【低予算から来るざらざら感のブラック・ムーヴィー】

続編。

昨日はマーチンさんの『ミッドナイト・ラヴ』の収録だった。毎月第三土曜日にFM横浜(84.7mhz)で深夜1時半から3時半まで放送されている番組だ。昨年4月からスタートしてこの5月21日放送分で14回目。

冒頭の特集のところでは、鈴木雅之・最新作『エボニー&アイヴォリー』と、これまでの四半世紀の音源の中から秘蔵物をご紹介。元町のソウル売り、魔黒ブラウンは、今回はアル・グリーンの新作。また、ソウル・ムーヴィーでは、このほどDVD化された『スーパーフライ』(1972年)とその続編『リターン・オブ・ザ・スーパーフライ』(1990年)をまとめて紹介する。

そこで、この『スーパーフライ』2本をを久々にビデオで借りて見た。とはいうものの、『リターン・・・』のほうは、見始めても見覚えがなかったので、おそらく初めて見たのだろう。

72年の『スーパーフライ』では、麻薬密売人の主人公プリーストが、生涯最後の大取引を成功させて大金を手にし、引退するところまでを描いたが、続編ではそのプリーストは、10年以上パリでかたぎの商売をしている。ところが、昔の密売人の相棒エディーが殺されてしまい、その葬式に出るためにニューヨークに戻るところから始まる。ニューヨークの空港に着いたプリーストは別室に呼び出され、麻薬密売団を壊滅させるために協力しろと脅される。

2本を続けてみると、ほんとに最初のはチープな感じの、あまり予算がかかっていない映画だなあ、ということがわかる。しかし、続編はさすがに予算があって、リッチなつくりだ。映画というのは、予算のあるなしが、画面にすぐでてしまうからおもしろい。ただ、予算が少ないからつまらない映画などということは必ずしも言えない。膨大な予算をつぎこんでも、つまらない映画はつまらないし、低予算ものでもおもしろいものはおもしろい。『スーパーフライ』は出演者、スタッフなどほとんどノー・ギャラでやっていたらしい。ブラック・ムーヴィーが脚光を浴びるのは、この『スーパーフライ』と『シャフト』が当たってからだから、しょうがないといえばしょうがない。

前作の音楽的ハイライトは、なんといってもカーティス・メイフィールドだが、続編でも彼の音楽が流れる。この頃の映画のリアル感というのかな、なんかざらざらした感触は、今となるととてもたまらなくいい。それは低予算のためかもしれないし、フィルムの質感ということもあるのだろう。1990年の『リターン・・・』には、そうしたざらざら感はない。シャビーな70年代のブラック・ムーヴィーを可能な限り制覇してみたい。

ENT>MOVIE>Superfly
ENT>RADIO>PROGRAMME>Midnight Love
【「魂のバーガー」〜フランクリン・アヴェニューのハンバーガー】

魂。

「世界でベスト5に入るミュージシャンでさえも、最後まで自分が満足できる演奏を求め続けるでしょう。(料理人も)それと同じですよ」 島津山フランクリン・アヴェニューのオウナー兼シェフの松本幸三さんはそう言う。 思わず料理人とミュージシャンを並列で語られて納得した。

リアルなハンバーガーを提供して今ではすっかり人気となったフランクリンだが、お店がオープンしたのは1990年9月25日のこと。はや15年だ。僕はたまたま家が近所ということで、開店当初からおじゃましているが、最初の頃はいついってもお客さんはまばらだった。今のように入るのに並んでいるなどというのはとても考えられなかった。開店から3年間はずっと赤字だったという。それも納得。なにしろ、普通の住宅街の一軒家でやっているため、そこを通る人など地元の人以外ほとんどいない。徐々にメディアに登場して、少しずつあちこちから人が集まり始めるようになった。おいしいバーガーだから最終的には客が集まるのも納得。

しかし、そのハンバーガーに賭ける意気込みはすごい。例えば、この店でもっとも人気のあるバーガーのひとつ、マッシュルーム・バーガーのマッシュルームも福島で生産されているものをわざわざ取り寄せている。4-5個でスーパーで3−400円くらいするものを10個くらい使っているというから、異様な原価率になる。生のマッシュルームをひとつ試しに食べさせてもらったが、これが実においしい。「これは、2日に一度そこから入荷します」という。「レストランは、個別の利益率とか考えたらだめです。これ単体だったら、うちもだめですが、みなさん、飲み物とかとってもらえるでしょう。だから、年間通してみれば何とかなるんです」 お客側からすれば超納得。

様々な種類のバーガーの中でもこのマッシュルーム・バーガーは自分で90点をつけてもいい作品だという。僕はこのマッシュルームもいいが、アヴォガド・バーガーとかテリヤキ・バーガーなども食べる。アヴォガドあたりは、幸三さんの採点だと「まあ、55点くらいかなあ(笑)」。「つまり、例えば、カリフォルニア産の取り立てのアヴォガドを使ったら、もっとおいしくなりますよ」というのだ。仮にカリフォルニア産のアヴォガドを一日おきでも飛行機で取り寄せていたら、一体コストはどうなることやら。でも、それも食べてみたい。かりにそれが1500円になっても納得だ。

彼にとって素晴らしい食材探しは、永遠のテーマだ。試して何かよいものを見つけたら、それでいく。そうして、現在は50以上のところから食材を仕入れる。「自分で作ってて、時に『これだ! うまい!』って思うことがあります」 そうやって日々、味を切磋琢磨している。よって、このお店のバーガーは開店15年を経ても味が落ちない。納得。

今この店に「修行」に来ている人物がいる、という。3年前に大阪でたまたまこのフランクリンの記事を雑誌で見て、修行させてください、とやってきた若者だ。だが幸三さんは、「修行には10年かかる」といい、結局、「少なくとも5年やれ」ということで、5年間の修行中だ。「いやあ、2-3年でね、ハンバーガーだけなら作れるようになるんですよ。でも、それだけでは足りない。もし今彼が店を出したら、必ずつぶれる。我々はもし修行させるのだったら、その修行した者が店を出すだけでなく、出して成功しなければならない。店を一軒出すとなったら、最低2-3000万円の資金がかかる。借金してやって、もし失敗したら、一生かかっても返せませんよ。だから、そこまでの責任があるんですよ」 おっしゃる通り。納得。

「つまり、ハンバーガーをただ作るのではなく、その物事の本質、哲学、魂といったものを学ばないと結局はだめなんです。うちは秘密とか秘伝とかそういうものは何もありません。(修行に来た人には)すべて教えます。秘伝とかあっちゃいけないんです。レストランというのは、おいしいものをおいしく、楽しく食べて、新しい生きる活力みたいなものが生まれればいいんです。そこに秘密は必要ない。だから、僕がレシピを教えるときも、ちゃんと相手にメモをとらせます。でもね、同じレシピで同じ材料で作っても、同じ味がでるかというと、それはまた別です。例えば、ドラムもそうでしょ。同じドラムという楽器を叩いても、名人が叩くのと、素人が叩くのではでてくる音が違う。それと同じですよ。例えば、「研修」に一月ほど来る人たちには、ただ見てろ、って言うんです。一月じゃ何も教えられないし、逆に見て、(バーガーが焼ける)音を聴いたりして、勉強していったほうが、まだ手っ取り早いんですよ」 魂のバーガーに納得。

