【ミスター・アンザイかく語りき】

トークイヴェントでの安斎語録。じゃ〜〜ん。

安斎さんがプリンスを好きになったきっかけ。「最初ね、テレビでね、今野雄二が紹介してたんですよ。『変態特集』とか言って。(プリンスが)女性物の下着つけて、黒いコートその上から羽織って、小学校の前にそれで立ってたら、絶対捕まっちゃうっていうようなかっこうしてて。(笑) 『気持ちわり〜』っていうのが第一印象で。『気持ちわり〜』が大体好きになるきっかけじゃないですか。(「え〜〜っ」という歓声) やりません? 下着とかつけてみるの? (再び「え〜〜?」という疑問符) やるよね、普通。(笑) (「え〜〜??」) で、好きになりだすと止まらないんですよ(笑) それから、いろいろ読んだり、聞いたりして。で、ライヴ見て、もうダメ(笑) 大体さ、ギターの先から水なんかだしちゃって。(笑) 引田天功じゃないんだからさ(笑) ばっかじゃないの?って感じ。ベッドの上でひとりで体位の練習とかしちゃってさ(笑) あんなイナバウアーやっちゃって(笑)」 

「『タモリ倶楽部』とかに出てる渡辺祐というのがいて、彼はソウル、R&B好きなんですよ。僕はどっちかっていうとロック好きなんですね。で、プリンスはちょうどその真中にいるんだ。(笑)」 渡辺氏と安斎さんの間に、プリンスがいるのか?? (笑) わからなくもないが・・・。(笑) 

「プリンスのいろいろなアーティスト性などを見たり、聞いたりしてきてね。めちゃくちゃなところとか、いろいろあるでしょ。好きにやりたい放題で。(プリンスが横浜球場でギターを投げたことを語り) で、思ったんですよ。プリンス、俺じゃね〜か? 俺じゃん!!って(大爆笑) 俺も、もどかしくなると、よく物、投げるんですよ。で、別に(それでも)いいじゃんって(笑)」 腹抱えて笑った。

安斎さんは、プリンスがインターネットで新曲を発表したりするようになってから、しばし疎遠になった。うまくできなかったらしい。そこで「もう、いいっ。俺はブートに走る」と宣言。「この辺(新宿界隈のレコード屋)でいろいろ買いましたよ。その中にはさ、買い物袋に小さな穴をあけてそこにカメラをいれ、録画しているようなのもあるんですよ。ズームされると、ステージが映るんだけど、引くと、画面が小さな丸の穴から映っているというもの。ゴソゴソ音がしててさ、これで6000円もするのかよ、って」(爆笑) 

ニューアルバム『3121』からのビデオなどを見て。「まあ、(新作は)これまでのプリンス、全部ありっていう感じ。これも、あれも。きっと、勝負賭けてるんじゃないの? でもって、もしこれが売れなかったら、また(プリンス)何年か引きこもっちゃうんじゃない? (笑) それは、困る・・・と。だから、これは応援しないと」 

「これだけね、ヴァリエーションあるとさ、もう世界中、アルバムはプリンスだけでいいじゃん、って思うよね」 (観客席から大拍手) 「放送局も、これ(新作)1枚でいいじゃん(笑)  でも、ほんと本人もそう思ってると思うよ。(プリンスは)『これで、いいだろ』って」

「これだけさ、アルバム全部いいとさ、みんなよくて、集中しないじゃないですか。こんなになっちゃうと、『アタシはこの曲が好き』とか、『俺はこっちが好き』とかってなっちゃうじゃない。ダメ! そういうの禁止! (笑) だから、今、一押し、二押し、三押し、四押しくらいまで決めておきましょうよ(笑) アルバム出た当初は、みんなでこの(決めた)曲を押していきましょうよ。みんなで有線に電話してリクエストしてもいいし、何かにつけて、言うんですよ。『あ〜〜、なんかさ、今日はブラがスウェット』とか(爆笑) 電車乗ってもやるんですよ。そうすると、みんな『なんだろなあ』って思うわけですよ。そういう作戦はどうですかね。なんかね、そういうのやんないと、(プリンスが)日本を嫌いになっちゃうよ(笑)」

「その昔、テレ朝がやって、東京ドーム、来たじゃないですか。それでテレ朝、大赤字こくんですよ」 横のツナから「その時、吉岡さん、テレビでてしゃべってました」 安斎さん「お前のせいか!!(爆笑)」 「す・い・ま・せ・ん」 「それでね、(日本では)プリンスがダメだって(業界的に)思われると僕は困るんですよ。だって、僕、飛行機嫌いだから、(海外まで)行けないんですよ。出来ることなら、新幹線で移動したいんで、また、新幹線のあるところに来て欲しいんです」

「だから、決めましょうよ。僕は、一切、好き嫌いはいいません! 性の不一致もありません(笑)」 と言ってしばらくして、「僕的には、やっぱりローリングストーンズも来てるし、『フューリー』かな」 「あれ、ストーンズ行くんですか?」と僕。「行きますよっ! ケッ! 6万5000円ですよっ! ばっかじゃないの? (笑) フランク・シナトラかっ! (笑) ボクシングのリングサイドじゃあるまいし。これで、ノックアウトとかするんならいいけどね(笑)」 

僕。「安斎さん、これまだ聞いてない? 12曲目の『ゲット・オン・ザ・ボート』。今、かけられます、CD?」 すると、観客席から「メイシオ、メイシオ!」(笑) そうだ、これメイシオはいってる。そこで、CDかかる。「ああ、いいねえ、これ! ライヴいいだろね。決定! 決定! (拍手) かっこいいっ!」 

ちょうどメイシオが吹き始めたところで、僕が「これ、メイシオ!」と言うと、安斎さん「わかってますよ(笑)」。「いやあ、このサックスがでてくると、思わず『メイシオッ』って言っちゃうんだよなあ」 「怪しいな、(笑) 吉岡さんが、『メイシオ』って言ってない? しかしさ、こんな曲が日本でヒットしたらかっこいいよね」 「ブレンディーのCMとかに使ったらどうでしょうねえ」 「ありえない、ありえない(笑)」

というわけで、プリンス新作から、安斎肇およびファンの一押しは「ゲット・オン・ザ・ボート」に決定! (笑) 安斎さん、サイコー、ミスター・アンザイ、バンザイ!

