【深町純、10月27日にサントリー・ホール出演へ】

濃密。

孤高の即興ピアニスト、深町純が今度の土曜日10月27日、サントリー・ホール・ブルー・ローズ(旧・小ホール)に登場、同ホールのスタインウェイを弾く。ここはサントリー・ホールの正面入口から入ってすぐ左側にあるホール。ホール入口の上に、つい最近開発され話題になったブルー・ローズ(青い薔薇)が一輪飾られている。天井も高く、木目の高級感あふれる格調高い会場で、そこに世界三大ピアノのひとつスタインウェイをいれ、即興演奏を行う。元々クラシック系の音を響かせるようにできているホールで、もちろんPA(アンプなど)なしで、十分「生音」が会場全体に響く。彼がサントリー・ホールに登場するのは今回が初めて。クラシックでもない、ジャズでもない、ポップでもない、イージーリスニングでもない。深町純独自の深町ミュージックというジャンル。果たしてあの豪華なホール、立派なピアノでどのような音が紡ぎだされるのか興味はつきない。

『深町純ピアノソロ即興演奏』
日時 2007年10月27日(土曜)開場19時、開演19時半
場所 サントリーホール・ブルーローズ(旧・小ホール)
チケット 5000円
問い合わせ先 POCOAPOCO 03-3425-7740
DNA 03-5413-6361

(深町さん本人のメッセージ)
「僕にとって初めてのサントリーホールです。
本当の即興演奏というものをお聴かせできればと願っています。
商業化された音楽でない、かつて僕達が「音楽」とよんでいたもの、
そんなものをお聴かせできればと思っています。」

(チケットはローソンチケットで取り扱っていましたが、公演1週間を切ったためにすでに取り扱い終了になりました。ただしFJsで販売しています。また、当日券が6時ごろからサントリー・ホールで発売されます)

今週木曜付け(10月25日付け)毎日新聞・夕刊の「楽庫」で深町さんインタヴュー、語録を中心にした記事を書いた。お時間ある方はごらんください。とはいっても、毎月深町さんが定例会で言っていることを、コンパクトにまとめただけなので、このソウル・サーチンの読者にはすでにおなじみの語録かもしれない。

さて、定例会第82回は、毎月最終月曜のものが翌週サントリー・ホールがあるために一週前倒しになった。それゆえか、若干淋しい感じの客入り。みんな来週に余力を溜め込んでいるのかな。(笑) CP80というヤマハの電子ピアノの音は、さまざまな表情を見せる。

恒例・御題拝借のときに、お客さんからもらったほんのちょっとしたメロディーから一曲を仕上げる遊びは、俳句を即興で作っていた時代とあい通じるものがある、といういつもの説を披露。そのときの例としてだしたのがこれ。俳人・加賀千代女が、○△□(まる・さんかく・しかく)をテーマに一句詠めと言われ作った俳句。

蚊帳のすみ 一つはづして 月見かな

な〜るほど。蚊帳は四つ角、一つはずすと、三角に、そして、そこから月見をすれば月はマルだ。お見事。

また最近深町さんが読んで面白かったという本が『音楽と生活』(兼常清佐・著=かねつね・きよすけ=1885年〜1957年=音楽学者・批評家、杉本秀太郎・編、岩波文庫=1992年発売)というもの。この本の中で兼常は「ピアニスト不要論」という説を展開している。

そこの話から発展してこう宣言した。「僕は、クラシックも弾かないし、ジャズ(という形態の音楽)もやらない。ブルースもやらない。僕は自分の音楽しかやらない。だから、お客さんが少ない。しょうがない! こういう図式なんだよ(笑)」 

さて、いよいよ今度の土曜日はファースト・クラスのグランド・ピアノで「自分の音楽だけ」の濃密な2時間だ。どんな奇跡が起こるのか、起こらないのか、それは演奏者本人にさえもわからない。シナリオのないドラマの幕が切って落とされる。純白のキャンヴァスには何色の絵が描かれるだろうか。サントリー・ホールで目撃者になってください。

■深町純オフィシャル・ウェッブ
http://www.bekkoame.ne.jp/~cisum/
■FJ’ズ オフィシャル・ウェッブ
http://fjs.fukamachi-jun.com/
■Setlist: Fukamachi Jun #82 @ FJ’s, Yutenji, October 20, 2007 (Saturday)
セットリスト 深町純 キーボードパーティー第82回(第5回)

First Set
show started 19:44
01. 2007年10月20日19時44分の作品 (12:19)
02. 2007年10月20日20時00分の作品 (11.13)
03. 2007年10月20日お題拝借作品1(3:22)
04. 2007年10月20日お題拝借作品2(2:22)
05. 2007年10月20日20時32分の作品 (14:08)
show ended 20:48

Second Set
show started 21:20
01. 2007年10月20日21時44分の作品 (8.45)
02. 2007年10月20日21時54分の作品(9.36)「時津風部屋」
03. 2007年10月20日22時03分の作品(8.16)
show ended 22:14

■過去の音楽比率(ライヴ全体の中での音楽の割合を表します)(単位は%)

2005年11月 第一部 41.70 第二部 51.82
2005年12月 第一部 39.86 第二部 58.91
2006年01月 第一部 58.81 第二部 67.23
2006年02月 第一部 38.4  第二部 49.7
2006年03月 第一部 50.9  第二部 92.7
2006年04月 第一部 53.1   第二部 57.3
2006年05月 第一部 45.15 第二部 82.08
2006年06月 第一部 52.16 第二部 59.02
2006年09月 第一部 47.77 第二部 77.63
2007年01月 第一部 65.53 第二部 54.97
2007年02月 第一部 53.88 第二部 49.33
2007年04月 第一部 65.26 第二部 68.58
2007年05月 第一部 40.89 第二部 58.19 【恵比寿・アートカフェ最終回】
2007年06月 第一・二部(通し)64.78 (2時間50分)【祐天寺FJ’s1回目】
2007年07月 第一部 66.23 第二部 66.45
2007年08月 第一部 67.03 第二部 68.04
2007年09月 第一部 71.16 第二部 67.30
2007年10月 第一部 67.81 第二部 49.29

(2007年10月20日土曜、祐天寺FJ’ズ=深町純ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun
2007-136
【フィリップ・セス・トリオに伊東たけし】