幸三さん、話は変わるが、3月に放映されたテレビ番組『魂のワンスプーン』にでて見事勝利を収めた。それをその放映前にうかがった時に、「ちょっととにかく食べてみてくださいよ」と言われて食す機会があった。とろけた。

この店のメニューは90年のオープンから値段が変わっていないという。しかし、食材に関しては常にいいものがあれば変えている。「そりゃあ、絶対ね、100パーセントというのはあり得ない・・・」 そして、冒頭の発言へ。

5月から6月にかけて、あふれる緑から放出されるマイナスイオンたっぷりのテラス席は、絶好の季節である。僕もこの季節は必ずテラス席にて魂のバーガーを食す。

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フランクリン・アヴェニューには公式のホームページはありません。ただネットで検索するといろいろと出てきます。

例えば東京レストラン・ガイドには100近くのレヴューが載っています。
http://www.asku.com/cgi-bin/jrg/osform/JRGRead?osform_template=Restaurant.oft&;" target=_blank>http://www.asku.com/cgi-bin/jrg/osform/JRGRead?osform_template=Restaurant.oft&;;adbid=0&anewdbid=0&pRestId=4167

【フランクリン・アヴェニュー】
正式には「7025 フランクリン アヴェニュー」
7025 Franklin Ave.
東京都品川区東五反田3-15-18
電話 03-3441-5028
営業時間 11時から21時 (日曜は19時半まで)(途中休みなし)
定休日 なし
ハンバーガー 950円〜
予算 1人2-3000円
予約不可、カード使用不可

DINING>RESTAURANTS>ESSAY>7025 Franklin Avenue
【プリンス・トーク・イヴェント6月22日に】

イヴェント。

プリンスのトーク・イヴェントが来る6月22日(水)に新宿のロフトのイヴェント・スペース、ネイキッド・ロフトで行われる。プリンスの熱心なファンが主催するもので、プリンスの秘蔵映像などをふんだんにご紹介する。僕も後半、少しおじゃまして何かしゃべります。

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Talk about PRINCE vol.1 〜birthday&Grammy awards celebration〜

殿堂入りを果たし来日公演が切望される殿下ことプリンス。
デビュー当時のテレビ初ライブ映像から、80年代全盛期、
90年代、そして2005年最新ライブ映像まで一挙大公開!!
ビギナーの殿下ファンはもちろん、ミネアポリスにまで行ってしまう
famsまで必見映像多数上映。お祝いをall famsで!!
時代は、今もプリンス。

host:テリー植田(the digital garden) TUNA(the digital garden)
guest:吉岡正晴(writer/soul searchin’)

日時 2005年6月22日(水)
open 18:00 start 19:00 close 22:30
料金  1000円(当日券のみ)
場所 naked LOFT

http://www.loft-prj.co.jp/naked/
東京都新宿区百人町1-5-1百人町ビル1階
(西武新宿駅北口1分/JR新宿東口10分)
TEL 03-3205-1556

the digital garden web
http://thedigitalgarden.gooside.com/
吉岡正晴web
http://www.soulsearchin.com/
テリー植田web
http://terryueda.jugem.jp/

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【人生の最終章で歌い続けるジミー・スコット】

最終章。

結論から言えば、この日、ここにジミー・スコットのライヴを見に来れてものすごくよかった。この瞬間に立ち会えてよかった、という気持ちである。ジミー・スコットは、数年前、中野サンプラザで見た。その時と比べて、なんと弱々しくなったことか。ひじょうに複雑な気持ちが芽生えた。

ドラムス、ピアノ、ベース、サックス&フルート(同じ人)の4人編成にジミーが歌う。

現在79歳、今年80歳になるジミー翁は、すでに車椅子に乗ってステージ横まで移動、そこから杖が必要と思われるほどふらふらしながらステージ中央に進んだ。しばし、立ったまま歌っていたが、すぐに椅子に座る。しかし、歌声は枯れ、メロディーの音階もおぼつかない。歌っているというよりは、かろうじて、単語を発音しているといったほうがいい。こんなぎりぎりまで、彼は歌うのか、なぜ? まずそこに僕は痛々しさを感じた。もう充分歌った、ハッピーに引退してもいいのではないか。そんな風に思ってしまったのである。

彼のCDは、どれもすばらしい。しかし、彼のキャリアは不遇の連続だった。彼にスポットライトが当たるのは晩年になってからのこと。おそらく、今以上に声がでて歌声が素晴らしかった頃には、観客もまばらだっただろう。しかし、彼の声も枯れきっている今、会場は満員になり、多くの人がスタンディング・オヴェーションを送る。なんという皮肉だろうか。

それは、その瞬間のパフォーマンスへの拍手ではなく、彼の79年間の紆余曲折の人生すべてに対して送られているような気がしてならない。これまで、拍手をもらうべき時にはもらえず、しかし、その分を取り返すかのように、今万雷の拍手をもらう。

4曲歌って、1曲休み、あと最後の力を振り絞って2曲歌った。

なんともいえないが、途中から、彼のライヴ・パフォーマンスを見るのは、これが最期になるのではないかという気持ちになってきた。あの声の弱々しさ、あの体力のぎりぎりのところ。レイ・チャールズを2000年に見た時(死去4年前)でさえ、そこまでは感じなかった。あと、ジミー・スコットは何回ステージに立つのだろうか。

しかし、人生は最終的にはほぼプラス・マイナス・ゼロである。人生の初期にマイナス分があれば、後期にプラスが訪れる。ジミーの人生の後期は間違いなくプラスだ。

ライフ・オン・ザ・ロード、ライフ・オン・ザ・ステージ・・・。一旅芸人シンガー。ステージの上で旅立つことを目論んでいるのだろうか。

間違いなく、人生の最終章を歩んでいる彼の、貴重なライヴを共有できた、その点だけで、来た甲斐があった。また来年、来日するなら、足を運ぼう。

ブルーノート・ウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20050502.html

Setlist 2nd set

Show started 21:12

1. (Inst)(Band)
2. All Of Me
3. But Beautiful
4. I Got It Bad & That Ain’t Good
5. Pennies From Heaven
6. (Inst)(Band)(Octopus?)
7. Sometimes I Feel Like Motherless Child
8. I Cried For You

Show ended 22:30

(2005年5月3日火曜セカンド、東京ブルーノート=ジミー・スコット・ライヴ)
【『ソウル・ブレンズ』イヴェント開催】

イヴェント。

インターFM日曜午後の定番『ソウル・ブレンズ』(76.1mhz=毎週日曜午後2時から5時まで)の4周年を記念したクラヴ・イヴェントが、来る5月26日(木曜)西麻布のクラブ・クロスで開催される。『ソウル・ブレンズ』の出演者、スタッフ総出のほか、スペシャル・ゲストでダンスマンのライヴ・パフォーマンスも行われる。

お時間のある方、ぜひどうぞ。

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Inter FM "Soul Blends" 4th Anniversary Event At Club Xross

Inter FM "SOUL BLENDS"主催 クラブイヴェント第1弾!

