スピーチ。

18日にロスアンジェルスで行われたレイ・チャールズの葬儀の模様は大きな感動を巻き起こした。この模様の一部は、次のウェッブで映像とともに見ることができる。

http://cf.nbc4.tv/la/sh/videoplayer/video.cfm?id=3435441&;owner=la

ここでは、スティーヴィーのスピーチ、そして、彼が歌ったゴスペル曲「アイ・ウォント・コンプレイン(私は文句を言わない)」、ウィリー・ネルソンのスピーチと「ジョージア・オン・マイ・マインド」、BBキングの何度も目をぬぐいながらのスピーチと「プリーズ・アクセプト・マイ・ラヴ」の様子が映し出される。

ぼくはまだ2時間にわたる全編を見たのではないが、この3つのシーンを見るだけで胸が熱くなる。それも英語がすべて理解できるわけでもないのに。そのスピーチのテキストを探したが、見つからなかった。そこでスティーヴィーの部分だけヒアリングでとって試しに訳してみる。完璧ではないが、だいたいこういった感じだろう。もしまちがいなどがありましたら、お知らせください。

レイチャールズの息子さんがかつては「リトル・スティーヴィー」だったが、今は「ミスター・スティーヴィー・ワンダー」となった彼を紹介する。そして、スティーヴィーが登場。バックにおごそかなオルガンの音が流れる。彼はゆっくりと言葉を選びながら話し始めた。

「この言葉を神に捧げたいと思います。神はレイチャールズという天才を私たちのもとに送り届けてくれました。私は、まさか、自分の人生においてレイ・チャールズに会うことができるなんて夢にも思いませんでした。しかし、神はそれ以上のことを与えてくれました。私は、まさか、自分がレイ・チャールズが歌うことになる曲を作るなどとは夢にも思いませんでした。しかし、神はそれ以上のことをしてくれました。私は、まさか、こんな胸一杯の気持ちで私たちがこうして参列するこの場に立つことなど想像できませんでした。神はいつでも私たちに想像以上のものを与えるものです。

私は、この場を借りて、私自身のレイ・チャールズとの想い出を振り返ってみたいと思います。私たち(レイとスティーヴィー)に多くの共通点があることを知るはるか以前から、私は彼という人物は私の心に感動を与えてくれる声の持ち主だと思っていました。彼の声を聴いていると、自分ももっともっと世界に愛の手を差し伸べなければならないと思わせられるのです。また、彼の声を聴いていると、自分は決して行くことができないような所にさえ行けるような気になってきます。

子供の頃から、私は私の声を通して、いつの日にか(レイのように)世界の痛みを和らげ、(人々を)苦しみから救うことができるようになれればと思っていました。私は彼が盲目であることを知りませんでした。『君は、レイ・チャールズの(曲を集めた)アルバムを作るべきだ』と言われ、僕は『なぜ』と聞きました。すると『彼が盲目だから』と言われました。私が知っていたのは、ただ彼が『すばらしい(人物、歌手)』ということだけでした。(拍手)

天才、ソウルの王様、レイが肉体的に亡くなったことと同じくらいに私の心が痛むのは、レイをしても彼は憎しみを(この世界から)なくし、正義を行うことはできなかったということです。また、選挙権がない人々がいまだいる時代の終焉を彼が見届けることができなかったことも心残りです。

私はレイ・チャールズのこの魂(スピリット)が、レイから直接常に愛された人々だけでなく、この国や世界の人々に対して、そうしたことを変革するようにと願ってやみません。

愛しています、レイ! 私が死ぬまで」

そして、「アイ・ウォント・コンプレイン」へ、突入した。

スティーヴィーが熱唱した「アイ・ウォント・コンプレイン」という曲は初めて聴いた。伝統的なゴスペル曲だという。その内容をご紹介しよう。歌詞は若干、スティーヴィーのヴァージョンと違う。スティーヴィーは前半部分を歌った。

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「アイ・ウォント・コンプレイン」

いい時もあった。
苦しい時もあった。
涙にくれた時もあった。
眠れぬ夜もあった。

だが終ってみて振り返れば、
良かった時の思い出が、
苦しかった時の思い出を凌駕する。
だから、私は不平不満など言わない。

時には雲が低くたちこめ、
進むべき道がわからないこともある。
そこで神に尋ねる。
「なぜ、こんなに苦しまねばならないのですか?」
だが神はそれが私にとっての最高の試練だという
ことを知っている。
涙にあふれた目からはわからないが、
私は神にありがとうと言う。
私は、不平不満は言わない。

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スピーチと歌は約8分半続いた。

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