多国籍。

ステージの上の3人はユニークだ。一人は、マルセイユ出身パリ育ちのフランス人、一人はデンマーク人、そしてもう一人はアフリカン・アメリカン。国籍も人種も違うが、音楽のもとにひとつのユニットになる。そして、このトリオにゲストが登場、それが日本人伊東たけしだ。全員国籍が違うというところがおもしろい。

ニューヨークの音楽シーンで大活躍を続けるキーボード奏者、フィリップ・セスのトリオによるライヴ。基本は昨年(2006年)にリリースされた最新作『ボディー・アンド・ソウル・セッションズ』を中心にプレイ。この日のセット冒頭3曲は、同アルバムの冒頭3曲をそのまま演じた。

感じたのは、フィリップのピアノタッチの強さだ。この人はこんなに強く弾くとは思わなかった。もうひとりのフィリップ、フィリップ・ウーのタッチも異様に強いのだが、同じように強力だ。そして、アコースティック・ベースのクリスミン・ドーキーのベースプレイも相変わらず見事。僕はアコースティック系のベースでは近年彼が一番好きだ。本来であれば、レコーディングに参加したデイヴィッド・フィンクが来日のはずだったが、それがかなわずクリスになった、という。ドラマーはアルバムでも叩いているスクーター・ワーナー。最初、ちょっと叩きすぎという感じがしたが、だんだん慣れた。特に後半、スティックがもう折れそうになり、木の破片が薄く飛び散り始めたときには、驚いた。

そして20年以上前に、フィリップ・セスを迎えてレコーディングした日本のサックス奏者伊東たけしがスペシャル・ゲストとして登場。伊東たけしはソロアルバム2作目『L7』(1985年)で、フィリップたちとニューヨークでレコーディングしていた。(その後ももう一枚作っている) 彼がこの強力トリオをバックにサックスを吹いた。それまで3人だったステージにひとりサックス奏者が入るだけで、ぐっと音楽的にも幅が広くなる印象だ。まさにこの4人は多国籍バンドだ。

実は、伊東たけしさんの次の新作『メロウ・マッドネス』は、ソウル・ヒットのカヴァー集。スタイリスティックスやスティーヴィー・ワンダーなどの曲をカヴァーしていて、12月5日にリリースされる。それに関連して一足先にインタヴューをしたのだが、近いうちにここでも紹介しようと思っている。

ライヴを見ていたら、後ろから肩を叩かれた。振り向くとサックス奏者アンドレ・ピエールだった。なんとドラムのスクーターと昔からのなじみで、ルームメートだったという。わお。アンドレは数ヶ月前ニューヨークからこっちに引越し、やっと家が決まったそうだ。これを機に本格的にミュージシャン活動をするという。彼はここコットンでジーノ(日野賢二)バンドでプレイしていた。

□ 過去関連記事
クリス・ミン・ドーキー・インタヴュー
http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/interview/chris20020810.html
(2002年8月)

□メンバー
フィリップ・セス・トリオ
Philippe Saisse(p,key), Chris Minh Doky(b), Skoota Warner(ds), special guest:伊東たけし(sax)

□ Setlist: Philippe Saisse Trio @ Cotton Club, October 21,2007
セットリスト フィリップ・セス・トリオ 

Show started 20.01
01. Do It Again
02. September
03. Lady Madonna
04. Dolphine
05. Home Sweet Home
06. Body & Soul (+Itoh Takeshi)
07. Moanin’  (+Itoh Takeshi)
08. Constant Rain (+Itoh Takeshi)
09. Minds Alike (+Itoh Takeshi)
Enc. Roppongi Blues (including a riff of “Chicken”) (+Itoh Takeshi)
Show ended 21.37

(2007年10月21日日曜、丸の内コットン・クラブ=フィリップ・セス・トリオ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Saisse, Philippe Trio
2007-137
【エボニー・フェイ・ライヴ〜歌とトークでコージーな夜】

フレンドリー。

「えぼちゃん」こと日本在住アメリカンR&Bシンガー、エボニー・フェイがトリオを従えて比較的ジャズっぽい作品を小さなジャズバーで歌うというので出向いた。場所は六本木ハリントン・ガーデンの地下一階。2005年12月にできた「クール・トレイン」という30人も入ればいっぱいになる店が30人も入って超満員だった。グランドピアノ、ドラムセット、そしてアコースティック・ベースがあり、このトリオをバックにエボニーがスタンダードを中心に歌った。

エボニーをじっくり見るのは昨年10月以来ちょうど1年ぶり。前回はフィリップ・ウーとのメビウス・セッションだった。その後、チューチュー・パピコのCMが彼女だったことが判明したりしていた。そのことを尋ねたら「たくさん、CMやってるの、だから全部は覚えてない・・(苦笑) ○社、△社、□社、いろいろやったわ」。(会社名を立て続けに言われたが、忘れてしまった)

ジャズを中心に歌うエボニーはなかなか大人っぽい。MCも絶好調。「今日はまだ月曜なので、静かにクールにすごしたいでしょ。今日のテーマはジャズ・ナイト。だから、R&B、ソウルを聴きたいという人もいるかもしれないけれど、なにか問題ある、ヨシオカさ〜ん」 いきなり振るな。(笑) 「ノー・プロブレム!」と言ったさ。

観客の中に、仲良し2人組みディーヴァ・グレイとマクサン・ルイスがいた。エボニーがセカンドでロバータ・フラックの「キリング・ミー・ソフトリー」を歌う。すると後半、「ララララララ〜」というコーラスを客席のディーヴァとマクサンがコーラスを歌いはじめた。小さい店なのでマイクなしでも十分コーラスが聴き取れる。「レディース・アンド・ジェントルマン、ミス・ディーヴァ・グレイ、ミス・マクサン・ルイス!!」 エボニーが彼女たちを紹介した。おなじみソウル・サーチャー、ジェイ・スティックスが叩くジャズ曲を初めて聴いたが、やっぱりセンスある。なんかはたから見ているとまるで簡単にプレイしているのだが・・・。

会場の雰囲気は、エボニーのファン、友人たちが訪れていたせいかひじょうにアットホームでフレンドリーになっていた。帰り道に、なんとタトゥー・東京がなくなっていたのを発見した。今や更地。次には何ができるのかな。

□過去関連記事
August 01, 2007
Who Sings On "Papico" CM?
http://blog.soulsearchin.com/archives/001932.html

October 26, 2006
Philip Woo Featuring Ebony Faye And Ishinari Masato
http://blog.soulsearchin.com/archives/001346.html

