【ロバータ・フラック・ライヴ〜マーヴィンが降りてきた夜】
自由度。
超ヴェテラン、ロバータ・フラックのライヴ。僕自身は前回(2005年6月)を見ておらず、2000年4月のブルーノート以来なので、7年ぶりとなる。前回は、このブログが始まる前なので、ブログには載っていないが、どこかにその時のことを書いた。初日に見たのだが、そこにはなんとそのとき来日していたシーラEとデズリーが飛び入りして歌ったり、演奏したりして、大変盛り上がった。
さて、今回はバンドメンバーが少し変わっていた。ベースのトレスは、今回が初参加、彼は12月にジョニー・ギル、9月にフランク・マッコムで来日していた。そして、バックヴォーカルの男性のほうは、なんとトニー・テリー。その昔、「ラヴィー・ダヴィー」(1988年)の大ヒットを放ったことがある男性シンガーだ。他のメンバーもこの5年くらいらしい。トニーは2005年、2000年にも来ていたという。
ロバータのライヴは、常に淡々と進む。その進み具合が時として退屈に感じられることもあるが、この日はまったくそんなことはなかった。彼女の自由度が高いミュージシャンシップが存分に発揮され、あれだけ、スローやスローミディアムの曲ばかりだったにもかかわらず、独特の「ロバータ・フラック・ワールド」を作り上げていた。まさに彼女は、この80分間、ブルーノートの時間と空間を手中に収め、すべてを支配していた。
圧巻だったのは、下記セットリストで5にあたる「マーヴィン・ゲイ・メドレー」。実はその前の前の「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」の中で、マーヴィンの「ユー・シュア・ラヴ・トゥ・ボール」のフレーズをいれて、歌っていたので、そのあたりから、マーヴィンが来ていたのかもしれない。
この3曲はいずれも傑作『ホワッツ・ゴーイング・オン』収録の作品。特に「セイヴ・ザ・チルドレン」では、男性のトニー・テリーと、言葉のやりとりを自由自在にしていて迫力があった。まるで、ちょっとしたポエトリー・リーディングか、演劇を見ているかのようだった。
一緒に見た盟友でありソウルメートのハセヤンは、「女マーヴィンっていうのは、いないと思ったけど、ロバータは女マーヴィンだねっ!」と宣言した。
ベースのトレスによると、なんと、このマーヴィン・ゲイ・メドレーは前日にはやってなくて、この日のファーストからロバータの思いつきで始まったという。それをもう少しソリッドにしたのがこのセカンドで聴けたヴァージョン。トニーとロバータの言葉のやりとりはファーストではなかったそうだ。となると、あのかけあいは、本当のアドリブだったことになる。これは恐るべし。すばらしいミュージシャンシップだ。
ロバータには、あの瞬間、間違いなくマーヴィンが降りてきていた。前回見たときは、ダニー・ハザウェイとスティーヴィーが降りてきていたが、この日はマーヴィンだ。
ロバータのライヴは、彼女が中央のピアノに座って、自分が歌いたい歌を自由に始めるという点で、ある種、スティーヴィーと似ているところがある。彼女が何かを弾き出すと、ミュージシャンがそれについていくというスタイルだ。下記セットリストで4曲目(「ヘイ、ゼアイズ・ノー・ウェイ・・・」)や5曲目(マーヴィン・メドレー)などは、事前には予定されていなかった作品。しかし、ブルーノートのホームページに発表されたセットリストによれば、前日歌った「エターナリー」はこの日は歌わなかった。
それにしても、声が若々しい。キラー・ソング「キリング・ミー・ソフトリー」や「ファースト・タイム・アイ・エヴァー・・・」などを聴いていると、実年齢(1937年2月10日生まれの70歳=生年については、38年〜40年まであるが、37年が正しいと思われる)が想像つかない。ライヴ・パフォーマンスとしては、急遽ギタリストが来日せずに、ギターパートはキーボードで差し替えていたりして、完璧ではなかったが、あのまったり感、ゆったり感で、聴く側を集中させてしまうロバータ・フラックのミュージシャン力はすばらしい。
(この項・続く)
■ロバータ・フラック・ベストCD
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FDF49E/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ブルーノートウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20070416.html
ライヴは、木曜を除いて日曜22日まで。
■メンバー
Roberta Flack (Vocal, Piano)
Morris Pleasure (Keyboards)
Nova Payton (Background Vocal)
Tony Terry (Background Vocal)
Tres Gilbert (Bass)
Rick Jordan (Drums, Musical Director)
■ Setlist : Roberta Flack @ Bluenote Tokyo, April 17, 2007
セットリスト ロバータ・フラック
(transcribed by yoshioka.masaharu)