■日時: 2005年5月26日(木) 19時OPEN〜MIDNIGHT

■料金: 男性¥3000/2ドリンク   女性¥2000/2ドリンク

■スペシャルライヴ: ダンス☆マン

■DJ’s

 DJ OSSHY、DJ NAMI、DJ YAMAKI and more GUEST DJs

■スペシャルゲスト

 DJ MARVIN DANGERFIELD、DJ CHISATO、
 吉岡正晴(SOUL SEARCHIN’) and more BIG SURPRISE GUEST!!!

■info CLUB Xross
 東京都港区西麻布3-13-3 ネクストフォルム西麻布1F、B1 
 http://www.club-xross.com/  TEL.03-5413-8600

ENT>MUSIC>EVENT>Soul Blends
ENT>RADIO>Soul Blends
【揚琴(ようきん)・悠久の調べ〜金亜軍さん】

悠久。

「今日は後でゲストがあります。中国の楽器、揚琴(ようきん)をプレイする金(きん)さんという方をご紹介します」 深町さんが、途中でそう言った。ピアノの深町純・月例会も数えること第52回。毎回ではないが、時々、様々なゲストが登場し、普段お目にかかれないようなアーティストに遭遇するチャンスがあって興味深い。

セカンドセットが始まる前、その金さんが揚琴という楽器をピアノの前にセットしていた。けっこう大きい。ちょっと持ち運びは気軽にはできない。横1メートル、縦50センチ、高さ1メートル弱くらいの箱に何十本(実際は150本以上)ものスチール製の弦が張られている。そして、それをバチというかスティックのようなもので、軽く叩いて音を出す。そのバチは、竹でできているそうで、ちょっと振るだけで、うまくしなる。ジャンルで言うと、打弦楽器(だげん・がっき)というそうだ。つまり、弦を叩いて音を出す楽器。

金さん(男性)は「私は、深町さんのピアノに恋してます」と告白し、少し楽器の説明をしてから、演奏を始めた。彼が叩いた瞬間、その音色に恋した。(笑) いやあ、これはいい音だ。虜になった。なんとも文字にしにくい美しい調べである。一番近いのは琴だろうか。あるいは、チェンバロあたりか。演奏方法は鉄琴・木琴を叩くようにして行うので、不思議な感じ。低音の部分の響きはギターのような、ベースのような、時に三味線のような音にも聴こえる。

1曲ソロの曲を演奏し、次に深町ピアノとデュエットを聴かせた。これは、タイトルは「薔薇の花のみっつの願い」。深町さんが、曲について説明してもらいましょう、というと、金さん、いきなり北京語でしゃべり始めた。ひとしきり終えると、拍手がきて、日本語での解説が。

「薔薇には、みっつの願いがあります、という曲です。ひとつは、時々、この美しい薔薇を見に来てください。ふたつ、これを摘まないでください。みっつ、これを忘れないでください」 ほ〜〜。見に来て、摘まないで、忘れないで・・・。これがみっつの願いか。その解説を聞いただけで、期待に胸が膨らむ。

ピアノのイントロから始まったこの曲は、ゆったりとした「悠久(ゆうきゅう)」という言葉がぴったりの美しい曲だ。すばらしい。これは、黄自(ワン・ツゥー=聞き書きのため、ひょっとしたら違っているかもしれません)という近代中国音楽の作曲家の作品で、彼は40代で他界したが、様々な美しい作品を多数残した。1900年代の人だという。「薔薇の花のみっつの願い」は、まさにイースト・ミーツ・ウェストという感じだった。3曲目は「彩雲追月」(これも聞き書きなので、まちがってるかもしれません。確認するのを忘れました)という曲で、途中ちょっとテンポが早くなり、リズミックになった。

演奏が終った後、金さんに話を聞いた。それによると、この楽器は約400年前にヨーロッパから中国に伝わったが、今では中国ではかなりポピュラーな楽器になっている。弦の数は150以上で、音階はピアノが88だとすると50以上の音がでる。これに、チューニングによって半音の上下があるので、かなりの音の数がでる。いくつかの奏法があるが、基本的には叩けば音がでるので、簡単ですよ、とのこと。

ところが、弦のところには、何も印がないから、どこが「ド」の音かまったくわからない。「試しに、ドレミファソラシド〜って叩いてもらえますか」 「それが一番難しいですが・・・(笑)」といいつつも、さらっとやってくれた。回りにいた人たちから「おおおおっ」の歓声。楽譜は、普通の五線譜のものでいいという。中国音楽の5音階以外の音がはいってもぜんぜんいいそうだ。

では、「さくらさくら」のさわりでもできますか、と言ったら、さらっとやってくれた。回りから拍手。これはしかし、いい音。

この楽器、ヤマハでそれほど高くなく売り出すそうだ。金さんは、この楽器の弾き方も教えるという。

彼に揚琴で「ジョージア・オン・マイ・マインド」を弾いてもらったら、どうなるのだろう。

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金亜軍さんのウェッブ(揚琴についての簡単な説明などもあります)
http://www.youkin.com/~kin/

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(2005年4月30日土曜・恵比寿アートカフェ=深町純・ライヴ第52回、金亜軍・ライヴ=飛び入り)
【太田剣ライヴ】

5人組。

縁あって、人気サックス奏者、太田剣率いるグループ「ニュー・ファイヴ」のライヴを見た。モーションブルーでの2デイズ。この日と次の日ではメンバーが違う。今日は5人。スロー、アップテンポ、ファンキーな作品とヴァリエーションに富んだ音楽性を聴かせる。

入れ替えなし。観客は6:4で女性のほうが多い。さすがファン層が若い。

ピアノの海野(うんの)は、80年8月生まれということで、まだ24歳。その若さにちょっと驚いた。太田が司会で、僕より10歳年下で、と紹介したのでうおおと思った。

サックスとトランペット(山口友也)との2管によるかけあいなどもおもしろい。また、曲によっての各人のソロ・パートもなかなか聴き応えがある。ドラムスもかなりシュアな感じで気持ちいい。最近はやりのエイメリーの「ワン・シング」のような固い音に近いかなとも、ふと思った。

スティーヴィーの「クリーピン」などもいい感じ。セカンドセットのオープニングはいきなりスティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」で、徐々に盛り上げていった。