□ メンバー
エボニー・フェイ / Ebony Faye (Vocal)
ジェイ・スティックス / Jay Stixx (Drums)
吉田賢一 (ピアノ)
山村隆一 (ベース)

□セットリスト
Setlist : Ebony Faye Live At Cool Train, October 22, 2007/10/23
セットリスト エボニー・フェイ 

First set
Show started 19:02
01. (Instrumental)
02. (Instrumental)
03. Our Love Is Here To Stay
04. This Can’t Be Love
05. Someone To Watch Over Me
06. Just The Way You Are
07. One Day I’ll Fly Away
Show ended 19:45

Second set
Show started 20:42
01. (Instrumental)
02. Nearness Of You
03. Killing Me Softly With His Song
04. Thou Swell
05. Fly Me To The Moon
06. God Bless The Child
07. You’d Be So Nice To Come Home To
Show ended 21:23

(2007年10月22日月曜、六本木・クールトレイン=エボニー・フェイ・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Faye, Ebony
2007-138
【吉岡耕二・個展】

衝撃色。

銀座ソニービルの近くで打ち合わせが終わり、ソウル・サーチャー岡さんに電話をすると、なんとすぐ近くの画廊でお知りあいの先生の個展のレセプションに来ているので、いらっしゃいませんか、というお誘い。言われるがままに行くと、徒歩2分のところにあった「ギャラリー桜の木」での画家吉岡耕二さんの個展だった。先生と岡さんは家が近いことで親しくさせていただいている、という。そういえば、以前にその話をきいたことがあった。

■吉岡耕二展
http://www.sakuranoki.co.jp/ginza/071019/index_071019.htm#

http://www.ginzastreet.com/yoshioka_koujiten.html

さすが、銀座の画廊でやる個展はちがう。初日ということで、ケータリングなども入り、ゆったりと作品を見つつ、お得意様たちが絵を囲みながら談笑している。基本は油絵で、いくつかリトグラフもあるが、次々と「売却済み」の札がかかっていく。ブルー、イエローなど鮮やかな色彩が目に飛び込んでくる作品群だ。帰ってきて調べてみると、「色彩の魔術師」と呼ばれているそうだ。まさに色の衝撃という感じだ。1967年から14年間ほどフランスに住んでおられたそうだ。

岡さんに紹介されて名刺を交換すると「僕も吉岡です」と、吉岡・吉岡のあいさつになった。

僕なんか絵について素人なので、すぐに「これは、ジャンルでいうと何になるんでしょう」なんていうバカの質問をしてしまった。「まあ、ジャンルなんて売る側(見る側)が決めることだからねえ。でもしいて言えば、心象、具象(絵画)と言えるかな。抽象画に対しての具象絵画なんだが、僕は自分ではその中間あたりの『半具象』って言ったりするね」とやさしく解説していただいた。

吉岡さんは、世界中を旅してそこで印象に残った風景などを絵に描く。「どこかでものすごく綺麗な夕焼けを見るでしょう。それを絵にしたいと思う。でも、帰ってきてアトリエでそれを描こうと思っても、もうそのときの瞬間というのは変わっている。時間が経てば変わるのはあたりまえのこと。心象とは変わるものなんだ」 外で写生をするようには描かないという。その風景を頭に焼き付けて、ゆっくりアトリエで描く。「ということは、写真はかなり撮られる?」と尋ねると「たくさん、撮りますね。それも、モノクロで」とのお答え。な〜〜るほど。描くときに描く本人もイマジネーションを広げられる。

一作品を書き上げるのに大変な時間がかかるという。特に、絵の具を何回も重ね合わせて描くためには、毎回最初の絵の具を乾かさないとならない。いろいろな絵の具を乾かし、次の色を塗り、また乾かしという作業をしているとものすごく時間がかかってしまう。そこで、同時に何点も並行して描くという。

ところで、吉岡さん作品の何点かに、四角の窓枠のようなものが描かれていることに気付いて、これは何ですか、と尋ねた。すると、「まあ、僕のクセみたいなもんですかねえ」と簡単なお答え。「カメラのファインダーを覗くと映る枠とか、窓から外を眺めて、そのときの窓枠とか、そういうものかなと思ったんですが」と言うと、「それは見る人の自由ですよ、それでいいんですよ」と言われた。最初に下書きのときに、書いて、それが残っていたりすることもあるそうだ。消えてしまうものもあるが、また後から書き足したりすることも。

「日本人の絵の見方っていうのは、その絵を見たらまずタイトルを見る。これはどこで、いつ頃で、夕方なのか朝なのか、そういうことを気にするんですよ。でも、フランス人はちがう。フランス人のおうちに行ったことありますか。古い家なんか行ったら家の壁という壁すべてに何らかの絵が飾ってあります。本当に子供の頃からそういう風に絵に囲まれて育ってるんですね。それに比べると日本は、ふすまと障子で、掛け軸が床の間に一点かけられているくらいです。(日本の家には)絵がないんですよ。特に油絵みたいなものは、(日本には)歴史がない。フランスの家にあれだけ絵が飾られているというのは、ひとつには地震がないからということもあるんですけどね。だから、本当に築何百年という家が普通にあって、古い絵がいくらでも飾られている。オーチャードとかで個展をやると、男の人は順路に従って絵を見ていく、でも、女性はぱっと見て(たとえば)黄色が目立つような絵とか、ぱっと気に入った絵の前に直行する。(日本人男性は)色彩に関する目というのがないんだね。ネクタイをいまだに奥さんに選んでもらったりしてるくらいだからね(笑)」

なるほど。確かに僕も、文字情報というか周辺情報、求める嫌いありますねえ。音楽もですが。(苦笑) 

いろいろ調べてみると、2005年に行われた展覧会では「魂の詩」というタイトルがついていた。またまたソウルつながりですね。岡さんが、「吉岡さん・・・」と、話始めると二人が同時に「はい」とばかりにうなずく。そして吉岡さんが、岡さんに「今、うちの庭に柿がたくさんなってるから、一度早いうちに来て、とってって」と言っていたのが印象的だった。

■ 関連ウェッブ

http://www.bunkamura.co.jp/gallery/event/yoshioka04.html
(少し古いですが、2004年文化村で行われたときの作品など)