(2006年3月19日日曜、新宿ネイキッドロフト=プリンス・トーク・イヴェントVOL.3)

ENT>EVENT>Prince Talk Event
(少しだけネタばれになります)

【映画『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』】

サーチ。

ヒップホップ界のカリスマラッパー、50セント(フィフティー・セント)主演の映画が登場した。タイトルは、2003年のデビューアルバムと同じく『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン(金持ちになるか、さもなくば、死か=成り上がりか野垂れ死にか)』。フィフティー自身が、本人のほぼ自伝的映画の主人公として演技する。全米ではすでに2005年11月に公開され話題になった作品。

50セントの実際の人生にほぼ近い物語ゆえに、様々なエピソードが実にリアルに描かれる。父親を知らずに、母親に育てられ、その母親は彼が8歳の時に殺害される。環境ゆえにギャングスタへなっていき、その世界でトップに登りつめていく。だが、コロンビア人との抗争に巻き込まれ、思わぬ展開へ。

ラッパーとして、やっていこうとするが、なかなかうまくいかず、金に困り強盗をするが、その帰り道、何者かに襲われ、9発もの銃弾を浴びて地面に倒れる。「地面に倒れて9ミリの銃身を見つめた時、死を覚悟しつつ、助けに来るべき父を待っていた。俺は父親を探していた。だが、俺が探していたのは、父ではなく自分だった」。

50セントは映画の中で言う。これは「サーチ(探し)の物語だ」と。まさにあらゆる点において「サーチ」だ。どん底、ぎりぎりのところでサヴァイヴして生きながら、愛と裏切りと友情の間で人生を彷徨うソウル・サーチンの物語でもある。また、彼はずっと知らなかった父親も探していた。だが、彼が最終的に探していたものは、実は父親ではなく、自分だった。ドラッグを売る闇の世界では、愛はご法度だ。しかし、彼は無意識のうちに愛を探してしまう。たまたま愛に出会ってしまったのかもしれないが、その愛が彼の人生を劇的に変える。

それにしても、銃弾の音がスクリーンから聞こえるたびに、僕はびっくりしてしまう。見終えて、かつてのこうした映画、『ポエティック・ジャスティス』、『ボーイズ・ン・ザ・フッド』、『ジェイソンズ・リリック』などと同様の、重い気持ちを持った。リアルであるだけに、そのリアルさが辛い。

フィフティーの演技は、立派だ。ラッパーは皆苦労しているから、苦悩の演技がうまいのか。またストーリーの骨格がしっかりしているので、飽きない。

エピソードのひとつで、リック・ジェームス似の男が出てきて、彼がちょっとした鍵を握るが、これがなかなかおもしろかった。

フィフティーはすでに次回作『ホーム・オブ・ザ・ブレイヴ』への出演が決まっている。また試写室には、珍しくヒップホップのラッパー風の人たち、Bボーイ系の人たちが何人も来ていた。

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Get Rich Or Die Tryin’
『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』
監督ジム・シェリダン 出演カーティス”50セント”ジャクソン テレンス・ハワード
音楽クインシー・ジョーンズ 上映時間1時間56分
配給UIP
シネマライズで初夏ロードショー予定

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オリジナル自伝『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』
5月上旬 青山出版社から発売予定
予価1575円 仕様四六判本文約320ページ

ENT>MOVIE>Get Rich Or Die Tryin’
【ストーンズ、ジャパンツアー始まる】

60時間。

今日(22日)は、ストーンズが東京ドームでライヴをやっている。このステージがとてつもなく大きい。なんと設営に60時間、10トントラック約70台分の資材が持ち込まれているという。20日(月曜)午前0時01分から約60時間かけて作る。水曜昼12時頃ステージが完成。それから、リハーサルをして、22日午後7時からの本番となる。しかし、設営に60時間? はんぱじゃない。(笑) 今回もステージがとにかく大きい。

通常の正面ステージから、いわゆる花道がアリーナ後方まで伸びる。いわゆるAブロックの9、10、11の3ブロックをAからDまで4列も使って花道とBステージを作る。このBステージではショウの途中3曲が演奏される。

今回の座席配置では、正面ステージの一番前あたりが「ゴールデン・サークル」という名でドームの場合5万5千円で売り出された。

ストーンズ・マニアは、そのゴールデン・サークルと、Bステージの前、Eブロック近辺の2枚のチケットを買い、メンバーが移動すると、いっせいにそのBステージ前の座席に移る、という。これは、すごい。

しかし、ステージを作るのに60時間だと、やはり、壊すのにも同じくらいかかるのだろうか。ドームでのライヴは中一日あいて2回だけ。しかし、丸7日はドームを借り切ることになる。

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さて、最初は僕はストーンズ今日行こうかと思ってたんですが、いろいろあって金曜日にしました。安斎さんと違って、僕はゴールデン・サークルではありません。平民のS席です。(笑) 

そこにタイミングよくジュンコ・コシノさんのファッションショウがあるというので、出向きました。これを外苑の絵画館前にできている特設テントに見に行き、その後、ショーメの新作発表会というのが、以前書いた東京駅前のキャノビアーノであるというので、行ってみました。

ジュンコさんのデザインした洋服っていうのは、しかし、ファッションにシロウトの僕が見てもわかるもんなあ。(笑) すごいもんです。芸能人などもけっこういた。途中で1曲中国の方かな、胡弓みたいな楽器を演奏していました。けっこうよかった。だけど、ショウ自体がちょっと今回は短かったような気がした。30分弱かな。もっと見たかったな。

続くキャノビアーノのパーティーは一階と地下を両方使ったもので、相当派手なものでした。料理がこういうパーティーとしてはとてもおいしかった。みんな一口サイズものなんですが、よくできてる。下のバーの北添さんにはオープニング以来なので、久々の再会でした。途中でエロエロダンサー3人組が登場して、とっても挑発的にセクシーダンスをしたのが、印象的でした。両方の会場でクリス・ペプラーを見かけた。ショーメではちょい悪のジローラモや、森泉なんかもいた。

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【ソロを見ることによってわかるグループの構成部品】

人体解剖。

今日は黒沢薫さんのソロライヴ(品川ステラボール)に行ったので、その感想を書こうと思ったのだが、ライヴの内容に関しては、セットリストなども含めて仙台公演(3月28日)終了後が情報解禁ということなので、しばしお預けで、周辺のもろもろのことを書いてみることにする。

