【ソウル・サーチャーズ、アレサを語る】

思い出。

ファーストセットの途中で、ミュージシャン3人にもアレサについて一言、語ってもらった。

60年代風アフロ・ヘアーをしたブレンダ・ヴォーンのコメント。「私が子供だった夏休み、おばあちゃんのところによく行っていた。12−3人の親戚のおばやおじがいて、みんなシンガーなの。で、その彼らはアレサの歌を聴いて、みんな泣いてるのね。聴きながら、涙を拭いたりして。この時は、なぜ彼らが泣くのか(子供だったせいもあって)わからなかった。でも、私が大人になってからアレサのレコードを聴くようになって、それが理解できるようになった。アレサは、本当にすばらしい「ストーリーテラー(語り部)」なのよね。物語に感情を込め、ストーリーを語りかける。それは、本当にすばらしい部分だわ」 

フィリップ・ウーのコメント。「僕がアレサを初めて聴いたのは7歳の時だった。『リスペクト』が最初の曲だった。アレサの音楽や歌は僕の人生のBGMになっていた。特にアレサのピアノ・プレイにはやられた。なぜなら彼女は自身のピアノプレイで、バンド全体をのらせてひっぱっていったから。それから、自分がプロになってから、アレサと会ったり、何度も同じステージに立ったりする機会があった。そして、アレサのレコードでプレイしているキーボード奏者は、僕の大好きな人たちなんだ。まず、ダニー・ハザウェイ、そして、リチャード・ティーだ」

そして、ケイリブ・ジェームス。「ソウル・サーチンをやってきて、みんなから女性シンガーはやらないのかってメールをもらうようになっていた。で、女性をやるとなったら、まず、一番最初にやらなければならないのは、この人をおいて他にいない。クイーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンだ。(拍手) もちろん、他にもたくさんすばらしいシンガーはいる。だけど、まず、アレサだ。

アレサの曲で最初に僕がひじょうによく覚えているのが、『ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック』という曲。実は、これを書いたのが僕と同じ街に住んでいるウエルドン・アービンという男だった。子供のころというのは、どんな曲をどう聴いたとかそれほど覚えていないけれど、この曲は強烈によく覚えている。実は僕の出身はニューヨークのクイーンズ地区なんだけど、ここからは本当に多くの才能あふれるミュージシャンがでてきている。すばらしいジャズのキーボード奏者、ウエルドン・アーヴィンという人物がこの『ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック』の歌詞を書いている。彼は3年ほど前に亡くなってしまったけれどね。このパワフルなタイトルの曲を、地元の人間が書いたということで、ものすごく(僕にとっても)インパクトがあったんだ。若くて、才能あふれて、そして、黒人だ、と言ってるんだよね。その頃は今とはまったく時代が違う。自分は若くて、才能があり、しかも、黒人であることを声高に言うなんてことは、なかなかできなかった。ジェームス・ブラウンが『セイ・イット・ラウド・アイム・ブラック・アンド・プラウド』(黒人であることを声高に言え、誇りに思うと言え)と同じように、ものすごいことだったんだ。そのタイトルを聴いただけで、僕は鳥肌が立ったよ。それをクイーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンが歌ったわけだからね。なおさらだ。当時、あのようなタイトルの曲を歌うには、ものすごく大変な勇気がいったと思うよ。ま、それが最初で、その後、アレサの曲で踊ったりガールフレンドとセックスしたり、まあ、いろいろあったよ。(笑) そう、だから、アレサの作品は大好きなんだ(笑)」 

尾臺さんは、NHKの『ソウル・ミュージック』にゲストでやってくるアーティストに影響を受けたアーティストを聴くと、実に多くの人がアレサを選ぶと紹介。それだけ、多くのブラック・アーティストに影響を与えている。

実は、ブレンダはおととしの『エッセンス・ミュージック・フェスティヴァル』でアレサを見ているので、その話も聴こうかと思ったが、時間切れになってしまいました。3人もそれぞれアレサへの思いがあったので、最初からもっと時間をとっておけばよかったな、とかなり反省です。

このトークの後に、アレサの1971年の『モントルー』での映像から、「コール・ミー」と「ブラン・ニュー・ミー」を紹介したが、本当は「コール・ミー」は誰かに歌ってもらおうかと思っていた。実は、ケイリブとフィル・ペリーの秀逸なカヴァー・ヴァージョンがあり、それをもとにどう、と振っていたのだが、それがあまりにすばらしい出来であること、むずかしい曲であること、他にもたくさんの曲があったので、結局没になった。また、ケイリブが語った「ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック」は、当初ケイリブ・ピアノ、ブレンダの歌でやる予定だったが、時間の関係でセットリストから落ちた。

ライヴが終わってみんなで軽く打ち上げをしたのだが、その中で「満席になったのなら、次は2日どうですか。もう一日あれば、もっといいパフォーマンスができる」と口々に言う。おお、なるほど、と思った。

(明日、メンバーのウェッブ一覧をご紹介します。また、明後日のこのブログでフィリップ・ウーの4月19日に行われるビリー・プレストン・トリビュートについて、彼のインタヴューも含めお送りします)

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