■ギャラリー桜の木 銀座

東京都中央区銀座5−3−12 壹番館ビルディング3階
午前11時から午後7時 日・祝休廊
電話 03-3573-3313
○吉岡耕二展は10月19日(金)から10月31日(水)まで。
http://www.sakuranoki.co.jp

ENT>ART>EXIHIBITION>Yoshioka, Kohji
【ロイ・エヤーズ・ライヴ、ビラルがオープニング】

七変化。。

ひとつ間違えば、下手なディスコバンドにさえなってしまいそうなバンドだが、これが思いのほか強力なメンバーだった。ドラムス、ベース、キーボードの3人をバックにまずビラルが3曲歌い、その後、ロイ・エヤーズ御大が登場。ロイ・エヤーズとしてのライヴは2006年10月コットンクラブ以来約1年ぶり。

ロイ・エヤーズのライヴは今までも何回か見ていたが、今回は予想以上にすばらしいライヴだった。各ミュージシャンの力量がソロを取ったときにすばらしく、実力が如何なく発揮されたためだろう。特に圧巻だったのは、ディージー・ガレスピーの「ナイト・イン・チュニジア」。18分余にわたって繰り広げられたこの曲ではベース、ドラムス、キーボード、サックス、もちろんロイなど全員がソロを担当、思い切りミュージシャンたちが力を出していた。

ベース奏者がものすごい早弾きでベースを弾いているかと思えば、それが一瞬休んだ隙に、残りのミュージシャンがやってきて彼の汗をおもしろおかしく拭いたりする。あるいは、サックス奏者が一音ずつ下げるのと同時にミュージシャンも全員一段ずつ立ち位置を下げていったりして、思い切りエンタテインメントになっていた。このあたりの動きは、実に楽しい。そうした面白系の動きも、彼らにしっかりと演奏できる技術があるから映えるというもの。キーボード、サックスの両方を担当するレイはヴォーカルも少しやるが、驚いたのはサックスを片手で持って吹きながら、もう一方の手でキーボードを弾いたシーン。いやあ、器用器用。

ロイ・エヤーズは電子ヴァイヴラフォンを使用。これが、まさに音の七変化。キーボードみたいな音さえ出る。ロイはとても67歳とは思えぬほど、元気。他のミュージシャンがソロを取っているときには、なにか別の楽器で遊んでいたりする。ステージの上での人生を十分に楽しんでいる。これだけの年齢になっても、若いミュージシャンを適材適所に配置することによって、若々しく生き続けるまさにソウル・サヴァイヴァーだ。

■ ロイ・エヤーズ過去関連記事・ライヴ評

October 08, 2006
Philip Woo Will Be At Cotton Club With Roy Ayers: Reunion First In 28 Years : Philip Reveals His First Encounter With Roy (Part 1)
http://blog.soulsearchin.com/archives/001312.html
フィリップ・ウーはロイ・エヤーズのバックを務めたところから、音楽業界に足を踏み入れた。

November 06, 2006
Philip Woo And Roy Ayers Live: After 28 Years...
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_11_06.html

November 07, 2006
Keyboard Wizard Meets Vibraphone Master: Philip & Roy
http://blog.soulsearchin.com/archives/2006_11_07.html

2003/08/21 (Thu)
Roy Ayers Live At Motion Blue: Music Makes Him Young
http://www.soulsearchin.com//entertainment/music/live/diary20030821.html

2004/03/11 (Thu)
Roy Ayers Live At Blue Note: Music Is My Lady, My Mistress
http://www.soulsearchin.com//entertainment/music/live/diary20040311.html

■ メンバー

ロイ・エアーズ/Roy Ayers(Vibraphone,Vocals)
ビラル/BILAL(Vocals)
マーク・アダムス/Mark Adams(Keyboards)
ドナルド・ニックス/Donald Nicks(Bass)
リー・“ビーバ”・ピアソン/Lee’Beava’Pearson(Drums)
レイ・ガスキンス/Ray Gaskins(Saxophone)
ジョン・プレスリー/John Pressley (vocal)

Setlist : Bilal, Roy Ayers @ Billboard Live, October 24, 2007

Bilal
Show started 21:32
01. Love Poems
02. Queen Of Sanity
03. High And Dry (Radiohead)
show ended 21:53

Roy Ayers
Show started 21:54
01. Searchin’
02. Baby You’ve Got It
03. Night In Tunisia including a riff of “My Favorite Things”
04. (Instrumental)
05. Everybody Loves The Sunshine
Enc. Let Me Be Your Sugar
Show ended 22:53

(2007年10月24日水曜、ビルボード・ライヴ=ロイ・エヤーズ、ビラル・ライヴ)
ENT>MUSIC>ANNOUNCEMENT>Ayers, Roy / Bilal
2007-140
【日本一のファンキー・ベースマン】

スペース。

それにしても、いつ見ても、聴いてもジーノのベースはファンキー。日野賢二のライヴ。この日はちょっと遅れてしまい、セカンドの途中から。ジーノのライヴは、いつも参加するミュージシャンに「スペース」を与えるのが大きなポイント。常にミュージシャンたちにやりたいようにやらせて、そのミュージシャンたちの個性を出させようとする。これって、素晴らしい。この日は、ギターにジューン・ウスバ、さらにベースにちょうどベイビーフェイスのライヴでやってきていたイーサン・ファーマー、サックス奏者(ジョー・・・=名前聞き取れず)が飛び入りという豪華ラインアップ。イーサンはちょうどこの日がベイビーフェイスのギグがオフということで、遊びに来ていた。

最後はいつもの「チキン」、その前の「ティーンタウン」もジャコの曲。「チキン」ではその踊り方を教えてくれる。この日は歌のゲストがいなかったので、ヴォーカル曲は「カム・トゥゲザー」だけになったが、ベースでメロディーも弾くと、ファンクとメローが重なり合って独特の世界が浮かび上がる。

最近、ジーノは他のアーティストへの作品提供や、プロデュースなどで忙しく、自作アルバムを作るまでの時間がないという。ま、ひとつがんばってもらいましょう。

ところで、ベイビーフェイスのベース奏者、イーサンが隣に座っていたので、声をかけてちょっと話をした。彼は前回来日時にも来ているという。「なぜ、今回のドラマーはリッキー・ロウソンじゃないの?」「いやあ、彼はものすごく忙しいだろう。今回のツアーは東京、大阪、福岡って行くからかなり長期になる。それだけ長い間リッキーのスケジュールを押さえられなかったんだろう」 なるほどねえ。