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「太田 剣 ニュー・ファイヴ」 
メンバー 
太田 剣(sax)、山口友也(tp)、海野雅威(うんの・ただたか)(p)、安東 昇(b)、小松伸之(ds)

http://www.kenota.net/

(2005年4月28日木曜、横浜モーションブルー=太田剣ニューファイヴ・ライヴ)
【NHK『ライヴ・ザ・ソウル・ミュージック』公開生放送】

飛び入り。

数日前に尾臺さんから連絡をいただき、また、NHK−FMの『ライヴ・ザ・ソウル・ミュージック』が、29日に公開生放送でやるので、ぜひどうぞ、とお誘いを受けたので、出向いた。ライヴは、リアル・ブラッド改めリアル・スロット。そして、クワマン・ウィズ・スリー・ビックリーズ。スペシャル・ゲストに久保田利伸さん。リアルたちのライヴは番組の冒頭だったので、ちょうどまだうちで仕事をしながら聴いていた。

その後ニュースをはさんで7時20分から始まった頃に到着。あいかわらずのブラザー・トムさんと尾臺さんのかみあわないトークが絶好調。このやりとりは、そこらへんのつまらない漫才よりよほどおもしろい。こういうコンビのDJというか、司会ってめったにないのではないか。さすがのNHKも別にこれを狙ったわけではないだろうが、台本ではできないおもしろさ。特に尾臺さんが何か読もうとしたり、次に進めようとしたりしているときに、トムさんの話を「ふん、ふん」言いながらも全然聞いていない時が最高にはまる。(笑)

そんなこんなで笑っていたら、スタッフの方からちょっと飛び入りで出ませんか、と声がかかった。「え? 何をしゃべればいいんですか。何もネタもってきてませんが・・・」と言ったが、まあ、いつもの調子で流れでやればいいかと思って快諾。

その前に登場した久保田さんの熱血トークがひじょうにおもしろく、約1時間続いて、その後ワンクッションしておじゃました。久保田さんの『ソウル・トレイン』登場の感激ぶりは、ブラザー・トムも大いに喜んでいたが、日本人ならみな同じだろう。それと、久保田さんの2曲、どちらもよかった。特に「シャル・ウィ・ダンス」に使われたという曲、初めて聞いたが、これ、かなりよかった。日本語の乗せ方がすごくユニーク。思わず聴き入った。もう1曲は、カーティス・メイフィールドの「トリッピン・アウト」をサンプリングした曲で、これはこのリズムの勝ちという感じで、もうたまらない。

そして、久保田さんが去った後、マイクの所に行くと、なんと、トムさんレイ・チャールズの本を横に置いているではないか。超びっくりした。彼がその本を観客のみなさんに見せてくれていた。そこで、曲が終って尾臺さんに紹介されて、話は自然とレイ・チャールズになった。映画『レイ』のDVDの話になって、当然、その中に収録されているボツシーンの話になってしまった。

その後、クワマン・ウィズ・スリー・ビックリーズ。なんと、クワマンさんのお父さんが今日はトランペットを吹いていた。そのお父さんが選んだ一曲が、ニニ・ロッソの「夜明けのトランペット」。久々に聴いた。親子2代が同じステージでラッパを吹く図は、なかなかのものだった。

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前回のライヴ番組の様子

2004/10/03 (Sun)
My Mother Loved It, I Loved It And My Son Loved It: The Song Have Been Loved By Three Generations

http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200410/diary20041003.html

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【劇「コトブキ!』〜負け犬と勝ち犬の間で〜】

勝ち犬。

「売れっ子放送作家」というと怒られます。「超売れっ子放送作家、と言いなさい」(笑)なんて、番組、ご本の執筆、時にテレビ出演など超おいそがしのカニリカさんの第四弾戯曲『コトブキ!』を見た。すでに始まって何日か、初日に行こうと思ったが、なんと初日と千秋楽は即完とかで、27日に。

前回の場所からは、さらにグレイドア〜〜〜〜プの池袋の芸術劇場!  小ホールといえども、立派な芸術劇場です。キャパは約300。演劇を見るにはちょうどいい大きさか。観客の男女比は3:7くらい。女性のほうが多い。

30歳を前になんとか結婚にこぎつけた又野美紀(一色紗英)。年下の新郎、山下洋二(村上幸平)との結婚披露宴が始まろうとしている。そこで起こる悲喜こもごも。登場人物は全部で8人。それぞれが一癖も二癖もあるメンツで、一体何が飛び出るか・・・。

見終わった後、カニさんから「どうだった?」のメール。う〜む、どう返答したらいいものか。実は僕は男だからか、今回の作品にはなかなか感情移入できなかった。前作のほうがおもしろかったというのが最初の感想。そこで送った返事が「一色紗英がかわいかった」。答えになってない。(笑) すぐ折り返し、携帯のベルがなる。「あまり気に入らなかったんでしょう」

「負け犬」というキーワードで時流にのり、見事に「勝ち犬」になっているカニさんのことなので、もっとこの「負け犬」「勝ち犬」の対比があるかと思ったが、比較的さらっとした感じ。また、女性同士の会話(披露宴の出席者で、一人はすでに結婚、もうひとりは仕事ばりばりのキャリアウーマン)で、どろどろしたものがあるかと思ったが。

なにかこう、テンポ感がまったりするというか、セリフがよくありがちな、というか。とは思ったが、女性からは「いかにも、こういうやりとりありそう、リアル、リアル」という声があがるそうだ。なるほど、これは女性向けの劇なんですね。

僕の忌憚のない意見を言うとすれば、やはりストーリーの元となっている部分がありきたりすぎるというか、あまりに普通というか。それと登場人物のキャラが薄いということかなあ。それとも、最近の人たちの日常って、やはりこういう風に薄いのかなあ。となると、うまく現代の若者感覚を切り取ったということもできるかもしれない。あと、もっと前作のようにギャグがたたみかけるように出て欲しかったなあ。やはり、コメディーと銘打たれているので、「笑いに」来たという部分がまま、あったので。

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『コトブキ!』

公演日程:2005年4月24日(日)から5月2日(月)全13回公演。
場所:  東京芸術劇場小ホール2 
作:カニリカ 演出:三枝孝臣(日本テレビ)
出演:一色紗英 村上幸平 萩野崇  川合千春 田中理恵 小浦一優 椿隆之 ・岩崎ひろみ
チケット: 6000円
問合せ先:マシン 03-5475-2735

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前回カニリカ作品の感想文

2004/01/24 (Sat)
24-7 She’s Been Thinking About Gag: Comedy "Do Les Miserables"
http://www.soulsearchin.com//entertainment/theater/diary20040124.html

「コトブキ!」オフィシャルページ
http://www.h4.dion.ne.jp/~tai-setu/kongo.htm

カニリカ氏オフィシャル・ブログ
http://kanirica.cocolog-nifty.com/top/

(2005年4月27日水曜、池袋芸術劇場小ホール=コトブキ!公演)
【『ソウル・コネクション』に新コーナー『ソウル・サヴァイヴァー』】

切り口。

この4月から『フィールン・ソウル』から、『ソウル・コネクション』へと番組タイトルが変わったゴスペラーズの番組ですが、これまで毎月最終週にお送りしていた『ブレイジン・ミュージック』のコーナーが代わります。