実は前回のソロライヴ(10月)も見に行ってる。ところが、その日はラウル・ミドンのライヴと重なり、黒沢さんのほうを30分見て、ラウルに飛んでってしまった。すいません。ということで、黒沢さん直々に「今度は、最初から最後まで見てくれるんでしょうね。打ち上げまで付き合ってくださいよ(笑)」ときっぱり言われていたので、「万難を排しておうかがいします」と約束していた。打ち上げが始まるまでちょっと時間がありそうだったので、寄り道をして、代官山でやってるケイリブのところに、『ソウル・サーチン』の打ち合わせをしにいった。そしたら、その途中、マネージャー氏から「何時ごろいらっしゃるでしょうか」と電話が入った。

で、無事打ち上げ会場に到着、すでにみんな盛り上がっていた。そこでこの日のベース奏者、ヴェテランの青木智仁さんとお話をする機会に恵まれた。青木さんは今回の「バンドマスター」。なんと、『ソウル・ブレンズ』を聴けるときには必ず聴いていただいている、特に娘さん(18歳)は毎週のように聴いている、という嬉しいお話をいただいた。

いろんな話をする中で、関西と関東のミュージシャン気質の話になり、青木さんが指摘するには、「村上さんのソロのバックミュージシャンは、関西系、黒沢さんのバックミュージシャンは関東系」だという。それを聞いて、ほんとそうだな、とピンと来た。関西系がコテコテのソウル系で、関東系はちょっと都会的に洗練されている感じ。村上・黒沢の二つのソロライヴは、その点において、とても対照的でおもしろい。

例えば、上田正樹さんなどのバックバンド、あるいはブルース系のバンドも、コテコテ関西系ソウル、逆に角松敏生さん、鈴木雅之さん、山下達郎さん、はては大瀧詠一さんなどは、関東・洗練系ソウルだ。青木さんの観察によると「名古屋を境に、関東系、関西系と分かれるような気がする」という。では、ソイソウルは? う〜む、どっちでしょうね。コテコテ系でもありつつ、洗練されてるところもあるし。「あ、ズーコは名古屋出身ですよ」と青木さん。ソイソウルはちょうど真中か。(笑) 

黒沢さんは、どちらかというとマーヴィン・ゲイ、スティーヴィーなどが好き、村上さんは、どちらかというとサム&デイヴや、スタックス系、南部系のソウルが好き、ということで、そうした趣味嗜好も、それぞれのソロ・ライヴ・パフォーマンスに出ている。そうしたソロ嗜好が一体となって、さらに残る3人のキャラがひとつのグループとなってハーモニーを作る。グループというのは、その構成員がひとりでも抜けるとグループとしてのカラーが違ってきてしまう。

グループのサウンドだけを聴いていてもわからない、それぞれの趣味嗜好が混ざり合わさったものが、村上・黒沢のそれぞれのソロを見ることによって、ちょっとばかり「人体解剖」の如く、ここがこうなっていて、あそこがああで、それで、あわさってこうなっている、という具合にスケルトンになって浮かびあがってきて、とてもおもしろかった。別の言葉で言えば、完成したプラモデルを、少しだけ分解して、中がどうなっているかを観察して、ここがこうだから、全体的にこうなってるんだ、ということが改めてわかった、といった感じだろうか。

ところで、寄り道してケイリブに会ったところ、ケイリブは明日(24日金曜)の自分のライヴ(舞浜イクスピアリ)のことで一杯一杯で、それはそれで、ひじょうにおもしろそうなのだが、『ソウル・サーチン』についても、いろいろ話した。今のところ、木下航志くん、ブレンダ・ヴォーン、シャンティ、そして、他にガッツも歌ってくれることになった。見せる映像も大体編集して、映像素材と各人が歌う曲の順列組合せを考えた。

これだけあると、交通整理の司会がかなり大変になるかもしれない。黒沢さんライヴで久々に会った、トーク・ゲストの松尾潔さんに「一両日中にラフの台本、進行表、お送りしますので〜〜」と言ったら、「台本なんてあるの?」とびっくりされた。(笑) まあ、話のところは、一言「(以下フリートークで)」とかになるんだろうが。(笑) ホントに70分x2セットに収まるのだろうか。無理だろうなあ。かなり満腹感のあるものにはなるような気がする。

(2006年3月23日木曜、品川ステラボール=黒沢薫・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Kurosawa, Kaoru
【世界一のロックバンド〜ローリング・ストーンズ・ライヴ】

巨大。

会場に入った瞬間、大きいとは聞いていたが、目の当たりにすると本当に大きくて驚嘆した。ローリング・ストーンズの60時間かけて作り上げるという巨大セットだ。正面モニターの両横にシンメトリーに5階建てのビルのようなものが立っている。二機の照明機がさらに中央に。そして、そのステージ中央から客席のほうに花道が伸びていて、座席ブロックでいうとDブロックまでをその花道が侵食している。

モニターとその横に照明で映し出される光景とさらに無数のライトによって、その建造物は、まるでステージというものではなく、「ローリング・ストーンズ」という名のひとつの街を形作っているかのようだ。我々は観客ではなく、街に訪れ、そこで演奏しているライヴバンドを街の一住民として感じ取るわけだ。照明は、青色ダイオードだろうか、本当に綺麗だ。これは、10年前のショウでは演出できなかった色ではなかろうか。このところあちこちでよく見かけるが。

まずショウが始まる前に驚いたのが、5階建ての壁に左右それぞれ100人程度の観客がいたこと。あれが、アメリカでの「ゴールデン・サークル」なのだろうか。

もっとも驚いたのが、中盤「ミス・ユー」のところ。メンバーがステージに乗って演奏したが、そのステージ自体が徐々に前に来て、花道を進み始めたのだ。たしか、以前横浜で見た時は、メンバーが花道を歩いて通称Bステージに移動していた。今回は、ステージごと移動だ。これは、スケールが大きく度肝を抜かれた。Bステージの最後の曲「ホンキー・トンク・ウィメン」が終わりに近づき、移動ステージがメインステージのほうに戻り始め、正面ステージに振り向くと、そこには大きなベロマークが姿を現していて、またまた驚いた。