ちょうど2年前のジーノのライヴ評を読み返していたら、彼に「愛のコリーダ」かブラザース・ジョンソンの「ストンプ」をやって欲しいと書いていた。う〜む、もう一度、リクエストしておこう。絶対、ジーノにあうと思うな。ケイリブあたりの歌で、ギターはチャーで、ベースがジーノ。よろしく。

May 30, 2007
Jino Hino Kenji Live At Cotton
http://blog.soulsearchin.com/archives/001794.html

September 23, 2006
Jino Jam Featuring Maru: One Thing Leads To Another
http://blog.soulsearchin.com/archives/001276.html

October 27, 2005
Jino Jam Live: Mr. Bass Man Is Sooo Funky
http://blog.soulsearchin.com/archives/000605.html

■メンバー

(B)日野“JINO”賢二 (Ds)J-Stixx (Key)Penny-K、Nobu-K (G)Masa Kohama (Guest) 臼庭潤(Guitar), Ethan Farmer(Bass)

セットリストは、ファーストの分もジーノがくれました。

Setlist : Hino Kenji Live @ Blues Alley, October 17, 2007
セットリスト 日野賢二 

First set
01. Diggin’ U
02. Deep
03. Window Shopping
04. Aaliyah
05. Summertime
06. Nite

Second set
01. Intro
02. Season (Kirk Whalum)
03. Jabane (4 Da Foundation)
04. Face Da Funk
05. Meditation (4 Da Foundation)
06. He Had A Hat (Jeff Lorber)
07. Come (Beatles)
Enc. Teen Town (Jaco Pastorious)
Enc. Chicken (James Brown, Jaco)
Show ended 22.43

(2007年10月17日水曜、目黒ブルースアレー=日野賢二ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Hino, Kenji
2007-134
【深町純サントリーホール〜ソウル・サーチャー動向】

もろもろ。

某DJと話をしていたら、「もう今年も終わりですよ〜〜」と電話のむこうでトロトロいまにも昼寝をしそうな声で言う。いろいろ予定をいれていると、もう入れられるのが12月になってしまい、今年も終わりだという感触を持つそうだ。みんなそんなに忙しいんだ。(笑)

さて、今日は深町純@サントリー・ホール。今回は『ソウル・サーチン』を撮影しているビデオチームが撮影をしてくれることになり、一夜限りの即興演奏が記録に残される。サントリー・ホール、スタインウェイというコンビネーションは一夜だけ300人だけの体験で終わらせておく手はない。

10月25日(木)付け毎日新聞夕刊に記事を書いた。
http://mainichi.jp/enta/music/news/20071025dde012070003000c.html

さて、このところなんだかいろんな打ち合わせばっかりな感じ。『ソウル・サーチン』読者だけに、耳よりニュースを。来週にでも正式に発表しますが、10月5日に銀座駅で行った『フィリー・ソウル・ナイト』が大変好評で、急遽、もう一度行うことになった。それまで13回行った中で、最大の観客動員になったそうで、どうしてももう一度やって欲しいという熱いリクエストがでてミュージシャンなどの調整をしていた。

日時は12月7日(金)。場所、時刻は同じになる予定。登場シンガーは、ケイリブとサックスのゲイリーは同じだが、3人のシンガーがスケジュールの都合などで変わる。なんと、東京レディー・ソウル・ナンバー1、ブレンダ・ヴォーンの参加が実現。さらにキムタクのギャッツビーを歌うゲイリー・アドキンスが参加し「愛がすべて」を歌う。もちろん、サビのところは「ギャッツビー」になりそうだ。そして、もうひとりはギターと歌のアル・マーティン。前回参加のグリニスの兄である。ギターが加わりサウンドにも幅がでそう。無料イヴェントなので、前回以上の人が集まってしまいそうな気配だ。

告知ばかりになってしまうが、ソウル・サーチャー関連では、一人芝居の高山広のライヴが11月6日(火曜)藤が丘マルターノで、ソングバード、シャンティのライヴが急遽11月30日(金曜)に決定。今回はなんと丸の内コットンクラブ。デビューアルバムのパリ盤がそれまでには到着しているので、店頭販売もできそう。さらに、ソウル・サーチャー、ゲイリー・スコットのグループ、ザ・サード・ウェイヴのライヴが同じく藤が丘マルターノで11月22日(木曜=休日前日)に行われる。これは木下航志くんのバックを勤めたソウル・サーチャーズのひとりでパーカッションのアンディマツカミらとのグループ。

その前に11月7日(水曜)にはブルースアレーでマルのライヴ。マルはブルースアレーでは『ソウル・サーチン』で歌っているが、単独ライヴは初。『ソウル・サーチン』でのライヴなどが認められて単独ライヴへ進んだ。気心しれたバンドなので、かなりタイトなサウンドになるだろう。さらにブルースアレーでは翌日はフィリップ・ウーのライヴ。この日の最大の目玉は、マクサン・ルイスがフィーチャード・シンガーで登場する点。これも見ものだ。

今からみなさん、カレンダーにマークをよろしくです。(笑)

ENT>MUSIC>LIVE>ANNOUNCEMENT
【深町純サントリー・ホール・ブルー・ローズでスタインウェイを弾く】

体内時計。

音が違う。響きが違う。空気が違う。ふだんのキーボード・パーティーとはすべてが違っていた。恵比寿アートカフェでのピアノの即興演奏、そして、祐天寺FJズでのヤマハのCP80を使ったキーボード・パーティーで聴きなれたはずの深町サウンドが違っていた。アンプ増幅なしに、生ピアノの生音が会場の一番後ろの席に座っていてもしっかりと体に響いてくる。天井も高く、全面木目でできていて、よくピアノが鳴っている。

即興演奏の魔術師深町純が、サントリーホールの小ホールに初登場。この小ホール、今は「ブルー・ローズ」という。ブルー・ローズとは青いバラ。サントリーがオーストラリアのバイオ企業とともに十余年の歳月と30億円の費用をかけて作り上げたという奇跡の花だ。英語では「ブルー・ローズ」とは長い間、「決してできないこと」「不可能なこと」を意味する言葉として使われていたという。まさにその名にふさわしい演奏を繰り広げた。

この日使われたのはスタインウェイのピアノ。調律が終わり、サウンドチェックのために座り、彼の指が鍵盤に触れた瞬間、すでにストーリーは始まっていた。素人目(耳)にもわかるこのピアノの響きのよさ。会場のどこで聴いてもしっかり生音が入ってくる。