先月まで登場していたブレイジン・ビューティー石島はるみさんにかわって、吉岡正晴が新しいコーナーをやることになりました。石島さんはコーナーには出演されなくなりましたが、構成と選曲で以前にも増してお力添えいただいております。おそらく、これからは毎週のようにあの「がはは」の声がオフマイク気味で聴かれると思います。新コーナーのタイトルは、『ソウル・サヴァイヴァー』。

過去50年くらいのソウルの歴史を紐解くと、必ず出会う様々なソウルの偉人たちがいますが、そうしたソウル・ジャイアンツにスポットを当て、そのアーティストを俯瞰(ふかん)しつつ、ソウル初心者にわかりやすく、さらによく知っている方にも独自の切り口でご紹介しよう、というものです。

最初おぼろげにソウル・ジャイアンツたちをとりあげて、わかりやすく解説しようということを考え、『ソウル・サヴァイヴァー』というタイトルにしていたんですが、ソウル・ジャイアンツに絞っていろいろ煮詰めていたら、タイトルをふと『ソウル・ジャイアンツ』にしたほうがいいかな、と思い、収録日にスタッフに言ったところ、「もうジングル作っちゃったので、ダメです」とあっさり却下されました。(笑)

第一回(2005年4月30日)では、4月といえば、やはりマーヴィン・ゲイということで、マーヴィンをご紹介します。番組は東京FMをキーステイションに全国東京FMのネットワークで聴けます。土曜の夜10時。チェキ。

ENT>RADIO>Soul Connection
【すぐ死ぬ文章】

永続性。

たまたま昨日NHKの昼の番組を見ていたら、阿川佐和子さんがでていた。話はいろいろおもしろかったのだが、お父さん(作家の阿川弘之氏)に文章について言われたという言葉が印象に残った。

それは「流行(はやり)言葉ばかり使っていると、文章はすぐに死ぬ」という言葉。う〜〜〜む、深い。そして、おっしゃる通り。よ〜〜〜くわかる。

やはり、僕もまあ、長い間いろいろ書いているが、結局、普通に書くのが一番という結論に達する。奇をてらって書くのもなんとなく、その場はいいのだが、そういうのは、結局後から読んでみると意外と恥ずかしかったりする。

そういう意味では雑誌などの定期刊行物に書くのと、CDのライナーノーツなど資料性の高いものに書くのではずいぶんと違う。雑誌の原稿というのは読まれる期間がせいぜい一ヶ月くらい。もちろん、将来その原稿を一冊の単行本にしようとなるなら、一ヶ月という短期ではないのだが、とりあえず、次の号がでれば忘れられる。(もっとも文字に印刷されたものは、ずっと残るからいつ誰に読まれるかはわからないが)

ところが、CDのライナーなどは、そのアーティストの新作が出たときに前のアルバムのライナーが読まれる。その間隔は1年であったり、2年であったり、スティーヴィーのようなものだったら、10年だったりする。そうなると、何年か前の気分で書いた軽い文章ではまずい。つまり「流行の言葉を使って、死んだ文章を書いている」となるとこれはちょっと恥ずかしい。

ウェッブはさらに微妙だ。何年後にも残るだろうが、消すこともできる。また、古いものも、即座に書き直しができる。まちがいもすぐに訂正できる。となると、ウェッブの文字というのは、紙媒体ほど重くないということなのだろうか。

ただいずれの場合でも、永続性がある文章、末永く読まれる文章というものは、確かに存在するということだろう。やはり、何度も推敲(すいこう)した文章は、長く読まれえる確率が高い。それはライナーだろうが、雑誌だろうが、単行本だろうが、ウェッブだろうが、本当は関係ないのだが。「文章がすぐ死ぬ」という言葉を聞いていろいろと考えさせられた。
【近藤房之助ライヴ・アット・ブルース・アレー】

つわもの。

いつかは見る機会があればと思っていた近藤房之助さんのライヴ。縁あって、目黒ブルースアレーで彼のライヴを見ることになった。日本人ブルースマン、ソウルマン。ギターを弾いて歌う。

ドラムス、ギター、キーボード、ベース、そして、近藤さん(ギターとヴォーカル)の計5人がオンステージ。どの曲も、アップテンポもミディアムも、エネルギーいっぱいにブルーズ魂を炸裂させている。

ほとんどしゃべりもなく、テンポよくショウは進む。おもしろい選曲は「青い影」と「ファンキー・スタッフ」。前者はプロコル・ハルムのバラードをちょっとソウルフルにしあげた。後者は、クール&ギャングのファンキーな大ヒット。のりのりで、観客の一部も立ち上がった。「ロック・ミー・ベイビー」では、各楽器のソロが続き、なかなかのつわものぶりを見せた。

http://www.fusanosuke.net/

Setlist
2005.04.21 Thursday @Blues Alley

01. Tobacco Road
02. When Will We Learn
03. Let Me Down Easy, Baby
04. Stormy Monday
05. Gotta Get Next To You
06. Me
07. Whiter Shade Of Pale
08. Come See About Me
09. Double Trouble
10. Love Of Mine
11. Funky Stuff
12. Travelling
13. Rock Me Baby
14. Same Ol’ Blues

Enc.1. Hoochie Coochie Man
Enc.2. Let’s Have A Natural Ball

(2005年4月21日木曜・目黒ブルース・アレー=近藤房之助・ライヴ)
【日本最古のソウルバー、ジョージ 41年の歴史に幕】(パート2)

伝説。

入口のところに人があふれ、思い思いに缶ビールなどを飲んでいる。中に入ろうとするが、いっぱいでよほど人を押しのけないと入れない。ひとりでどうしようかと思っていると、近くでバーをやっていて、以前別のソウルバーにいて今は独立しておしゃれなバーをやっている小林さんがいた。よくライヴなどで顔をあわせる。ちょうど店が終ってやってきた、という。まもなく、雑誌ブリオでソウルバーの紹介を毎月書いている高畠さん登場。実は彼に今日がジョージ最後だという電話をいれたら、やはりもちろん知っていて、前日も朝方まで飲んでいたという。大阪のアカペラグループのメンバーを紹介された。あるいは高円寺でソウルバーをやっているシンさんもいる。

結局、高畠さんは彼のコラムではこのジョージを紹介できなかった。彼はこの日本最古のソウルバーを、自分のコラムが最終回になるときに、ママとともに紹介しようとずっと思っていた。だが、ママが2001年10月に他界し、その夢は実現することはなかった。そして、今日名実共に閉店することによって、ジョージはそのコラムには登場しない。ただしブリオでは昨年、六本木特集を組み、その中でこのジョージは紹介した。

ジュークボックスから絶え間なくソウルが流れてくる。誰もがいつもやるように、カウンターに何枚もの100円玉が無造作に置かれている。ジューク用の100円だ。なんとか入口から中に入ってみると、そこは満員電車さながら。テーブルに上って踊っている人がいると思ったら、コシノジュンコさんの鈴木さんではないか。のりのりだ。「ロング・トール・サリー」がかかった。店の中のほぼ全員がコーラスを大声で歌う。大声で歌う曲は、これだけではない。ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」、テンプスの「ゲット・レディー」・・・。