それにしても、見所満載で目が休まる暇がない。ミック・ジャガーはステージの左から右端まで一気に走ったりして独特のくねくねポーズで観客を煽る。キースは、処かまわず、何も気にせずにギターを弾く。チャーリー・ワッツはまったくのマイペースでドラムを叩く。

それにしても、ここまでスケールの大きなステージには、本当に脱帽だ。これを見てて、僕はこのステージをマイケル・ジャクソンに見せたいと思った。マイケルがこれを見たら、おちおち子供相手に遊んでなんかいられない、ステージに立たなければ、と絶対に思うに違いない。このステージのスケール感はかつてのマイケル・ジャクソン、ジャクソンズのステージのスケール感をはるかにしのいでいる。マイケルが10年以上、音楽活動をやっていない間、他のアーティストのライヴスケールは着実に大きくなっているわけだ。

個人的にこの日、もっとも嬉しかったのは、「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」だった。モータウンのテンプテーションズの大ヒットのカヴァーである。もうひとつは、9曲目「ギミー・シェルター」で見せたバックコーラスのひとり、リサ・フィッシャーの熱唱だ。本当にすごい。リサはかつて自身のアルバムも出したことがあるが、彼女自身のライヴは見たことがない。ここでのリサの迫力ったらない。

60歳を超えてこの元気さだったら、体力的にはあと1−2回は楽勝で来日できるだろう。しかし、ここまでライヴの規模が大きくなってしまうと、金銭面で来日が厳しくなるかもしれない。ドーム2日で、高い席が55,000円、普通のS席で17,500円は、どう見ても高い。10年に一度なら払うかもしれないが、これが2年毎になると、満員にはならないだろう。世界一のロックバンドだから、入場料は世界一というのもわからなくはないが、まあ、限度というものもある。今回のギャラがいくらかは知らないが、おそらくそれと同金額なら、もう日本ではできないだろう。今後はステージ規模を小さくしてショウをするしかないかもしれない。そうなると今回の来日が最大規模のものとして最後か。

Setlist: 03/24/2006 at Tokyo Dome

show started 20:13
01 Start Me Up
02 It’s Only Rock ’N Roll
03 Oh No, Not You Again
04 Bitch
05 Tumbling Dice
06 Worried About You
07 Ain’t Too Proud To Beg
08 Midnight Rambler
09 Gimme Shelter
10 This Place Is Empty (Keith)
11 Happy (Keith)
12 Miss You (Moving to B stage)
13 Rough Justice (B stage)
14 You Got Me Rocking (B stage)
15 Honky Tonk Women (B stage to Main Stage)
16 Sympathy For The Devil
17 Jumpin’ Jack Flash
18 Brown Sugar
Enc. You Can’t Always Get What You Want
Enc. (I Can’t Get No) Satisfaction
show ended 22:17

(2006年3月24日金曜、東京ドーム=ローリング・ストーンズ・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Rolling Stones
【パーカッションに彩られた夜】

打楽器。

「孤高のピアニスト」深町純第63回ピアノ・パーティー。この日は、いつになく、なぜか大勢のパーカッション奏者が遊びに来ていた。ゲストにゴスペルシンガーとして有名な亀淵由香さん。亀淵さんは、インターFMで番組をお持ちで、それを車などで何回か聴いたことがある。それ以前に、ゴスペル・クワイアーをお持ちだという話は何度も聞いていたので、それを聴けるというのは超ラッキーだった。

トークネタは、先日深町さんが行って来たオランダ、ロンドンなどのお土産話。オランダは、マリファナ、買春、尊厳死などが認められているというひじょうに特異な国だそうで、特にマリファナ話はおもしろかった。ロンドンでは、赤信号は、「気をつけて渡れ」だと聞いて、大変感心したそうだ。その他に、桜をテーマにした俳句ネタも。

第一部では、着メロが鳴り、それにあわせて1曲即興でやった。また、下記セットリストで3にあたる「2006年3月25日20時14分の作品」は、特に前半が実にメロディアスで素晴らしかった。何度も聴きたくなる作品だ。

第二部は、いきなり亀淵さんがピアノの前に登場し、日本の佳曲を歌った。「花」(春のうららの墨田川〜)〜「おぼろ月夜」〜「荒城の月」〜「さくら」をメドレーで、しかも、途中にアドリブを存分に交えながらの歌唱だった。特に「荒城の月」はなぜか妙に個人的に哀愁を感じている曲なので、ひじょうに嬉しかった。以前から一度深町ピアノでこれを聴いてみたいなと思っていただけに、ここで歌われたのはよかった。

亀淵さんは、「深町さんは、音楽が本当の意味でできる人なので一緒にやって楽しいです」という。「さくら」では、後半に会場にいたパーカッション奏者をひき入れて大セッション大会になっていった。歌、音楽への真摯な姿勢が観客に伝わってくる。「私はゴスペルを歌っています」というと「あなたはクリスチャンですか」と問いがでて「そうです」とのお答え。

深町さんも即興でピアノを弾くが、なんとこの亀淵さんも即興で歌を歌うという。そこで観客から御題をもらって、その言葉から1曲歌うことになった。観客からでた言葉は、「勇気」。しばし、考えながら、深町さんと二人で、即興演奏、即興歌唱を繰り広げた。これはすごいな。即興歌唱というのは、ラップの世界ではフリースタイルで、ビートにあわせて好きにラップを繰り広げるというのがよくあるが、メロディーをつけた歌ではあまりなじみがないので、新鮮だった。しかも、演奏とあわせてだから、なおさらそのシンクロ具合がおもしろかった。亀淵さんは、途中でドラムの成り立ちを軽く紹介しつつ、パーカッション奏者を呼び込んだ。ゴスペルあり、アフリカンあり、すごいのりになってしまった。

この日偶然にも集合していたパーカッション奏者は、セネガルからやってきたブバ・カー・ガイさん、先月もはるばる京都から来てジャンベを叩いていった山下正樹さん、セネガルやギニアに伝わるボロンというひじょうにユニークなパーカッションを叩いた中村達也さん、そして同じくジャンベの藤川清さんだ。これだけ、パーカッションの音が炸裂すると、さすがの深町ピアノも押され気味になる。深町さん、一体どこで終わればいいのかさかんに中村さんの方を見るが、中村さんは、叩くことに熱中していて終わろうという気配がない。このあたりがライヴの醍醐味。

