★ジョー・サンプル早くも新作登場『チルドレン・オブ・ザ・サン』

【Joe Sample’s New Ambitious Project】

ビッグバンド。

つい先ごろ、クレオール・ジョー・バンドで南部のザディコ・ミュージックのアルバム『クレオール・ジョー・バンド』クレオール・ジョー・バンド をリリースしたばかりのジョー・サンプルが、はやくも次のアルバムをリリースする。こんどは、なんとドイツのNDRビッグバンドとの共演作『チルドレン・オブ・ザ・サン』で、2012年10月24日発売。ジョーの来日中に、このアルバムについて少し話を聞いたので簡単にまとめてみよう。

NDRビッグバンドとは、Norddeutscher Rundfunk (NDR) (North German Broadcasting)の略。つまり北ドイツ放送局所属のビッグバンドということになる。放送局が持つバンドという意味でいえば、いわゆるN饗(NHK交響楽団)のような存在。

このNDRから、何かのスタンダードをジョーのピアノをフィーチャーしてビッグバンドで録音しないか、という声がかかった。そのとき、ジョーはそういうのは、今までもやってきてあまりおもしろくないので、ちょうど自分の頭の中にあり、アイデアを暖めていたミュージカル用の楽曲をビッグバンドでやったらどうだと逆提案した。

それが今回のタイトルとなっている『チルドレン・オブ・ザ・サン』という作品だ。

これ用に作っていた曲のデモCDをNDRに送ると「今までのジョー作品のどれにも似ていないまったく違う作品でおもしろい。ぜひ、これをビッグバンドでやろう」ということになった。

奴隷。

そもそもこの作品の始まりは、1995年にさかのぼる。この年、ジョー・サンプルはヴァージン諸島のサン・クロワを訪れた。そのときにそこで一冊の本を知る。キャリル・フィリップスCaryl Phillipsという在イギリスの黒人作家が書いた『ケンブリッジ(Cambridge)』だ。この物語はフィクションだが、カリブ諸島がアフリカからつれられてきた奴隷をアメリカやヨーロッパに送り出していた経由地で、その奴隷の物語を描いたものだった。

かねてから奴隷の歴史、黒人の歴史に大いなる興味を持っていたジョーはこの本に深く感銘し、訪れていたサン・クロワの景色とともに、ミュージカル作品を作れないかと考えた。

かつてジョーは奴隷という存在を考えたときこんなことを思ったという。

「芝生に寝転がって空を見る。自分が奴隷だったら、いつか空を飛んで、どこかに行きたい (One day, I’ll fly away)と思う」

ジョーは、その翌年1996年、本の著者カリルとニューヨークで会い、ミュージカルにできないかその可能性を探るべく、いろいろ話をするが、残念ながら著者とジョーは意気投合することはなく、話が進むことはなかった。

ただそれ以後もこの物語へのジョーの執着はあり、楽曲を作り、デモテープを録音、それを作品としてレコーディングする選択肢もあった。

そうした中で、NDRビッグバンドからの誘いがあり、「いいのがひとつあるぞ」とこれを提案したところ、レコーディングすることになった。レコーディングは2011年11月に行われ、それが10月にリリースされる。

ジョー・サンプルは昨年レコーディングでドイツに渡ったが、2012年11月には再度訪問しこのビッグバンドとコンサートを行なう。また、彼は2012年9月1週目に「東京ジャズ」出演のために来日していたが、それを終えた後、岩手県・盛岡で行なわれた村田陽一ビッグバンドとともに、この曲を演奏している。

作家。

キャリル・フィリップスは1958年3月13日、カリブ海に浮かぶセント・クリストファー(セント・キッツ)に生まれた。両親とともにイギリスに移住、イギリスのオックスフォードなどやニューヨークの大学にも通った。その後、大学で教鞭をとりながら、作家活動を開始。1980年には処女作である劇台本作『ストレンジ・フルーツ』を発表。以後、小説、ショートストーリーなどを次々と発表。1980年、22歳のとき幼少の頃セント・クリストファーを離れて以来初めて同島を訪れインスピレーションを受け、約5年をかけて『ザ・ファイナル・パッセージ』を執筆、1985年発表。さらに翌年第二弾『ザ・ステイト・オブ・インディペンデント』を発表。この『ケンブリッジ』は1991年に発表されていた。

『ケンブリッジ』はイギリス白人女性エミリー・カートライトが西インド諸島の父親が持つ家を訪れ、そこで奴隷のケンブリッジと出会うところから始まるフィクションだ。

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最新作収録曲がすべて映像になっています。アルバムの曲順通りに並べてみました。

NDR Bigband feat Joe Sample Jazz Baltica 2011 - I Wanna Go Home and Street Life (piano solo)

http://youtu.be/PftqV5bmh9M



NDR Bigband feat. Joe Sample - Buttermilk Sky / Islands of the Mind

http://youtu.be/UmHOY5j2p8w



NDR Bigband feat. Joe Sample - Rumfire / Gold in the Cane

http://youtu.be/jKVtzhxQyvY



NDR Bigband feat. Joe Sample - I Believe In / Children of the Sun

http://youtu.be/zZPgSlpubvQ



NDR Bigband feat Joe Sample Jazz Baltica 2011 - Blue Abyss

http://youtu.be/D890d1YgcZA



NDR Bigband feat. Joe Sample - Creole Eyes / Albatross Day

http://youtu.be/EfR3rSRJubQ



Joe Sample & NDR Bigband ‘Children of the Sun’

Jörg Achim Keller conductor, arrangements
Joe Sample compositions, piano
Thorsten Benkenstein, Ingolf Burkhardt, Claus Stötter, Reiner Winterschladen trumpet
Fiete Felsch, Peter Bolte alto sax
Christof Lauer, Lutz Büchner tenor sax
Frank Delle baritone sax
Nils Landgren trombone, vocals
Dan Gottshall, Klaus Heidenreich, Stefan Lottermann trombone
Ingo Lahme bass trombone
Stephan Diez guitar
Ingmar Heller bass
Robert Ikiz drums
Marcio Doctor percussion

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■ジョー・サンプル&NDRビッグバンド『チルドレン・オブ・ザ・サン』(2012年10月24日発売)(ビクターVICJ-61675、 2625円)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00915EMFE/soulsearchiho-22/ref=nosim/


Tracklisting

1. アイ・ワナ・ゴー・ホーム I WANNA GO HOME
2. バターミルク・スカイ BUTTERMILK SKY
3. アイランズ・オブ・ザ・マインド ISLANDS OF THE MIND
4. ラムファイア RUMFIRE
5. ゴールド・イン・ザ・ケイン (イントロ) GOLD IN THE CANE
6. ゴールド・イン・ザ・ケイン GOLD IN THE CANE
7. アイ・ビリーヴ・イン I BELIEVE IN
8. チルドレン・オブ・ザ・サン CHILDREN OF THE SUN
9. ブルー・アビス BLUE ABYSS
10. クレオール・アイズ CREOLE EYES
11. アルバトロス・デイ ALBATROSS DAY


ARTIST>Sample, Joe>Children Of The Sun

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