Munch Exhibition At Ueno
2007年12月16日
【上野の森でムンク展〜ムンチと書いてムンク】
前衛。
この前、フェルメール展を見たかと思ったら、今度はムンク展だ。例のフィラデルフィア美術館展を二度ほど見てから、すっかり美術づいているソウル・サーチャーとその仲間たち。「ソウル・サーチン美術部・第3回」は上野の西洋美術館でやっている「ムンク展」。いつも通りソウル・サーチャー岡伸昭先生のお話を聞きながら、各作品を見て回るというもの。第1回はフィラデルフィア美術館展、第2回はフェルメールの「牛乳を注ぐ女」ほか、そして第3回は初の一人のアーティストにスポットをあててじっくり見るムンク展だ。
生徒8人、先生1人で冬にしてはちょっと暖かい上野の森午後2時。岡先生、前回の予告から「あんまりしゃべること、ないんですけどねえ」とか「いやあ、どうしてムンクがこんなに日本で人気があるのかわからないんですよねえ」と比較的ネガ系(ネガティヴ系)コメントをくちずさむ西洋美術館。前回かなり歩き疲れたM氏、この日は満を持して「万歩計」持参!
ムンチ(Munch)と書いてムンク。ムンクは本名エドヴァルド・ムンク、1863年12月12日ノルウェイ生まれ、1944年1月23日80歳で死去。一番有名なのは「叫び」という作品だ。
岡先生曰く。「彼の最大の特徴は『フリーズ(Frieze)』という手法です。絵画だけでなく、その部屋の例えば、柱、背より高い2メートルくらいの高さのところに帯状に作品を作ったりして、全体で装飾的に作品を作るというやり方です」 フリーズ(Freeze)というので、「止まれ」とか、「動くな」「凍る」っていう意味かと思ったら、スペルが違った。へえ。ムンクのアトリエも上部の方にも絵が飾られて、部屋全体が装飾的になっている。
先生が月とそれが水面に映る描き方がいつも同じだということを説明する。そのときに、実際の絵のその部分を指差した。するとすかさず、係りの人がやってきて、「あまり近づかないようにお願いします」。イエローカード1。
岡先生曰く。「大体、暗いんですよね。ちょうど、ムンクというのは、1960年代後半に起こったフラワー・ムーヴメントなどの動きと近いものがあるかもしれません。管理社会へのアンチテーゼ的なものです」 へえ。ということは、メインストリームに対してのオルタナティヴ的な人なんですね。
岡先生曰く。「(美術の都、中心地)パリにはほんの少ししかいませんでした。あとは(出身地の)ノルウェイにいます。それから彼はいつも不倫して、アルコール依存症で…」 ノルウェイ、反体制、不倫で女好き、アルコール依存症。ということは、マーヴィン・ゲイ? 「いやあ、ちょっと違いますね」 あるいはオルタナティヴっていうことで、プリンス? 横から「吉岡さん、なんでも昔の画家をプリンスとかマーヴィンでたとえようとするのやめてくださいよ(苦笑)。毎回、同じなんだから。今日は、みんな吉岡さんが言うことにからみますよ。全部、落穂拾いしてきますから(笑)」とM氏。「しいていえば、パンクってことで、セックス・ピストルズですかねえ。前衛も前衛です」と岡先生。ひとしきり解説も熱が入ってきたところで、一般のお客さんから「ちょっと静かにしていただけますか」。イエローカード2。
岡先生曰く。「ムンクは、彼女のほかにいつも何人かの女性の影がありました。そうしたものが、彼の作品にも登場しています。『嫉妬』という作品などそれを象徴した作品かもしれません。それから、たとえば、ムンクは何人も人魚の絵を描いていますが、彼が描く人魚は絶対に処女ではない、と言えますよ」へえ。な〜るほど。
岡先生曰く。「ゴーギャンは、(物を)見なくても描けますよ、という立場で、一方、ゴッホは見ないと描けませんという風に対立してたんですね。で、ムンクはゴーギャンの影響を受けてました。扱っている題材を象徴的に見せようということになっていきました。例えば、テーマが不安とか愛とか死と言った暗いものになっていったんですね」
「先生、これは絵は上手なんですか」 「いやあ、上手とは言えないでしょうねえ。特に技術的には」 「じゃあ、ヘタウマ?」 「そうかもしれませんね」
ムンチと書いてムンク。いやあ、しかし、こんな講釈をいれながら、何人かで絵を「あーだこーだ」言いながら見るのは楽しいなあ。やはり、絵画もそれを描いた人のバイオグラフィーなどを徹底して知ってから見るとおもしろい。それはミュージシャンと音楽も同じだ。これ、きっとおもしろい1時間番組にできるんじゃないかな。しかも、これまでの美術愛好家からは酷評されるかもしれないようなかなり破天荒な美術番組だ。
次回はここにフライヤーがあったウルビーノの『ヴィーナス』。2008年3月4日から5月18日まで西洋美術館で開催される同展を解説してくれるそうだ。
3時間弱、M氏の万歩計は1200歩くらいしか進んでいなかった。3時間普通に歩き続けたら12キロ1万歩にはなるはずだが。「結局、歩いてないんだよなあ…」とM氏、その数字に愕然と絶望。岡先生も、しゃべるネタないと言いつつ、3時間しゃべり続けた。万歩計はほとんど回らなかったが、岡さんの口はなめらかに、回り続けていた。おつかれさま〜〜。
■オフィシャル・ウェッブ
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/munch/
ムンク展2007年10月6日から2008年1月6日まで
上野・国立西洋美術館
ENT>ART>EXIHIBITION>Munch, Edvard
前衛。
この前、フェルメール展を見たかと思ったら、今度はムンク展だ。例のフィラデルフィア美術館展を二度ほど見てから、すっかり美術づいているソウル・サーチャーとその仲間たち。「ソウル・サーチン美術部・第3回」は上野の西洋美術館でやっている「ムンク展」。いつも通りソウル・サーチャー岡伸昭先生のお話を聞きながら、各作品を見て回るというもの。第1回はフィラデルフィア美術館展、第2回はフェルメールの「牛乳を注ぐ女」ほか、そして第3回は初の一人のアーティストにスポットをあててじっくり見るムンク展だ。
生徒8人、先生1人で冬にしてはちょっと暖かい上野の森午後2時。岡先生、前回の予告から「あんまりしゃべること、ないんですけどねえ」とか「いやあ、どうしてムンクがこんなに日本で人気があるのかわからないんですよねえ」と比較的ネガ系(ネガティヴ系)コメントをくちずさむ西洋美術館。前回かなり歩き疲れたM氏、この日は満を持して「万歩計」持参!