それにしても、この日はまさにパーカッション・ジャックという感になった。その熱さのせいか、珍しく深町さん、アンコールまでやってしまった。なにが、素晴らしかったかというと、第二部の音楽比率は、史上最高の92.7パーセントを記録。これは盛り上がる。おつかれさま〜。

Setlist

1st Set

show started 19:39
01. 2006年3月25日19時39分の作品 (13.38)
02. 2006年3月25日19時57分の作品 (携帯着メロから)(1.05)
03. 2006年3月25日20時14分の作品 (12.28)
04. 2006年3月25日御題拝借作品1. (2.00)
05. 2006年3月25日御題拝借作品2. (1.58)
06. 2006年3月25日御題拝借作品3. (1.38)
07. 2006年3月25日御題拝借作品4. (1.51)
show ended 20:47
(approximately performing time: 34.38 of 68 minutes show)(.509)

2nd Set

show started 21.13
01. メドレー:花〜おぼろ月夜〜荒城の月〜さくらさくら(亀淵由香さんとともに。「さくらさくら」からパーカッション奏者も)(16.13)
02. 勇気(亀淵さんの即興+パーカッション奏者も)(6.06)
03. 2006年3月25日21時44分の作品 (中村さんを迎えて)(7.09)
04. 2006年3月25日21時52分の作品 (13.37)
Enc. 2006年3月25日22時08分の作品(6.25)
show ended 22.14
(approximately performing time: 56.33 of 61 minutes show)(.927)

■ゲスト

亀淵由香
ブバ・カー・ガイ
山下正樹
中村達也
藤川清

■過去の音楽比率(ライヴ全体の中での音楽の割合を表します)(単位は%)

2005年11月 第一部 41.70 第二部 51.82
2005年12月 第一部 39.86 第二部 58.91
2006年01月 第一部 58.81 第二部 67.23
2006年02月 第一部 38.4  第二部 49.7
2006年03月 第一部 50.9  第二部 92.7

(2006年3月25日土曜、恵比寿アートカフェ=深町純ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun
2006-57
【新ライヴハウス、西麻布の「アヴェニュー」】

セッション。

昨年(2005年)11月に西麻布に小さなライヴハウスがオープンした。「アヴェニュー」という店だ。約40席で、毎日ライヴをいれている。早めの時間帯、夜7時から10時くらいまで約30分程度のステージを3回。日本人ミュージシャンをブッキング。そして、木曜金曜土曜の3日間はそのディナータイム・ライヴのほかに、深夜に4ステージほど、この店のハウス・バンド、アヴェニュー・バンドが演奏している。アヴェニュー・バンドは全員アメリカのブラザーでいわゆるR&Bバンド。

社長の櫻井さんによると、「ピックフォードがなくなって、ライヴが聴ける店がなくなってしまったので、そういう店をやりたかった」ということで、始めた。ソウルメイト、Mブラザースから誘いを受け、そのアヴェニューに初めて行った。これはなかなかの店だ。

この日は「ソウルフード・ディナー」というイヴェントで、ハウス・バンドの演奏にソウル・フードがついた。

ハウス・バンドは日本在住のブラザーたちが中心になっている。バンマス的な存在は、キーボードのミスターT。どこかで見た覚えがあったが、なんとケイリブのクロコダイルのライヴで弾いていた。なにしろお相撲さんのような巨体から、ものすごくグルーヴ感のあるキーボードを弾くので印象に残っていた。そして、ベースのキースもこの店の主。社長は、彼の奥さんだという。

バンドは、かなりタイトでファンキー。リアル・ミュージックのソウルを演奏してくれる。この日は、演奏か歌えば、ミュージシャンはチャージ(4000円)が半額になるということで、多くのミュージシャンが来ていたようで、何人かが飛び入りで歌った。(この日はイヴェントなので4000円だったが、通常は1000円から2000円、週末だけ3000円。詳細はお店のホームページをご覧ください) 何人か見たことがあったり、面識があるシンガーたちがいた。

シャウナは以前、日野賢二さんのライヴを見に行った時だったか見かけ、その後マルのライヴか軽音部かなにかで名刺を交換した。どんな歌を歌うのか興味あったが、この日はルーファス、シャカ・カーンを歌った。なかなかの迫力だ。ファーストでメアリー・J・ブライジ他を歌ったダニエルも前にどこかで会ったが、彼女の歌はめちゃくちゃ迫力があった。彼女のフルショウも見てみたい。

一番驚いた選曲は、セカンドでグレッグが歌ったアンソニー・ハミルトンの最新作に収録されている素晴らしいバラード「チェンジ・ユア・ワールド」。個人的にはアルバムの中で一番のお気に入りで、マーチンさんの番組でも紹介した曲。これを生で聴けるとは。感涙にむせぶ。

体格の大きなミスターTは、前日(土曜日)、朝までライヴをやり、昼までに店に出て、なんとこの日のソウル・フードを全部作ったという。シェフ・ミスターTだ。これまた、すごい。このソウル・フード、アメリカで食べるような味だった。その点で本格派。しかも量が多く、これだけ食べるとミスターTのように大きくなるのか、ということを思った。よって、僕は食べきれず。(笑)

父。

ファーストとセカンドの間に彼とは雑談しているうちに、父がミュージシャンだったという話がでた。モータウンのアーティストのバックで演奏していた、という。で、名前はと聞くと、なんと、アール・ヴァン・ダイクとの答え。たまげた〜〜!! 4月にファンク・ブラザースがやってくるが、ダイクはその要でもあった人物。もちろん、映画『永遠のモータウン』にもでてくる。残念ながら10年近く前に亡くなっているので、来日はできないが、ダイクの息子が東京でミュージシャンをやっているなんて。今日1番の発見であった。それを知ってから彼の演奏を聞くと、気持ち、モータウンの香りがしてきたような気もした。(笑) 

そして、最後に「誰かラップをやるのはいないかな」というMCの声で、R.O.D(ロッド)という一見日本人風の若者が、トラックをアイポッドから出してラップを始めた。2パックの曲だったが、これがネイティヴでめちゃうまかった。彼とは、終わった後、少し話をしたので、その模様はまた後日にでも。