演奏が始まる前にビデオ収録用にほんの数分インタヴューした。「いいピアノとそうでないピアノの違いを普通の人にもわかるように説明していただけますか」 「それはたとえば、自分が弾いていて、『お、うまいじゃない』なんて、自分自身がうまくなったように思わせてくれるようなピアノと言えるんじゃないかな。ピアノにまったくの素人が弾いてもわからないかもしれないけれど、ある程度のレベルのピアニストが弾くと、引き立つピアノ、演奏がよく聴こえる、よく響くピアノ、そういうのは確かにあって、そういうのがいいピアノだと思う。僕も過去の経験で何度かそういうピアノに遭遇したことがある。東京芸大のピアノはそうだった。ここのスタインウェイも、きっと値段は1500万とかするかもしれないけど、いいピアノなんじゃない」

カメラマンが「自分は、今日初めて即興演奏を(リハーサルで)聴いたんですけど、即興演奏は、どのように終わるのですか」と尋ねた。「いい質問だね。あまりその演奏がよくないと、なかなか終われないんだ。お客さんがそろそろ終わりそうだな、って感じてるというのがわかったりすると、それを裏切ってまた続けたりすることもある。でも、基本的にはまあ、自分がそろそろ終わろうかと思ったら、徐々に終わるように演奏を整えていくんだ。あ、そうそう、僕は体内時計というのを信じていて、たとえば営業とかで(即興を)5分でやってくれ、と言われたらだいたい5分で演奏を終えられるんだよ。1秒が60集まって1分、1分が60集まって1時間。なんかそういうのを無意識に持ってるんだと思う。僕は目覚し時計使わないんだ。何時に起きなければならないと思うと、だいたいその時刻に起きられる。ま、ときどき演奏中も時計を見ることがあるけど、そういう時っていい演奏になってないことが多いかな(笑)。時間の概念で言うと、いい即興演奏の時って、始まったと思ったら、もう終わってるんだよ。ほら、なんでもマージャンでも遊びでも、楽しい時間はあっという間に過ぎるでしょう、それと同じ」

この日、ファーストセットは7時半スタートの8時10分までの予定で、10分の休憩をはさんで8時20分から1時間くらいということになっていた。下記セットリストの4曲目が静かに着地し演奏を終えた時、時刻は8時10分丁度だったのだ。これには僕も思わず「うそだろ」と驚嘆した。究極の体内時計ではないか。ところが深町さんは、拍手をもらいながら、時計をちらっと見て、もう1曲4分弱の小品を演奏した。あれれれれ。(笑)

(この項、続く)

■深町純オフィシャル・ウェッブ
http://www.bekkoame.ne.jp/~cisum/

■FJ’ズ オフィシャル・ウェッブ
http://fjs.fukamachi-jun.com/

■Setlist: Fukamachi Jun @ Suntory Hall Blue Rose, October 27, 2007 (Saturday)
セットリスト 深町純 サントリーホール・ブルーローズでスタインウェイを弾く

First Set
show started 19:30
01. 2007年10月27日19時30分の作品 (7.34)
02. 2007年10月27日19時38分の作品 (9.19)
03. 2007年10月27日19時47分の作品(9.22)
04. 2007年10月27日19時57分の作品(13.30)
05. 2007年10月27日20時10分の作品 (3.56)
show ended 20:15

Second Set
show started 20.25
01. 奇跡 (3.14) 
02. 君のなかま (2.35)
03. 悲しみのあとに(2.05)
04. サファイア(3.02)
05. 2007年10月27日20時47分の作品 (6.20)
06. 2007年10月27日20時54分の作品 (9.45)
07. 2007年10月27日21時03分の作品 (12.44)
Enc. 2007年10月27日21時17分の作品 (2.48)
show ended 21.22

■過去の音楽比率(ライヴ全体の中での音楽の割合を表します)(単位は%)

2005年11月 第一部 41.70 第二部 51.82
2005年12月 第一部 39.86 第二部 58.91
2006年01月 第一部 58.81 第二部 67.23
2006年02月 第一部 38.4  第二部 49.7
2006年03月 第一部 50.9  第二部 92.7
2006年04月 第一部 53.1   第二部 57.3
2006年05月 第一部 45.15 第二部 82.08
2006年06月 第一部 52.16 第二部 59.02
2006年09月 第一部 47.77 第二部 77.63
2007年01月 第一部 65.53 第二部 54.97
2007年02月 第一部 53.88 第二部 49.33
2007年04月 第一部 65.26 第二部 68.58
2007年05月 第一部 40.89 第二部 58.19 【恵比寿・アートカフェ最終回】
2007年06月 第一・二部(通し)64.78 (2時間50分)【祐天寺FJ’s1回目】
2007年07月 第一部 66.23 第二部 66.45
2007年08月 第一部 67.03 第二部 68.04
2007年09月 第一部 71.16 第二部 67.30
2007年10月20日 第一部 67.81 第二部 49.29(通算82回)
2007年10月27日 第一部 96.00 第二部 74.65 (サントリー・ホール・ブルー・ローズ)

(2007年10月27日土曜、サントリー・ホール・ブルー・ローズ=深町純ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun
2007-142
【ブルー・ローズに起こる奇跡】

奇跡。

10月27日(土曜)は、この時期には珍しく関東地方に台風がやってきた。まさか台風とは。これでは当日券に影響があるに違いない。とは言うものの、ふたをあけてみれば、8割方席は埋まった。

ステージのピアニストは緊張しているのだろうか。第一部はほとんどおしゃべりはなく、音楽比率はかつてない96パーセントを記録。まさに「ピアノ・コンサート」になった。普段半分近くしゃべる深町さんにとっては、これこそ、奇跡だった。

即興演奏は、すなわち一期一会(いちごいちえ)。二度と同じ演奏はない。本人さえ同じようには弾けない。となると、この感動や感激をなんとしてでも記録に残しておきたい。そこで『ソウル・サーチン』関連の映像を記録しているレムTVのチームに収録をお願いした。今回は6台のカメラでたったひとりのピアニスト深町純を追った。一体どんな映像になるか今から楽しみだ。

