◇映画『シュガーマン 奇跡に愛された男~Searching For Sugar Man』

【Documentary Movie ”Searching For Sugar Man”】

ドキュメンタリー。

湯川れい子先生のご紹介で映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』の試写を見た。湯川さんが熱いツイートをされていたのでとても興味を持った。

1970年3月、一枚のアルバムがロスのサセックス・レコードからリリースされた。同レーベルの記念すべき第一弾アルバムだ。ロドリゲスというシンガーの『コールド・ファクト』という作品だ。レコードは、デトロイト・サウンドの要でもあるデニス・コーフィーとマイク・セオドアー・コンビによるプロデュース。彼らがデトロイトで「発見」したシンガーのいわゆる「セオ・コフ・プロダクション」の作品だ。一言で言えば、ボブ・ディラン・ミーツ・ホセ・フェリシアーノといったタイプの作品で、そこそこ予算もかけられ、宣伝も打たれたが、アメリカではまったく売れなかった。ところが、このアルバムが南アフリカで1971年にリリースされるとじわじわと売れ、30年近くかけて大ベストセラーになる。

南アフリカでは大ヒットしたこの作品、アーティストについて、誰も知らない。噂が噂を呼び、このロドリゲス愛称シュガーマンを探そうと人物が現れた。南アフリカで熱心に彼を探そうとした2人の音楽マニアだった。ステージで自殺したという噂もあった。すでに死んでるのではないかとも言われた。彼らは1996年から1997年にかけて探す作業をし、この話に興味を持ったスウェーデン人マリク・ベンジュール監督が一連の流れを2006年から約3年かけて制作、映画化した。

この過程が実におもしろい。途中いろいろな関係者にあたって話を聞く。最初にでてくるのが、デニス・コーフィーとマイク・セオドアーだ。どちらもデトロイトで活躍するミュージシャン/アレンジャー。多数の作品にそのクレジットがある。

そして、このアルバムを出したサセックス・レコードのオウナーだったソウル業界の重鎮クラレンス・エイヴォント。サセックスではビル・ウィザース、ドーン、デニス・コーフィーのヒットなどを生み出すが、その後タブー設立、モータウンの社長就任など、ブラック・ミュージック業界で重要な地位を転々としている大物だ。

映画の中でインタヴューアーに「俺を怒らせたいのか」とすごむところなど、手練手管のやり手だ。ただクラレンスもロドリゲスについては評価していて取材にも協力的だったそうだ。

アメリカではまったく売れず南アフリカで大スターになったロドリゲスというシンガーを探すというこのテーマがはっきりしている。こうやって謎を深く掘り下げて、調べていき、目的地にたどり着けるというのはその過程がものすごくおもしろい。

なんとサンダンスなどいくつもの映画賞を取り、こんどのアカデミー賞ドキュメンタリー部門でもノミネートされている。映画はスウェーデンとイギリスの合作。2012年作品。

監督のマリク・ベンジェルールに機会があれば尋ねたいことがひとつある。それは、「クラレンス・エイヴォントのインタヴューにギャラを払ったか。払ったのであれば、いくら払ったのか」。エイヴォントはただでインタヴュー受けるような人物ではないはずなのだが・・・ (笑) 
(この映画については、3月に入ったら公開間近に「ソウル・サーチン・レイディオ」でも紹介しましょう)

(2月1日・午後12時半追記情報は、五十嵐正さんからいただきました。ありがとうございます)

『シュガーマン 奇跡に愛された男』2013年3月16日(土)から角川シネマ有楽町などでロードショー公開

映画公式ホームページ。予告編など。
http://www.sugarman.jp/

■サントラ:ロドリゲスの歌が入ってます

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■ロドリゲスの幻のデビュー・アルバム 『コールド・ファクト』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001BKVWYG/soulsearchiho-22/ref=nosim

■ロドリゲスの2作目『カミング・フロム・リアリティー』

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■デニス・コーフィー:ベスト

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