それにしても、こういうオープンマイク・スタイルでミュージシャンがどんどん集まって、好きにジャムセッションを繰り広げられる環境はなかなか素晴らしい。しかも、それがソウル、R&B系なところが嬉しい。ということで、ここはこれからもちょくちょく顔を出すことになりそうだ。ただし、ディナー・タイムの日本人アーティストは、ジャンルにとらわれずに出演者を決めていくという。

こういう「セッション」、いい感じだ。

Setlist ( ) = today’s singer’s name, [ ]=original

show started 20:42
01. Superstition (Greg Wesley) [Stevie Wonder]
02. Between The Sheets (Greg Wesley) [Isley Brothers]
03. This Masquerade (Greg Wilson) [George Benson]
04. Just Once (Greg Wilson) [Quincy Jones, James Ingram]
05. Down Home Blues (Greg Wilson)
06. Blues Is Alright (Danielle)
07. No More Drama (Danielle) [Mary J Blige]
show ended 21:24

2nd set
show started 22:27
01. What’s Going On (David King) [Marvin Gaye]
02. Sex Machine (David King) [James Brown]
03. I Feel Good (David King) [James Brown]
04. Wildflower/Unpredictable (David King) [Skylark, New Birth, Jamie Foxx]
05. Ain’t Nobody (Shauna Phillips) [Rufus/Chaka Kahn]
06. Pop Life (Greg Wesley) [Prince]
07. Change Your World (Greg Wesley) [Anthony Hamilton]
08. Thugz Mansion (R.O.D) [2Pac ftg. Anthony Hamilton]
show ended 23:10

Avenue Band

Mr. T. (keyboard)
Keith Williamson (Bass)
Dee Wright (Guitar)
JR (Drums)
Greg Wilson (Vocal)

With guests

Greg Wesley (Vocal)
Dannielle (Vocal)
David King (Vocal)
Shauna Phillips (Vocal)

■アヴェニューのホームページ
http://avenue2005.com/index.htm

(2006年3月26日日曜、西麻布アヴェニュー=アヴェニュー・バンド・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Avenue Band
2006-58
【木下航志・アコースティック・ライヴ】

アコースティック。

木下航志くんが、3月27日(月曜)、銀座の山野楽器のイヴェントホール、ジャムスポットでミニ・アコースティック・ライヴを行った。この日は、アコースティックのグランドピアノでの弾き語り。

「地方では予算の関係でひとりでやることはあるんですが、(笑) 東京でこうして僕のピアノだけのソロ演奏は、とてもプレミアムな感じですよ〜〜(笑)」とこのところMCが絶好調の航志くん。1曲ごとに解説とコネタを仕込み話す。16歳とは思えないほどの「おじさん」ぶりに、会場は爆笑と苦笑の連続だ。えなり君も超越してるんじゃないだろうか。(笑)

なんと、オープニング「アメージング・グレイス」が終わったあとのMCで、航志君が4月1日の「ソウル・サーチン・トーキング」の告知をおもしろおかしくやってくれた。「毎回、ひとりのアーティストにスポットを当てて、紹介するものなんですが、なんと、今回はマーヴィン・ゲイ。マーヴィン・ゲイという人は、おとうさんといろいろあって、おとうさんの銃弾に倒れてしまうんです。僕にはお母さんがいて一緒に住んでるんですが、お母さんに撃たれたことはありません。(爆笑) でも、怒られたことは、この16年の人生で・・・100回以上は楽にあると思います・・・。(笑) 僕もその練習をしたりして、出ますので、興味あるかたはぜひどうぞ」

「先日、とあるアーティストのライヴに行ってきたんですが、話たいんですが、情報解禁が28日ということで、やっぱり、話すのやめた」 (会場からえ〜〜という声) しばしあって〜。「やっぱり話そう。実はゴスペラーズの黒沢さんのコンサートに行ってきたんですが、歌がうまいですねえ。それからバックコーラスにソイソウルというソウルのバンドのズーコさんという人がいて、この人もまたうまい。僕のバンドに引き入れようかと思ったんですが、ギャラでおりあいがつかないかもしれません。(笑)」

しかし、このトークの「間(ま)」、独特のものがあっておもしろい。

歌のほうは、以前の滑舌(かつぜつ)の問題が、かなりクリアになった感じがした。また歌声は相変わらず強い。そしてやはり、アコースティックのピアノは、いい。45分の予定が、おしゃべりがけっこうあったので、60分を超えた。その後、握手会をした。観客の年齢層なども10代から5−60代まで実に幅広い。

■木下航志くん、関連記事

February 03, 2006
Kishita Kohshi New Album Release Live
(ここに木下君関連の過去記事一覧があります)
http://blog.soulsearchin.com/archives/000808.html

setlist

show started 18:31
01. Amazing Grace
02. 響け僕の歌
03. 赤とんぼ
04. People Get Ready
05. 僕 一人ぼっちになってしまうよ
06. 太陽の道、風の道
07. 通り雨
08. 絆
09. 竹田の子守唄
show ended 19:31

(2006年3月27日月曜、山野楽器7階ジャムスポット=木下航志ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Kishita Kohshi
2006-59
【リアル・ブラッド・ライヴ〜笑いと喜びと悲しみと感動】

説教。

5曲目「シルクの雨」は、ファルセットのシルキー藤野さんが、これでもかというほどのファルセット(裏声)を聞かせる。この途中の部分はシルキーさんの自由時間。そっと歌おうが、絶叫しようが、どれだけやっててもいい。ミュージシャンは、シルキーさんの歌についていくだけだ。

それにしても、強く、そして美しいファルセット。いつ聴いても、すごいなあ。この日は特に神でも乗り移ってきたかのようなパフォーマンスを繰り広げた。横に座るブラザートムさんも、ルーサーさんも、シルキーさんを煽る煽る。一曲を終えて、シルキーさんへ万雷の拍手が響いた。

3人になったリアル・ブラッドとしての久々のライヴ。黒地に赤字のReal Blood の文字が躍るTシャツをきたバックミュージシャンは5人。リアルの3人はジーンズに、おしゃれなストライプのジャケットといういでたちで登場した。トムさんは途中で言った。「今年は、ライヴをたくさんやっていこうと思います」 (拍手) 「2本くらいね」(爆笑) 