しかし、いくら映像も音も記録したとしても、この演奏そのものは決してデジタル化することはできない。この場にいて、深町ピアノが共振させる空気を吸い、そのピアノの振動を五感を使って体全体で体験すること、それこそが最大の贅沢だ。この日、このブルー・ローズにやってきた300人の人たち、この時間を体験した人だけに残る「記憶」「思い出」「感触」、それがプレシャス(貴重)なものなのだ。そこにライヴ・パフォーマンスの醍醐味がある。

やはり、いい演奏家、いいピアノ、いい音、いい響き、いい環境での音楽は、格段においしい。年に一度とは言わず、半年に一度くらいの割合でいい音を響かせてはいかがだろうか。深町さんにとっては、そんなに難しいことではない。

第2部の冒頭は17名の子供たちのコーラスとの共演となった。これは、今回のライヴを企画立案した小野布美子さんが普段子供たちに音楽を教えていて、その生徒たちがみんなで作った自作曲を舞台で歌うというものだった。これまでに深町さんと子供たちは何度か一緒にやっていた。僕は正直、リハのときにこれを見て、「なんだこれは」と思った。学校の発表会という感じのものだったからだ。

4曲を歌ったが、途中のMCで深町さんが計らずも言った。「まあ、稚拙(ちせつ)な歌ですが・・・。でも音楽って不思議だよね。稚拙でもでもこうやってひたむきに歌っているっていうのはいいよね。(拍手) 僕は子供って嫌いなんですよ。(笑) だって子供がいたらこんな音楽会は台無しになっちゃうでしょ。(笑) これらの曲は彼らが自分たちが作った曲で、誰か大人から歌えと言われて作ったものではありません」 

サントリー・ホールは基本的にはクラシックにしか貸さないという。また、貸し出しに際してさまざまなチェックリストがある。曲演奏中に客入れをしていいか、写真撮影許可するかしないか、花束はどうするか、お子さんは入場可か、などなど。ま、この日もかなり小さな子供を連れてきた人がいて、その赤ん坊が演奏中に泣くというか、声をだすので、やはりさすがに迷惑だなと感じた。以降は6歳以下はご遠慮願いましょうか。打ち合わせのときにおもしろかったのが、「演奏曲目は何ですか」というもの。どうやらクラシックの演奏会では事前に演奏曲目を出すことが多いらしい。もちろん深町さんは即興なので、何曲やるか、何分やるか、もちろんタイトルさえわからない。「曲目は事前にはわかりません」「では終わった後、演奏曲目は張り出されますか?」「・・・」。(苦笑)(僕がいつも作ってるセットリスト、張り出せばよかったかな=(笑)) 

それにしても、この空間に漂うピアノの響きは格別だ。ヨーロッパの昔の貴族たちは、こうした即興演奏みたいのを毎日のようにやっていたのだろうか。サントリー・ホールの担当の人が、ふだんはいつも同じクラシックの作品ばかりを聴いているらしく、この深町さんのような演奏に「新鮮さ」を覚え「こういうのが聴きたかったんですよ」と言って即売でCDを買っていったそうだ。

ふだんやっているFJズや、かつてやっていた恵比寿アートカフェでのパーティーで聴く音と、このブルー・ローズで響く音は天井の高さも、反響も、またピアノ自体の音も違う。そういう違いによって、演奏家のモチヴェーションは高まるのでしょうか。「それは(もちろん)あると思うね。当然、演奏家にもそこの音が入ってくるからね。やはり、(演奏家が)集中していると、いい演奏ができるとはよく言われる。ただね、自分がものすごく集中していい演奏ができたと思っても、意外と聴いている人は違って受け取っていたりしてね。逆に、僕があんまり集中できずに楽に弾いたときに、『力抜けてて、よかってね』なんて言われることもある。一概にはなんとも言えないな」 (深町・談)

1曲終わるごとに、もちろん観客からは拍手が来るのだが、いつもよりも、あたりまえなのだが、格段に拍手の時間が長かった。観客の満足度もいつもとは違うのだろう。

そして、最後の曲が終わり万雷の拍手に迎えられ彼は再びステージに登場した。「僕の人生の信条のひとつに・・・、決してアンコールはしない、というものがあるんですが・・・。(笑) でも、1曲弾きます」 

何曲も演奏されたこの日のステージだったが、そこにはまちがいなく深町純の小宇宙があった。それは、決してアートカフェやFJズでは感じられないものだった。ひょっとしたらアートカフェなどでは「小国」があったのかもしれない。普段、人が動き、ドリンクのカップや食べ物が行き交う中で聴く音楽と、シーンとほぼ全員がステージ中央のひとりの演奏家に対して集中しているのでは、まったく空気が違う。僕も背筋を伸ばして聴いた。

小宇宙からは、きっと宇宙に人類誕生という奇跡が起きたように、何か違う小さな奇跡が起こるに違いない。舞台はブルー・ローズ、不可能が可能になった部屋なのだから。

(2007年10月27日土曜、サントリー・ホール・ブルー・ローズ=深町純ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Fukamachi, Jun
2007-142
【17年ぶりキース・スウェットのエロエロライヴ】

スウェット。

彼のデビュー作「アイ・ウォント・ハー」が大ヒットし、「ニュー・ジャック・スウィング」の幕が切って落とされたのは、ちょうど今から20年前の1987年のことである。キース・スウェット、そして、彼をコ・プロデュースしたテディー・ライリーはまもなく一世を風靡、全米の音楽業界を席巻する。その勢いで1990年10月、キースは初来日。国立代々木体育館と翌日横浜文化体育館という大きな会場(前者が約1万3000人、後者で5000人=後者は半分くらいの入り)で行われたライヴでは、のりのいいリアルな「ニュー・ジャック・スウィング」のシンガーと思いきや、それ以上に、セクシーなR&Bシンガーだということを見せ付けていった。

それからちょうど17年ぶりの来日は、小さなビルボード・ライヴ(収容300人)。5層目まで満員だ。さすが客層の主流は1980年代後半から1990年代前半のバブル時代を経験してきたおそらく現在30代後半から40代だった。

1曲目の「サムシング・ジャスト・エイント・ライト」のイントロが始まるなり、全員総立ちになる。ニュー・ジャック系のリズムのいい作品とスロー・バラードとが適度に混ざり合い、ブラック・コンテンポラリーな色を徹底して出す。先日来日したテディー・ライリーのときもかなり観客から受けていた印象をもったが、「ニュー・ジャック・スウィング」人気、根強い。

