ヤマタツ」の意味がわからず、ぽかーんとしていた。30年前と時代は変わったが、今は、そんな風景さえ山下達郎コンサートの一風景として楽しめてしまう。

今日初めて山下達郎のコンサートに来た人、と問われ、この日は観客の3割ぐらいが手をあげただろうか。けっこう多いな、という印象を持った。最近では親子・二代で来るファンも多いという。全体的に年齢層は高いが、年齢層も、職業も、ファンの歴史の長さも様々に混合している観客層はまさにメルティング・ポット。それをステージの主は、じつにうまくあしらっていく。同じツアーに何度もリピート来場する超常連さんにも、普通の常連さんにも、そして初めての来場者「ハジタツ」にも。(初めて来た人が手をあげたとき「初めての山下達郎ライヴ=ハジタツ」なんて言葉を思いついた。ハジタツ、こんなにいるのか、と)

山下達郎が2008年からライヴ活動を再開して、今回で彼が言うところのツアー「シーズン3」。最初の一年目はまだ声の調子が本調子ではなかったが、このところ以前のように戻ってきた、とステージのMCでも言う。

かつてのように新作発売からのツアーという枷にとらわれず、自身が過去40年以上で作った約300曲の中から、やりたい曲だけをステージにかけて、歌い倒す3時間半。(とは言っても、新作からの曲もちゃんとある。そしてそのセットリスト作りには並々ならぬ苦労があるようだ)

何度か泣きそうになったことがあった。二度ノーマイクで歌ったところだ。恒例アカペラ・コーナーの1曲で、途中マイクから離れ、声を発した。まさにアンプを通さない正真正銘のアンプラグドの生声、生歌が収容人数約2200の会場に響いた。その瞬間、なぜかぐっとこみあげるものがあった。なんで、そこでそんなに感動したのだろう。やはり30年以上の年月の積み重ねの長大さなのだろうか。継続の美学の重厚さか。あるいは、生声はすべてのプリミティヴな原点という素朴さを感じたからか。そのすべてなのだろうと思うが、それ以上のものもあると感じた。

観客。

シーズン3にはいって、バンド演奏・歌唱は、まるで完成したレコードのようだ。特にドラムス、小笠原拓海はますます「達郎色」に染まってきたような気がする。そして、他のリズム隊と繰り出す音が実にタイトにしまる。見事だ。

曲間のトークも江戸っ子らしい落語仕込みでじつに軽快で、とんがっている。

アンコール前だったか、「(日本の現状は)バカな政治家とバカな官僚がこんなことにしてしまって、ちゃんとやってもらわないと困る。~~なんて発言をしたら、リスナーの方から、『あなたのような影響力のある方が、そんな発言をしていかがなものか』というお便りがありました。しかし、バカをバカと言って何が悪いっ」と話したところ、その瞬間観客席から一斉に熱い拍手が巻き上がった。こんな観客も素晴らしいと思った。

山下達郎は政治家でもなんでもないが、その一本芯の通った思想、哲学は、ファンの間にも30年以上にわたって染み込んでいる、ということを垣間見た瞬間だった。

そして、彼の音楽は一見おしゃれな音楽のように見えるが、実はこんなところでもわかるように、根っこにあるスピリットは、正真正銘のロックン・ロールだ。

感動前線。

江戸っ子は口が悪い、といつも彼は言う。そして、トークのはしばしに歯に衣着せぬ直球の発言が観客のストライク・ゾーンに次々と投げ込まれる。僕は何物にも日よらないこういうとんがっている部分がとても好きだ。

それにしても、これだけ頑固に自分の道をわき目も振らず邁進して30数年。好きなことをやって、これだけ多くの人に支持されているということが本当にうらやましい。

以前のライヴでは、曲目、トークも一字一句同じようにすべてやっていたそうだが、最近はトークでも客いじりなどをして縦横無尽に楽しんでいるようだ。そこはまるくなったということなのだろうか。(笑)

そしてこの日は64本中49本目で、まだ残り15本あり、これから約3万人が見るので、ブログなどに書く場合はご配慮を、とのこと。(一応配慮してみました)

ライヴは2012年5月12日(土)、沖縄までまだまだ続く。

あ、そうだ。今回もプログラム/パンフレットは絶対買いです。読み応えたっぷり。

さくら前線は北上一途だが、山下達郎の感動前線は雲の如く日本全国を北に南に東に西に動き回る。Show Must Go On。

(セットリストなどは、ツアー終了後、5月13日以降にご紹介します)

■山下達郎・過去関連記事
(今回は古い順に並べて見ました)

=2008年、ライヴ復帰、シーズン1=
May 07, 2008
Yamashita Tatsuro Live At Hamarikyu Asahi Hall
【山下達郎~素晴らしき人生】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20080507.html

May 11, 2008
Yamashita Tatsuro Acoustic Mini Live @ Hamarikyu Asahi Hall
【山下達郎・アコースティック・ミニ・ライヴ・セットリスト】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20080511.html
(2008年5月アコースティック・ミニ・ライヴ記事)

大阪フェスティヴァル・ホール最後の日↓
December 29, 2008
Yamashita Tatsuro @ Osaka Festival Hall Final
【山下達郎~フェスティヴァル・ホール最後の日】
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20081229.html

2009年05月12日(火)
全身全霊でかけぬけた50本~山下達郎2008-2009ツアー最終日終了
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20090512.html

+++

2010年07月08日(木)
ハーヴィー・フークワ80歳で死去~ムーングロウズのリード・シンガー:マーヴィン・ゲイの育ての親
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10584608240.html

+++

=2010年、シーズン2=

山下達郎、デビュー35周年ライヴ・ツアー~刻まれ続ける音楽と人生の年輪
2010年11月07日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20101107.html

山下達郎ライヴ2010、39本終演~物質に付加価値を与える「体験」
2010年11月09日(火)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10701547198.html

=2011~2012、シーズン3=

山下達郎の音楽を知っている人生と、知らない人生
2012年4月9日
http://ameblo.jp/soulsearchin/day-20120409.html

■山下達郎オフィシャルウェッブ

http://www.tatsuro.co.jp/
ライヴスケジュール
http://www.tatsuro.co.jp/live/

■『TATSURO YAMASHITA PERFORMANCE 2011-2012』
メンバー 山下達郎2011~2012

山下達郎 (歌、ギター)
伊藤広規 (ベース)
難波弘之 (ピアノ、ローズ)
柴田俊文 (キーボード)
佐橋佳幸 (ギター)
宮里陽太 (サックス)
小笠原拓海 (ドラムス)
国分友里恵 (バックヴォーカル)
佐々木久美 (バックヴォーカル)
三谷泰弘 (バックヴォーカル)

■山下達郎  Ray Of Hope

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0052VI2N4/soulsearchiho-22/ref=nosim/"

■ライド・オン・タイム

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005UD3W/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■フォー・ユー

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005UD3X/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■セットリスト 山下達郎 中野サンプラザ、2012年4月5日木曜
Setlist : April 5, 2012, Nakano Sun Plaza

(セットリストは、5月12日ツアー終了後に改めてご紹介します)

lights off Theme started 18:35
01、

encore
CD end 22:06

(2012年4月5日木曜、中野サンプラザ、山下達郎ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Yamashita, Tatsuro
2012-

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