笑わせ、うならせ、感動させ、そして、時にしんみりとさせ、「その空間にいる貴方たちと私たちだけが幸せになれる」、そんなひと時を彼らは演出する。

トムさんの話はいつも、どこでも、おもしろい。最高だったのは、トムさんが前日息子たちと飲みに行ったときのはなし。「昨日、息子たちと飲みに行ったんですよ。最初自由が丘で焼き鳥食べて、それから居酒屋行って、ビリヤード行ったら休みだったんで、どこ行こうか、って。結局三宿のゼストに行きました。そこで、しこたま飲んで、思いっきり酔いつぶれました。(笑) 子供たちをタクシーに乗せて、送ってから、吐きました。(爆笑) 〜中略〜 親は子供たちを愛してるんです。親は子供たちが幸せになって欲しいと願ってる。自分の子供が不幸になって欲しいなんて願っている親はひとりもいない。もし、あなたが今不幸に感じているのなら、それは親のせいではない。あなたのせいだ!」

どこか宗教がかった教祖様みたいな見事なゴスペルチックな説教であった。まさに、説教にソウルが込められていた。ではこれを「ブラザー・トムの説教ソウル」と名づけよう。そして歌われた曲は、「ブラインド・ラヴ」。宗教っぽかったと言えば、「貴方たちのお金を全部、(リアル・ブラッドに)つぎ込んでいただいてもいい。(笑)」 といったあたりもおもしろかった。

しかし、この「今、自分が不幸だと思うなら、それはあなた自身が間違っているからだ」という言葉は、強烈に素晴らしい。

ところで、今日、この3人組ヴォーカル・グループを見ていて、思ったことがある。それは彼らに少しばかりモーメンツ、レイ・グッドマン&ブラウン的なイメージを持ったのだ。ファルセットのシルキーさん(ハリー・レイ)、中域のトムさん(アル・グッドマン)、そして低音のルーサーさん(ビリー・ブラウン)という役割。レイたちのアルバムに椅子に座ってるジャケットのものがあったが、リアルの3人がステージで少し高めのスツールに座って歌っているのを見てイメージがダブったのかもしれない。

レイ・グッドマンたちも、高音から低音、そしてリードとこの3種類の声が実に巧みにブレンドされ、見事なハーモニーを作る。リアル・ブラッドのものにも、そのような作品があるので、彼らの方向性としてひとつの指針になるのではないかと思った。

Setlist

show started 20:11
01. No Problem
02. Real Things
03. 恋は上々
04. Eye Zeen
05. Silkの雨
06. Blind Love
07. For The Blues Alley
08. What’s Your Name
09. Shining Girl
Enc. Thank U
show ended 21:53

■メンバー

(Vo)ブラザートム、SILKY藤野、LUTHER No.1市村 (G)GUTTI谷口
(EP)Sassy Tomo (B)大友正明 (Key)貝原正 (Ds)浜崎大地

■Real Blood 関連過去記事

2003/09/11 (Thu)
Lowest Budget, Highest Quality: Real Blood Would Take You Back To The 70s
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030911.html

2003/10/28 (Tue)
Real Blood: Real Live By Real Musician
http://www.soulsearchin.com//entertainment/music/live/diary20031028.html

2003/11/12 (Wed)
Welcome To Number One!
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200311/diary20031112.html

2003/12/24 (Wed)
Live & Direct For "Soul Music Special"
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200312/diary20031224.html

03/12/22 (Mon)
Ohio Players’ "Happy Holidays" Proves One Nation Under A Groove
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200312/diary20031222.html

2004/10/03 (Sun)
My Mother Loved It, I Loved It And My Son Loved It: The Song Have Been Loved By Three Generations
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200410/diary20041003.html

2005/01/30 (Sun)
A Passion For A Record Turns To A Passion For Music
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200501/diary20050130.html

2005/02/02 (Wed)
Brother Tom’s Two Minutes: He Talked About When He First Heard Ray Charles
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200502/diary20050202.html

2005/02/22 (Tue)
Live At Club Heights (Part 1)
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200502/diary20050222.html

2005/02/23 (Wed)
Live At Club Heights (Part 2): The Back To The 70s Disco
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200502/diary20050223.html

April 30, 2005
"Live The Soul Music" On NHK-FM
http://blog.soulsearchin.com/archives/000229.html

December 25, 2005
"Soul Music Live Vol.5"(Part 2)
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_12_25.html

January 23, 2006
Luther Number 1 Ichimura: The Way He Was...
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_01_23.html

February 06, 2006
Jay & Silky Live At Blues Alley: The Night Of Ecstasies
http://blog.soulsearchin.com/archives/000816.html

February 20, 2006
Washington’s Own "Go Go Sound" Still Alive & Kicking
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_02_20.html

March 02, 2006
Brother Tom’s Two Minutes Became Impressive Two Hours
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_03_02.html

(2006年3月23日火曜、目黒ブルースアレー=リアル・ブラッド・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Real Blood
2006-60
【驚異の新人ジャズ・ピアニスト、オースティン・ペラルタ】

射抜き。

本当は今週土曜の『ソウル・サーチン』の準備でかなりおおわらわなのだが、新人ジャズピアニスト、オースティン・ペラルタのライヴに強力に誘われていたので、さくっと行くことにした。実は紙資料も、CDも届いていたのだが、ぜんぜん手付かず、予備知識なしでライヴに参戦。

入口に入ると、ちょうど音が始まりだした。ジャズのピアノトリオだ。最初後ろの席に案内されたが、前もあいていたので、前に移してもらった。すると、彼らトリオの音がよく聴こえてきた。なんかすごく若そうな子がピアノを弾いている。そうだ、15歳とかいう触れ込みだった。

演奏は、15歳なんて思えない、20代半ばには思えた。もうプロというか、演奏マナーも堂々としたものだった。いかついベース君は、かなりアグレシヴだ。そして、ドラマーもなかなかのイケメン。

演奏は時に攻撃的で、しかし、クール。時折マッコイ・タイナーばりの爆発を見せる。マッコイの要素、ハービーの要素が存分に出てくる。

終わった後、ちょっとだけ話をする機会があった。オースティンは1990年10月25日生まれ。現在15歳。平成2年生まれだ。おおおっ。オースティンの好きなピアニストは多数いるが、ハービー・ハンコック、マッコイ・タイナーだという。どちらとも会って話をしたことがある、という。そしてこう付け加えた。「ハービーには自分のアルバムで『セカンド・キーボード』として、ゲストででてもらいたいと思ってるんだ」 