ムンチ(Munch)と書いてムンク。ムンクは本名エドヴァルド・ムンク、1863年12月12日ノルウェイ生まれ、1944年1月23日80歳で死去。一番有名なのは「叫び」という作品だ。
岡先生曰く。「彼の最大の特徴は『フリーズ(Frieze)』という手法です。絵画だけでなく、その部屋の例えば、柱、背より高い2メートルくらいの高さのところに帯状に作品を作ったりして、全体で装飾的に作品を作るというやり方です」 フリーズ(Freeze)というので、「止まれ」とか、「動くな」「凍る」っていう意味かと思ったら、スペルが違った。へえ。ムンクのアトリエも上部の方にも絵が飾られて、部屋全体が装飾的になっている。
先生が月とそれが水面に映る描き方がいつも同じだということを説明する。そのときに、実際の絵のその部分を指差した。するとすかさず、係りの人がやってきて、「あまり近づかないようにお願いします」。イエローカード1。
岡先生曰く。「大体、暗いんですよね。ちょうど、ムンクというのは、1960年代後半に起こったフラワー・ムーヴメントなどの動きと近いものがあるかもしれません。管理社会へのアンチテーゼ的なものです」 へえ。ということは、メインストリームに対してのオルタナティヴ的な人なんですね。
岡先生曰く。「(美術の都、中心地)パリにはほんの少ししかいませんでした。あとは(出身地の)ノルウェイにいます。それから彼はいつも不倫して、アルコール依存症で…」 ノルウェイ、反体制、不倫で女好き、アルコール依存症。ということは、マーヴィン・ゲイ? 「いやあ、ちょっと違いますね」 あるいはオルタナティヴっていうことで、プリンス? 横から「吉岡さん、なんでも昔の画家をプリンスとかマーヴィンでたとえようとするのやめてくださいよ(苦笑)。毎回、同じなんだから。今日は、みんな吉岡さんが言うことにからみますよ。全部、落穂拾いしてきますから(笑)」とM氏。「しいていえば、パンクってことで、セックス・ピストルズですかねえ。前衛も前衛です」と岡先生。ひとしきり解説も熱が入ってきたところで、一般のお客さんから「ちょっと静かにしていただけますか」。イエローカード2。
岡先生曰く。「ムンクは、彼女のほかにいつも何人かの女性の影がありました。そうしたものが、彼の作品にも登場しています。『嫉妬』という作品などそれを象徴した作品かもしれません。それから、たとえば、ムンクは何人も人魚の絵を描いていますが、彼が描く人魚は絶対に処女ではない、と言えますよ」へえ。な〜るほど。
岡先生曰く。「ゴーギャンは、(物を)見なくても描けますよ、という立場で、一方、ゴッホは見ないと描けませんという風に対立してたんですね。で、ムンクはゴーギャンの影響を受けてました。扱っている題材を象徴的に見せようということになっていきました。例えば、テーマが不安とか愛とか死と言った暗いものになっていったんですね」
「先生、これは絵は上手なんですか」 「いやあ、上手とは言えないでしょうねえ。特に技術的には」 「じゃあ、ヘタウマ?」 「そうかもしれませんね」
ムンチと書いてムンク。いやあ、しかし、こんな講釈をいれながら、何人かで絵を「あーだこーだ」言いながら見るのは楽しいなあ。やはり、絵画もそれを描いた人のバイオグラフィーなどを徹底して知ってから見るとおもしろい。それはミュージシャンと音楽も同じだ。これ、きっとおもしろい1時間番組にできるんじゃないかな。しかも、これまでの美術愛好家からは酷評されるかもしれないようなかなり破天荒な美術番組だ。
次回はここにフライヤーがあったウルビーノの『ヴィーナス』。2008年3月4日から5月18日まで西洋美術館で開催される同展を解説してくれるそうだ。
3時間弱、M氏の万歩計は1200歩くらいしか進んでいなかった。3時間普通に歩き続けたら12キロ1万歩にはなるはずだが。「結局、歩いてないんだよなあ…」とM氏、その数字に愕然と絶望。岡先生も、しゃべるネタないと言いつつ、3時間しゃべり続けた。万歩計はほとんど回らなかったが、岡さんの口はなめらかに、回り続けていた。おつかれさま〜〜。
■オフィシャル・ウェッブ
http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/munch/
ムンク展2007年10月6日から2008年1月6日まで
上野・国立西洋美術館
ENT>ART>EXIHIBITION>Munch, Edvard