中にいると男性が声をかけてきた。「吉岡さんですよね」「はい」「ずっと昔から文章、読んでますよ」「えっ、ありがとうございます」「いやあ、寂しいですよねえ。私もずっと昔から来ててね。こういう店が閉まっちゃうなんてねえ・・・」 

鈴木さんが僕をみつけて声をかけ、こっちに来いという。なんとか押しのけて久々の再会。コシノさんともかなりお久しぶりだ。20年以上前に、コシノさんのファッションショウの時にDJをしたことがある。「今日北京から帰ってきてね、ジョーイから電話がかかってきて、来たんだ」 

タバコの煙と人ごみで苦しくなって外にでると六本木・ホワッツアップのカツミさんがいた。3日くらい毎日来てました。こんなにつめてここに来たことはなかった、という。どうやら前日は8時過ぎまでどんちゃん騒ぎだったらしい。渋谷のファンキー・チキン店モリゲンの森元さんも店をしめてやってきた。川畑さんは、遅番の登場か。(笑) 

ジュークボックスはよく壊れる。だがある程度の知識があれば比較的すぐ直せる。それでも壊れた時のために、ママはジュークを2台持っていて、1台を修理に出さなければならない時には、1台を入れ替えていた。確かにジュークボックスのないジョージは考えられない。

壁一面に貼られた写真には、写真が痛まないようにセロハンが被せられている。だが、そのセロハンがタバコの煙で茶色っぽくくすんでいる。タバコのヤニによるそのくすみ方は、半端ではない。何十年という時の経過とともに、徐々に汚れていったものだ。そしてその染みのひとつひとつに41年のソウルが宿っている。

「マイ・ガール」がかかった。ジョージのテーマ曲のひとつでもある。コーラスのところはみんなで大合唱になる。"I guess you’d say
What can make me feel this way? My girl (my girl, my girl) Talkin’ ’bout my girl (my girl). " その様子を見ていて、壁に貼られたママの写真に目が行った。その写真はあたかも「最後の日は思いっきり楽しみなさい」と言っているかのようだった。

日本最古のソウル・バー、ジョージはこの日をもって伝説になった。

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ジョージが舞台の記事。

デイヴィッド・リッツ、インタヴュー
『両肩に刻まれた入れ墨』

http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/interview/ritz19940509.html
【日本最古のソウルバー、ジョージ 41年の歴史に幕】

閉店。

あの日本最古のソウルバー、ジョージ(英語表記はGeorge’s)が2005年4月23日(土曜)を持って閉店した。1964年(昭和39年)にオープン以来、41年間、ソウル・ミュージックの数々を六本木の小さな空間に流しつづけてきた。

23日、午後8時前にジョージに立ち寄った。普段ならまだ営業していない時間。外のネオンもついていない。しかし、中の明かりがついている。やっているのだろうか。とりあえずドアを押すと、開くので入ってみると、誰もいなかった。「ごめんくださ〜〜い」。トイレのほうから物音がして、まもなく、一人の男性がでてきた。「お店、いつまで?」 「あ、今日までです」 「ジョーイさんは?」 「あとで来ますよ」 まだジュークボックスに電源も入っていない。音のしないジョージ。誰もいないジョージ。

すると時を同じくしてジョーイさんが入ってきた。前に何度か会っているが、彼はこのジョージのママの息子さん。オーストラリアを本拠に金融関係の仕事をしていて、日本と行ったり来たり。なかなかここにこれない。また、隣の防衛庁跡地を三井不動産が大規模プロジェクトとして開発を始めたこともあり、店を閉じることにしたという。そして、改めて「お別れの会」を別のところでする、という。

中にあるポスターや、様々なソウルフルな想い出の品の数々は、すべて別のところに保管しておくという。もちろん、この名物ジューク・ボックスも。約1-2週間で店内を片付け、その後すぐではないが、最終的には建物自体が取り壊されるという。ここにあるポスター、ジューク、写真などダリル・ホールなどが欲しがっているという。ただ、まだどうするかは決まっていない。

「ぜひ、この店の写真をとっておいて欲しいなあ」と言うと、「ええ、カメラマンに頼んでみるつもりです」と彼。僕も携帯でジュークの写真を撮った。

ちょうど外に出ると、ジョージのネオンライトが点灯した。隣の大規模開発の広さから比べると、ジョージの面積などネコの額にもならない。これも時代の流れか。そのネオンや扉など、またしても、携帯で撮ってしまった。すると、店の前に一台のタクシーが止まり、そこから降りてきた女性もやにわにデジカメを取り出し、ジョージの外観を撮りはじめた。僕が驚いていると、すぐに扉を押して中に入っていった。

拙著『ソウル・サーチン』の「ミニー・リパートンの章」でもジョージを舞台にした。「ラヴィン・ユー」ガールは、ジョージ閉店のニュースを知っているのだろうか。

それにしても、この店が閉まるのは、実に寂しい。僕がここに初めて来たのはおそらく1972年のことだと思う。確かまだ高校生だった。大学にはあがってなかった時期だ。雑誌ソウルオンの広告を見て、六本木の駅から歩いてやってきた。最初入るときはさすがに怖かった。それでも73年以降にはちょくちょく来ていた。

壁一面に張られたポスター、アーティスト写真、サインの数々、音楽業界誌キャッシュボックスの表紙、旅行好きだったママが世界中を旅して、そこで使った何種類もの紙幣。わけのわからない見たこともない文字が書いてある紙幣について尋ねると、懇切丁寧にママはなんでも教えてくれた。客がひじをつくので、水平ではなくなっているカウンター。そしてそのカウンターはガムテープで補強されている。この店に入ると、僕は少なくとも30年はタイムスリップする。そして、何よりここの主役、ジュークボックス。これほどまでにソウルが染み付いた店は世界中どこを探してもないだろう。

夜中2時過ぎ、もう一度、来てみた。すると、店の外まで人があふれ返っていた。

(つづく)

PS: ジェームス・カーさん、閉店情報ありがとうございます。
【哀愁よろしく: ペーソス感じて】

(前日からのつづき)

握手。

30人も入ればいっぱいになるお店なので、座れない人が続出するほど大盛況だが、いろいろな新人アーティストたちが登場する。

ライヴでは「にしん」という平成のピンクレディーともいえそうな女性2人組、「ペーソス」というオジサン3人組(正確には50代の2人組+準メンバーのMC)、うら若き女性5人組のユニット「ピアニン・プラン」というのがおもしろかった。