show started 21:46
01. Oasis
02. Will You Still Love Me Tomorrow
03. A Riff Of "Family Affair" to Feel Like Making Love to A Riff Of "You Sure Love To Ball"
04. Hey, That’s No Way To Say Goodbye (Leonard Cohen) (From "First Take" Album)
05. Margin Gaye Medley:
a) Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
b) Save The Children
c) Mercy Mercy Me
06. Disguises (From Album "Roberta Flack Featuring Donny Hathaway)
07. Where Is The Love (Duo With Tony Terry)
08. Baby Calls (Tony Terry, Lead) (New)
09. Feelin’ That Glow (From Album "Feel Like Making Love")
10. Say No (New)
11. Killing Me Softly With His Song
12. Soft And Gentle (New?)
13. The First Time I Ever Saw Your Face
14. Back Together Again
show ended 23:05
(2007年4月17日火曜、東京ブルーノート=ロバータ・フラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Flack, Roberta
2007-48
自由度。
超ヴェテラン、ロバータ・フラックのライヴ。僕自身は前回(2005年6月)を見ておらず、2000年4月のブルーノート以来なので、7年ぶりとなる。前回は、このブログが始まる前なので、ブログには載っていないが、どこかにその時のことを書いた。初日に見たのだが、そこにはなんとそのとき来日していたシーラEとデズリーが飛び入りして歌ったり、演奏したりして、大変盛り上がった。
さて、今回はバンドメンバーが少し変わっていた。ベースのトレスは、今回が初参加、彼は12月にジョニー・ギル、9月にフランク・マッコムで来日していた。そして、バックヴォーカルの男性のほうは、なんとトニー・テリー。その昔、「ラヴィー・ダヴィー」(1988年)の大ヒットを放ったことがある男性シンガーだ。他のメンバーもこの5年くらいらしい。トニーは2005年、2000年にも来ていたという。
ロバータのライヴは、常に淡々と進む。その進み具合が時として退屈に感じられることもあるが、この日はまったくそんなことはなかった。彼女の自由度が高いミュージシャンシップが存分に発揮され、あれだけ、スローやスローミディアムの曲ばかりだったにもかかわらず、独特の「ロバータ・フラック・ワールド」を作り上げていた。まさに彼女は、この80分間、ブルーノートの時間と空間を手中に収め、すべてを支配していた。
圧巻だったのは、下記セットリストで5にあたる「マーヴィン・ゲイ・メドレー」。実はその前の前の「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」の中で、マーヴィンの「ユー・シュア・ラヴ・トゥ・ボール」のフレーズをいれて、歌っていたので、そのあたりから、マーヴィンが来ていたのかもしれない。
この3曲はいずれも傑作『ホワッツ・ゴーイング・オン』収録の作品。特に「セイヴ・ザ・チルドレン」では、男性のトニー・テリーと、言葉のやりとりを自由自在にしていて迫力があった。まるで、ちょっとしたポエトリー・リーディングか、演劇を見ているかのようだった。
一緒に見た盟友でありソウルメートのハセヤンは、「女マーヴィンっていうのは、いないと思ったけど、ロバータは女マーヴィンだねっ!」と宣言した。
ベースのトレスによると、なんと、このマーヴィン・ゲイ・メドレーは前日にはやってなくて、この日のファーストからロバータの思いつきで始まったという。それをもう少しソリッドにしたのがこのセカンドで聴けたヴァージョン。トニーとロバータの言葉のやりとりはファーストではなかったそうだ。となると、あのかけあいは、本当のアドリブだったことになる。これは恐るべし。すばらしいミュージシャンシップだ。
ロバータには、あの瞬間、間違いなくマーヴィンが降りてきていた。前回見たときは、ダニー・ハザウェイとスティーヴィーが降りてきていたが、この日はマーヴィンだ。
ロバータのライヴは、彼女が中央のピアノに座って、自分が歌いたい歌を自由に始めるという点で、ある種、スティーヴィーと似ているところがある。彼女が何かを弾き出すと、ミュージシャンがそれについていくというスタイルだ。下記セットリストで4曲目(「ヘイ、ゼアイズ・ノー・ウェイ・・・」)や5曲目(マーヴィン・メドレー)などは、事前には予定されていなかった作品。しかし、ブルーノートのホームページに発表されたセットリストによれば、前日歌った「エターナリー」はこの日は歌わなかった。
それにしても、声が若々しい。キラー・ソング「キリング・ミー・ソフトリー」や「ファースト・タイム・アイ・エヴァー・・・」などを聴いていると、実年齢(1937年2月10日生まれの70歳=生年については、38年〜40年まであるが、37年が正しいと思われる)が想像つかない。ライヴ・パフォーマンスとしては、急遽ギタリストが来日せずに、ギターパートはキーボードで差し替えていたりして、完璧ではなかったが、あのまったり感、ゆったり感で、聴く側を集中させてしまうロバータ・フラックのミュージシャン力はすばらしい。
(この項・続く)
■ロバータ・フラック・ベストCD
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FDF49E/soulsearchiho-22/ref=nosim/
■ブルーノートウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20070416.html
ライヴは、木曜を除いて日曜22日まで。
■メンバー
Roberta Flack (Vocal, Piano)
Morris Pleasure (Keyboards)
Nova Payton (Background Vocal)
Tony Terry (Background Vocal)
Tres Gilbert (Bass)
Rick Jordan (Drums, Musical Director)
■ Setlist : Roberta Flack @ Bluenote Tokyo, April 17, 2007
セットリスト ロバータ・フラック
(transcribed by yoshioka.masaharu)
show started 21:46
01. Oasis
02. Will You Still Love Me Tomorrow
03. A Riff Of "Family Affair" to Feel Like Making Love to A Riff Of "You Sure Love To Ball"
04. Hey, That’s No Way To Say Goodbye (Leonard Cohen) (From "First Take" Album)
05. Margin Gaye Medley:
a) Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
b) Save The Children
c) Mercy Mercy Me
06. Disguises (From Album "Roberta Flack Featuring Donny Hathaway)
07. Where Is The Love (Duo With Tony Terry)
08. Baby Calls (Tony Terry, Lead) (New)
09. Feelin’ That Glow (From Album "Feel Like Making Love")
10. Say No (New)
11. Killing Me Softly With His Song
12. Soft And Gentle (New?)
13. The First Time I Ever Saw Your Face
14. Back Together Again
show ended 23:05
(2007年4月17日火曜、東京ブルーノート=ロバータ・フラック・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Flack, Roberta
2007-48