そのセリフを聞いてぶっとんだ。セカンド・ピアノ(2番目のピアノ=もちろん、主役は自分)というところがすごい。大御所、ハービーを使ってしまうのだ。ハービーにはアコースティックではなく、ローズを弾いてもらいたい、という。はっきりしている。ハービーのアルバムで好きなものはと尋ねると初期のものとの答え。『ヘッドハンターズ』あたりは、と問うと「あんまり好きじゃない」。はっきりしている。

ベースのティグラン・ナーシスシアンは、1984年7月19日生まれ。21歳。好きなベースはレイ・ブラウン、チャーリー・ミンガス。そして、ドラムスのジェイク・ブロッシュは1989年6月3日生まれ。平成元年生まれ、16歳。みんななんという若さだ。ドラムとピアノは高校生じゃないか。

下手をすると、きれいな男の子というヴィジュアルで、ルックスから売れてしまう可能性もあるが、それ以上にしっかりとしたひとりのリアル・ミュージシャンであるところが素晴らしい。最近の若い者は、航志くんといい、このオースティンといい、すごいね。(笑) やはりこれは「天才」と呼んでいいのだろう。ここでの3人は皆地元が一緒で、ジャズフェスのようなもので知り合ったという。

アルバムのプロデューサーの伊藤八十八(いとう・やそはち)さんがいらしたので一言尋ねた。デモテープを聴いた時は14歳だったわけだが、もし、その音が25歳だったら、やはり契約しましたか。「しましたね。音が何しろすごかったですから。で、14歳と聞いて、もっと驚いて。確かに14歳だからという部分もなくはありませんが、実際は年齢は関係ないですよ」 

彼の元から出るレーザー光線のような白い光りが一直線に僕を射抜いた。おそらく、そのレーザー光線は会場中のオーディエンスを突き刺したことだろう。

(ライヴはまだあります。4月1日青山ボディー&ソウル、3日新宿ダグ、4日舞浜イクスピアリ、5日六本木アルフィー。興味ある方は、各店舗へお尋ねください)

Setlist  ( )内はオリジナルアーティスト名。

show started 19:33
01. Straight Up And Down (Chick Corea)
02. Maiden Voyage (Herbie Hancock)
03. Spain (Chick Corea)
04. Passion Dance (McCoy Tyner)
05. Shadow Of Your Smile (standard)
06. Green Dolphin Street (standard)
Enc. Passage (Austin Peralta’s original)
show ended 20:30

■メンバー
Austin Peralta(p)Tigran Nersissian(b)Jake Bloch(ds)

■デビューアルバム

『オースティン・ペラルタ/処女航海』(ヴィレッジVRCL 18831)

(2006年3月29日水曜、渋谷ジェイジー・ブラット=JZブラット=オースティン・ペラルタ・トリオ・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Peralta, Austin
2006-61
【フィリップ、ハンク、グリニス・トリオ・ライヴ】

ハシゴ。

渋谷JZから四谷メビウスへ移動。フィリップ、ハンク、そしてグリニスという強力トリオのライヴがあるというので、これは聞き逃せない。彼らのライヴは以前も見ている。(下記アドレス) 誰でも知っているようなソウルヒットをその場で歌ってくれるから、単純に好きな音楽を楽しみたいという時にもってこいだ。

この3人なら、そこそこのヒット曲なら歌ってくれる。人間ジュークボックスだ。グリニスは歌詞カードが入った分厚いブックを持っていて、そこから選ぶ。ただ、ピアノの楽譜がないとできないこともある。ハンコ屋さん(ギター)は、コードさえ見れば、あとは曲を知ってるので、対応する。

何かルーサーの曲はできるかと尋ねたら、グリニスは何曲か歌えるが、フィリップが「スーパースター」なら出来るという返事で、歌ってもらった。「ネヴァー・トゥ・マッチ」は、フィリップはゴスペラーズの村上てつやソロライヴで演奏していたが、ベースがいないトリオでやる場合、ピアノでベース部分をやらないとならないため、練習しないと出来ないという。なるほど。

そして、グリニスが「リーン・オン・ミー」を歌っている時に、ふと、この曲は木下航志君に向いているなと思った。

ビル・ウィザースについての記事
2005/02/19 (Sat)
America’s Good Old Conscience: Soul Of Bill Withers
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200502/diary20050219.html

「リーン・オン・ミー」の訳詞
2005/02/27 (Sun)
"The Great Song Story":
http://www.soulsearchin.com//soul-diary/archive/200502/diary20050227.html

それにしても、グリニスはスティーヴィーを歌うとスティーヴィーになり、ダニーを歌うとダニー・ハザウェイになる。芸達者だ。そして、2セット聞き終えて、打ち合わせも兼ねてケイリブに会いに代官山へ移動。ライヴ3軒ハシゴだ。グリニスも行くと言うので、一緒にケイリブのいるゼクスへ向かった。

■ フィリップ、ハンク、グリニス過去記事

2004/02/09 (Mon)
Philip Woo & Hank Nishiyama Live At Motion Blue
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200402/diary20040209-1.html

2004/11/19 (Fri)
Night I Saw Donny Hathaway At Yotsuya
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200411/diary20041119.html

四谷メビウス・mobius
http://www.mebius-yotsuya.jp/index.html

■メンバー 
グリニス・マーチン(Vo)
http://jpentertainment.jp
西山史翁はんこ屋(G)
http://www2.ttcn.ne.jp/~hankoya/
フィリップ・ウー(Pf)

Setlist

show started 21:37
01. Someday We’ll All Be Free
02. Overjoyed
03. Lean On Me
04. Golden Lady
05. A Song For You
show ended 22:12

3rd set
show started 22:52
01. Little Ghetto Boy
02. Calling You
03. Knocks Me Off My Feet
04. Don’t You Worry ’Bout A Thing
05. Superstar
show ended 23:27

(2006年3月29日水曜、フィリップ・ウー、西山ハンコ屋史翁=ふみお、グリニス・マーティン・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Woo, Philip / Nishiyama Hankoya Fumio / Martin, Glynis
2006-62

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