特にペーソスにはやられた。昭和歌謡を平成にもってきて、ギター1本と哀愁を帯びた歌でやる。この歌詞がめちゃくちゃおもしろい。とぼけた味で、中年男の悲哀を浮かび上がらせる。歌詞を書き、歌うのが1952年山口県生まれ、どこかなぎら健一似の島本慶さん。ギターを弾くのが1953年愛知県生まれの岩田次男さん。そして、名調子の司会がスマイリー井原さん。歌手を目指して苦節30年、デビューして8ヶ月。なんとCDはPヴァインから。MCによれば、「デビューしたものの、どこの新聞も取り上げてくれず、唯一紹介してくれたのが、毎日新聞・・・」(観客からどっと笑い)とのことだが、けっこう話題になっているようだ。言ってみれば、オールドガイによるニューグループだ。

年をとって、どうのこうのと歌詞が続き、そして、「ビミョウ」とコーラスがはいる曲(タイトルは「涙腺歌」)がめちゃおもしろかった。他も、哀愁とお笑いと、どうしようもないせつなさが笑える。ほんとわらた。お笑いバンド、ノヴェルティー・バンドとして密かに注目だ。ちょっと、内緒でライヴ覗きにいきましょう。

後で紙資料・音資料ももらったのだが、その資料の中にいくつかの媒体に出たものがコピーされていた。そこには毎日新聞のものや、雑誌のものもあったが、なんと産経新聞の記事もあった〜〜。毎日だけじゃないではないの〜〜(笑) 

そして、ピアニン・プランは、ふだんはそれぞれ活躍しているメンバーが集まるプロジェクト的ユニット。この日は井上ゆかりさん(ピアノ)、ミヤさん(フルート)、平山織絵さん(チェロ)、里見紀子さん(ヴァイオリン)、はたけやま裕さん(パーカッション)の5人が自由自在に音をだす。ジャズとクラシックの中間というか、けっこうのりのいいオリジナル曲(「タンジェリン・クラウズ」)と「ストレート・ノー・チェイサー」を披露。女性パーカッションというのがなかなかユニーク。シーラEみたい。みんな素敵だ。

某レコード会社のKさん。アーティストと見ると誰にでも、「握手だけしていただけますか」と右手を出す。彼女たちにもかたっぱしから右手を差し出していた。今日ライヴを見せた新人たちがKさんのレコード会社から出る日は、果たして来るのか? 

(2005年4月20日水曜、荒木町ウィル(WILLE)=らっこ会)

Dead Line Is Here To Break

2005年4月22日
【物を生み出す原動力:締め切り】

死線。

毎日新聞の音楽欄「楽庫」のライターや、担当編集者、そしてレコード会社各社の宣伝担当などが一堂に会する「らっこ会」が四谷・荒木町の小さなジャズ・バーであった。楽庫ができて12年。その間、こうした懇親会は一度もなく、今回が初めての試み。楽庫の編集長的存在の川崎氏がいく組かおもしろい新人アーティストに声をかけ、ライヴも披露。これがなかなか粒ぞろいで、おもしろかった。

久々に会うライター氏もいれば、お名前だけはいつも拝見しつつ、対面は初めてという方とも名刺交換などをしつつ、その間隙をぬってレコード会社はぬかりなくプロモーションをするなどけっこうおもしろい会になった。

ちょうど、8時半過ぎに会場に入ろうとすると、ライター服部さんも入ろうというところ。「今、青山から来られましたか?」ときかれ「いや、直接うちから来ましたけど」。「今、青山でマリオンのショーケースがあって。同じ所から来たのかなと・・・」 「マリオ? また来てたの? あれ、オマリオンか?」 「いや、そのどっちでもないんです。マリオンというの」 「へえ、知らなかった・・・」 マリオ、オマリオン、マリオン・・・。わけわからん。(笑) 

たまたま隣になった中川五郎さんと久々に歓談。五郎さん、現在のプロジェクトはボブ・ディランの全曲の訳詞本をてがけているそうだ。すごっ。アルバム収録曲全部だけでなく、他のアーティストに提供したような作品、ライヴだけで歌った作品、曲を書いただけでレコーディングはされていない作品など、かなり網羅するようで、400曲以上のものになるという。「へえ、じゃあかなり立派な分厚い、高い本になりそうですね。5000円くらい?」 「いやあ、2冊に分けて木のボックスで10000円くらいになるんじゃないかなあ」 「おおおっ、それはすごい。何人くらい買うんだろう」 「わからないなあ。でも、ディラン・ファンはある程度いますからねえ」

これまでに五郎さん自身がアルバム対訳をてがけたものもあり、そうしたものはもう一度見直し、まったく手付かずのものは、改めて、訳し下ろす(こんな言葉あるか?(笑))そうだ。ただし、他の人が訳した物は、できるだけ見ないという。「やっぱり、他の人の読んじゃうとだめなんですよ、影響されちゃって」 「で、締め切りは?」「5月中」「ああ、じゃあ、けっこう進んでるんですか」「いや、ぜんぜん・・・(笑) ほんとやらないとまずいんですよ」 

しかし、ボブ・ディランなどは、初期は比較的わかり易いが、中期以降は「ダブル・ミーニング」だけでなく「トリプル・ミーニング」まであって、それをどう日本語に置き換えられるか、どう解釈するかは、もう訳す人にかかってくるので、どうにもしようがないという。

なんと、アメリカででたボブ・ディランの自伝の翻訳本と同時にリリースする計画らしい。こちらはボブ・ディランの大家ヘッケルさんが訳されるという。「じゃあ、絶対遅れられないじゃない・・・」「そうなんですよねえ・・・」とニコニコする五郎さんでした。

そこからしばし翻訳もの談義に。訳詞での苦労話をきいた。特に熱心なファンがいるアーティストの訳詞には、ずいぶんと文句をつけられるそうだ。

締め切りを英語ではデッドライン(死の線)という。それまでが死んでしまうくらい苦しいから・・・ということではない。それが最終期限ということだ。それを境にすべてが死んでしまうということかもしれない。だが、記録は破られるためにあるのと同様、締め切りも破られるためにあるのかもしれない。しかし、締め切りという存在がなければ、何も生まれない。締め切りが、物を作り出す大きな原動力となっているのも事実だ。

(つづく)

(2005年4月20日水曜、荒木町ウィル(WILLE)=らっこ会)
【恋人たちのサウンドトラック:ノラ・ジョーンズ】

不眠夜。

観客は、老若男女、実にヴァラエティーに富んでいる。サラリーマン風、OL風、学生風、けっこう年齢の行った白髪系。男女比もほぼ半々。ということはカップル率が高いということか。男性同士というのはいないので、若干女性のほうが多いかも。ノラ・ジョーンズの人気の底辺の広さが感じられる。

ノラが言う。「昨日ここに来た人いる? (若干の反応) そういう人たちのために、今夜のセットリストを少し変えてみたの」 なるほど、確かに、前日のリストと見比べると若干入れ替えられている。

前日歌われずに、この日歌われた作品は下記セットリストで、1、3,6,9、14、アンコール2曲目の計6曲。一方ドロップした作品は「ナイチンゲール」、「シー」、「ペインターソング」、新曲の「ロージー」、「ローンスター」の5曲。火曜日は1曲多かった。新曲が落ちたのは痛かったが。