僕の席からはドラムス、ベースとキーボード兼任、もうひとりキーボード、コーラス2人(1人はラッパー)の5人編成に見えたが、ビルボード・ライヴのウェッブでは7人編成と書かれている。はて。いずれにせよ、極端な話、ドラムスとキーボード、ベースだけで「ニュー・ジャック・スウィング」は生まれる。けっこう打ち込みっぽく聴こえた。女性コーラスもキーボードからでてきた。

バラードでの女性を煽るいやらしさぶりはさすがだ。こういうエロエロさ加減はどうしても日本人では出せない。ニュー・ジャックもエロエロ・ソウルバラードもいいし、キース・スウェットのライヴを見ていると、何でもイケイケだったバブル時代がフラッシュバックしてくる。ヒット曲が多いだけあって、さすがに次々と曲が始まると観客の歓声も大いにあがる。スローでは通路でチークダンスを踊るカップルも。このあたりのアーティストって今でも十分受けるんですねえ。

しかし、「アイ・ウォント・ハー」のヒットなんか、ついこの前のように思える。キースのアルバムは1枚目から3枚目と8枚目の日本盤ライナーノーツを書いた。久々に読み返してみた。4枚目から6枚目までは松尾潔さんが書いている。(7枚目がなぜか手元になかった) 1枚目ではまだ「ニュー・ジャック・スウィング」という言葉はなかったものの、そのリズムについて説明していた。それにしても20年も歌い続けて、またライヴハウスにやってくるというのはすごいな。継続は力なり。

アンコールを終えてキース・スウェットが舞台から降りてくると体中スウェット(汗)いっぱいだった。彼ほど能書きなど不必要で、体で愛とセックスを歌うシンガーはいない。まさに究極のシンガー・オブ・セックス・アンド・ソウル。

■ キース・スウェット最新作『ベスト・アルバム』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000UYGCB2/soulsearchiho-22/ref=nosim/

■ キース・スウェット・ライヴは今日10月30日、東京・ビルボード・ライヴ、その後大阪、福岡へ

■ メンバー(ビルボード・ライヴ、オフィシャル・ウェッブによる)

キース・スウェット/Keith Sweat(Vocals)
テレンス・カーター/Terence Carter(Back Vocals)
カランドラ・グレン/Calandra Glenn(Back Vocals)
ルイス・ヒル/Lewis Hill(Back Vocals / Rapper)
ディヴィッド・エヴァンス/David Evans(Keyboards / Musical Director)
アダム・レジスター/Adam Ledgister(Keyboards)
アンドレ・ハリス/Andre Harris(Bass)
ランディー・ハッチンソン/Randy Hutchinson(Drums)

■ Setlist: Keith Sweat Live At Billboard Live, October 29, 2007
セットリスト: キース・スウェット 

Show started 21:31
01. Something Just Ain’t Right
02. Don’t Stop Your Love
03. My Body
04. Keep It Coming
05. Make It Last Forever
06. Make You Sweat
07. I’ll Give All My Love To You
08. Just Got Paid
09. I Want Her
10. (There You Go) Tellin’ Me No Again
11. Nobody
Encore. Twisted
Show ended 22:45

(2007年10月29日月曜、六本木・ビルボード・ライヴ=キース・スウェット・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Sweat, Keith
2007-143
【キース・スウェット、女性のためだけに歌う】

眼中。

キース・スゥエットが17年ぶりの来日を果たして、ブラコン・ファンの間ではちょっとした話題になっている。昨日のライヴ、ファーストとセカンド、微妙に曲順などが違うようだ。また、今日のセットリストとも少し違うらしい。ちなみに、月曜のファーストはアンコールがなかったが、僕が見たセカンドはアンコールありだった。ところが、火曜(2日目)セカンドでは、なんとあろうことか、「アイ・ウォント・ハー」をやらなかった、というではないか。まじか。

昨日はキース作品をどっとCD棚から取り出し、すっかりキース・モードになった。月曜の深夜には、Jウェイヴの松尾潔さんの『ユニヴァース』でキース・スウェット特集2時間をやっていた。それを聴きながら昨日はブログの原稿を書いたが、番組中で僕が書いた8作目『ディドント・シー・ミー・カミング』のライナーノーツが紹介された。

僕もさすがに昔書いた原稿だと、書いたことさえ忘れているが(笑)、改めて読んでみて、ライナーに書いたドン・トレイシーとのことをまたまた思い出した。1987年12月にロスにいったときに、ドンと会い、彼の運転するホンダのシビックでLAのフリーウェイを走っているときに、ちょうどキースの「アイ・ウォント・ハー」がかかって、「これが今、すごくはやってる」と教わった。僕は個人的にあのシーンは、ほんとに昨日のようにフラッシュバックする。夕方だったと思う。でも、僕がなぜ彼の車に乗っていたのかが、今となっては思い出せない。LAに行ったときはまず僕もレンタカーを借りる。車社会なので、車なしだと動きが取れないからだ。だから、誰かと待ち合わせても、どこかに移動するときは、車2台で移動することが普通だ。

いずれにせよ、あのときのロス・アンジェルスのラジオでは、本当にひんぱんに「アイ・ウォント・ハー」がかかっていた。これを聴くと、この曲はニューヨークのサウンドなのに、そういうわけで、LAのフリーウェイが思い出される。

僕も2000年10月に彼に電話インタヴューをしたことがある。その様子もライナーノーツに書いたのだが、低音のものすごくいい声の持ち主で、かっこよかった。だが、質問に対する答えは短く、インタヴュー自体は盛り上がらない。ラジオ番組で松尾さんも言っていたが、「この人ほどインタヴューが盛り上がらない人はいない(苦笑)」というほどなのだ。

月曜もエロエロのステージを見ていて、このキースは女性のためだけに歌っているということを痛烈に感じた。「レディ〜〜〜〜〜ス!!」とは言うが、決して「ボ〜〜〜イズ」とか「ジェントルマン」とか言わない。深町さんも、自分は女性のためだけにピアノを弾いてきたと公言してはばからないが、キースもそのスタンスは「俺は女のためだけに歌ってるんだ」。そんなキースに男が話を聴いても、これは盛り上がらなくてもいたしかたない。男は眼中になしだ。いや、これぐらい徹底すればいいじゃないでしょうか。(笑) 

(2007年10月29日月曜、六本木・ビルボード・ライヴ=キース・スウェット・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Sweat, Keith
2007-143

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