【ドン勝本、ミスター・ブラウンと永遠のブラザーに】

別れ。

4月26日午前11時、さわやかな春の日差しが、徐々に強くなってきた快晴の大田区臨海斎場。ドン勝本氏の告別式には、前日の通夜同様多くの人が訪れた。

最初に江守さんが弔辞を述べた。彼はあまりに早すぎる死を残念がり、こうも語った。「3年前、僕は、後追いでカツと同じ病気になった。そこでカツからいろいろ聞いて適切な処置をしたおかげで今日、こうして生きていられる。今、僕がこうして生きていられるのは、カツがいてくれたからだ。本当にありがとう。そして、本当にさようなら」 参列者からのすすり泣きが絶え間なく続く。

棺には、赤のスーツを着た勝本さん。帽子。昨年発売された『オール・アバウト・ソウル・ディスコ・ダンス』の本、そして、ジェームス・ブラウンの1971年のアポロ劇場でのライヴを収録したアルバム『レヴォリューション・オブ・ザ・マインド』のヴァイナル盤もいれられていた。そして、参列者が次々と花を中にいれていく。

その花をいれ終わったところで、勝本さんが発掘し、メジャーからデビューしたシンガー、AI(アイ)が、お別れの歌を歌った。僕もAIとは、デビュー前から勝本さんを通じて何度も会っていたから、まさにファミリーだ。勝本さんがいたから日本でシンガーとして歩み始めることができたのだから、ある意味大恩人である。そんなAIだから、歌う前からもう顔がくしゃくしゃになっている。先週の病院でも何度も会っていた。夜中、いや朝方まで、彼女やそのスタッフもつめていた。

前日、AIの事務所社長から明日AIが歌うんだけど、何がいいと思う、と聞かれ、軽く「アメイジング・グレイスとか、いいんじゃない」と言ったら、果たして、AIはその「アメイジング・グレイス」を棺のまん前でアカペラで歌い始めた。AIは、途中泣くのをこらえて必死だ。それでも、途中から転調し、声を張り上げ、見事に「アメイジング・グレイス」を歌いきった。

こういうとき、拍手ってどうなんだろう。やはり、拍手するところではなかったようで、拍手は巻き起こらなかった。日本の葬儀だからかな。ジェームス・ブラウンの葬儀でのライヴは、まるでコンサートのように、拍手や掛け声が起こっていたのだが。お国が違えば、風習も違う。僕は、心の中で精一杯の拍手喝采をAIに送った。「よく歌った! よくやった!」 

そして、ふたが閉められ、出棺し、火葬場へと移動。最後のお別れをして、棺は火葬台の中にはいっていった。1時間弱が過ぎて、遺骨を骨壷にいれた。

再会。

思えば、14日(土)に連絡があり、15日(日)の『ソウル・ブレンズ』の前にお見舞いに行った時にはまだ話ができた。その時点で医者から「あと一ヶ月以内」と言われていたので、勝本さんの誕生日の5月20日まではどうだろう、なんとかもたないかなあ、と心の中で祈った。しかし、水曜には個室に移り、水曜深夜にお見舞いにかけつけても、話はできなかった。木曜午後人工呼吸器がつけられたと言われ、かけつけると、息苦しそうだった。だが、脈は安定していたので、そんなにすぐに何かあるとは思えなかった。しかし、医者は「いつ何が起こってもおかしくありません」と言っていた。みんなが集まっていた待合室に行ってしばらくすると、DJアトムが「今、息を引き取られたそうです」と言った。すぐに病室に戻ったが、すでに看護婦さんが呼吸器をはずし始めていた。

ここ2週間くらいのことが、一気にフラッシュバックした。それだけでなく、過去30年以上の勝本さんとのさまざまなことが思い出された。

葬儀場を出た頃にはすでに2時半をまわっていた。車に戻ると、太陽の光に熱せられた車の中は灼熱地獄さながらの暑さだった。扉を全開にして、しばらく放置し、やっと車に乗った。春の暖かさは、初夏の香りを漂わせていた。

勝本さん、天国でミスター・ブラウンに言ってください。「また、あなたの後を追って、すぐにきてしまいました(笑)」 きっとブラウンは言うだろう。「おお、そうか、ちょっとはやすぎないか。でも、まあいいだろう。はははは。で、俺たちの付き合いは何年だ? 30年以上だよな。おまえ、初めて会ったときは、大きなアフロヘアだったな。ははは」 

勝本さんとミスター・ブラウンは再会し、永遠の親友、ブラザーになった。

■お知らせ

来る2007年5月20日(日)(ドン勝本の誕生日)、白金ダンステリアでドン勝本さんを偲ぶ会が行われることになりました。ふるってご参加ください。詳細については、また後日お知らせします。

http://www1.ocn.ne.jp/~danteri/main.htm
DANCETERIA
〒108-0072
東京都港区白金1-29-13 白金ビレッヂB1
TEL:ダンステリア専用) 03-3444-0097

■過去関連記事

(下記は勝本氏が「ミスター・ブラウンの後を追っている」と言って、ブラウンに大受けした時の話です)

2003/10/06 (Mon)
I Ate Chicken With James Brown (Part 1)
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200310/diary20031006.html

2003/10/07 (Tue)
I Ate Chicken With James Brown (Part 2)
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200310/diary20031007.html

ENT>OBITUARY>Katsumoto, Kenji/1949.5.20 - 2007.4.19 (57)
ENT>OBITUARY>Brown, James/1933.5.3 - 2006.12.25(73)