6のボブ・ディランの曲、アンコール2曲目のグラム・パースンズの曲などはいかにもノラらしい選曲。「スリープレス・ナイト」もグラム・パースンズが歌っている。

そして、アコースティックのギターの響きから始まる「ドント・ノウ・ホワイ」。イントロのほんの2−3音だけで、いっせいに拍手と歓声。このショウの中でやはり一番人気がある作品だ。

彼女も、バンドもひじょうにスポンテニアス(自由自在)に曲を操る。したがって、セットリストも自由にいじれる。そこで、その場の雰囲気で曲が変わることもあるのだろう。

天井から数本のろうそくのような照明が吊るされている。舞台全体のトーンは深めの赤。ノラのトップに着ているものと同系統だ。

個人的には、ノラのたったひとりの弾き語りによる「ニアネス・オブ・ユー」が聞けて嬉しかった。イントロのピアノの部分で、「ドント・ミス・ユー・アット・オール」に思えたが、歌詞が入ったところで、「ニアネス」になっていた。こういう姿を見ていると、小さなピアノバーで、グラス片手にこういう曲を聴きたくなる。

「どきどきしてしまうのは、蒼い月のせいではない。それはあなたがすぐ傍らにいるから」 暗闇の中ピンスポットに照らされたノラがそう歌えば、会場の恋人たちには完璧なサウンドトラックとなるだろう。

ノラの歌声は、その会場にいる人々をやさしく、暖かい愛で包み込む。ノラの歌声の余韻にひたっていると、まさにスリープレス・ナイトになってしまいそうだ。

【Setlist】
2005.04.19. Live At Kokusai Forum Hall A

show started 19:11

01. Prettiest Thing ("Feels Like Home"-2nd album)
02. Those Sweet Words ("Feels Like Home"-2nd album)
03. Feeling The Same Way ("Come Away With Me"-1st album)
04. What Am I To You? ("Come Away With Me"-1st album)
05. I’ve Got To See You Again ("Come Away With Me"-1st album)
06. Going Going Gone (Bob Dylan)(not on Norah’s CD)
07. In The Morning ("Feels Like Home"-2nd album)
08. Carnival Town ("Feels Like Home"-2nd album)
09. Nearness Of You (Hoagy Carmichael) ("Come Away With Me"-1st album)
10. Humble Me ("Feels Like Home"-2nd album)
11. The Long Way Home (Tom Waits) ("Feels Like Home"-2nd album)
12. Don’t Know Why ("Come Away With Me"-1st album)
13. Creepin’ In ("Feels Like Home"-2nd album)
14. Above Ground ("Feels Like Home"-2nd album)
15. Sleepless Nights ("Feels Like Home"-2nd album)
16. Sunrise ("Feels Like Home"-2nd album)
17. Come Away With Me ("Come Away With Me"-1st album)
18. Life Is A Carnival (The Band) ("Live In 2004"DVD)

Enc.1. Turn Me On ("Come Away With Me"-1st album)
Enc.2. Ooh Las Vegas (Gram Parsons)(not on Norah’s CD)

show ended 20:49

(2005年4月19日火曜、東京国際フォーラム・ホールA=ノラ・ジョーンズ&ハンサムバンド・ライヴ)
【ファンキー居酒屋「SOUL NUTS」オープン:頭上注意】

新規開店。

恵比寿「ブラウンシュガー」で長年DJをやっていたDJ恵子さんが、白金「ダンステリア」のマイケル鶴岡さんとともに、三宿にソウルバー「ソウルナッツ」を2005年4月20日、オープンする。ソウルバーというよりは、「ソウル居酒屋」がコンセプト。一足先に、プレミア取材だ! 

三宿の交差点を渋谷から行くと右折。右手にゼストを見て、すぐに左手に「春秋」があり、そのちょうど向かいの2階。(ゼスト側) 約15坪。ボックス席約18にカウンターが約12席。ドリンクだけでなく、けっこう多くの食べ物がある。

20日から3日間はオープン記念ということで、食べ物も飲み物も、500円均一。そのメニューはソウルの日本盤シングルのジャケットをうまくアレンジしたもの。メニューの中には「ファンキー・チキン・ナンバー1」なども。一度チャレンジしないとね。

音の大きさは中くらいで、もし盛り上がってきたら、若干あげる。ミラーボールが入口と中に2個。DJ回りは、ターンテーブル2台にCDJが2台。レコードは約4000枚くらいか。この他、DVDなどで映像をモニターに映す。DJブースがカウンター中央にあり、全体を見渡せる感じになっている。DJ恵子によれば、カウンターの端ではなく、どうしても真中でDJをやりたかったんです、という。

営業はソウルバーなのに、オープン6時、そして、朝5時まで。なんでまたそんな早くから? 「8時とかにしておくと、お客さんが8時じゃまだやってないだろうって、結局来るのが9時10時になっちゃうんですよ。6時からやってれば、大丈夫でしょう!」 水商売の鏡みたいだな。(笑)

マグカップ、グラスも、ソウルナッツのロゴ入り。また、開店を記念して特別限定Tシャツ(3900円)も作って、店内で販売する。

そうそう、お店に入るときなんですが、右に引く、引き戸になってるんですが、ドアが低く、かがまないと頭がぶつかります。最初入ったとき危なかった。(笑) で、マイケルたちに言いました。「これね、絶対頭ぶつける人、続出すると思うよ」 「いやあ、でもねえ、こういう引き戸に絶対したかったんですよ。それに、頭ぶつけるような人はもう酔っ払ってるわけだから、注意しろ、と」 ということは、これは「酔い覚まし引き戸」あるいは「酔い警告引き戸」か。「頭上注意」の看板でも貼ってもらおうか。(笑) 

FUNKY居酒屋
SOUL NUTS(ソウル・ナッツ)
2005年4月20日水曜オープン

世田谷区池尻3−28−6
ファースト・アミューズ・ビル2階
電話03-3487-3493
営業時間 午後6時から朝5時まで
チャージ 500円
ドリンク・フード 500円〜
年中無休

ENT>SOULBARS>Soul Nuts
【輝く素朴さ:ノラ・ジョーンズ・ライヴ】

素朴。

なぜ僕がノラ・ジョーンズが好きなのか、ライヴを見ていてわかった気がした。まずなんと言っても彼女の声が好きだということ。これは何物にも代え難い。別にそんなにソウルフルな声でもないのだが、でもハートウォーミングな温かみのある声に惹かれる。聴いていてまったく不快感がない、落ち着く声なのだ。そこがいい。

もうひとつ。彼女がルーツミュージックをものすごく大切にしているということ。特に南部の音楽、南部ロック、ブルース、カントリーなどを自然に彼女は体内にいれて、自分の物として消化して排出している。そうしたルーツものは、僕も元々好きなので、それらが感じられるから、きっとノラのことも好きなのだろう。そこがいい。

南部のロック、南部のソウル、南部のカントリー。みんなどれも都会的に洗練されてはいなくて、どこかだささが残っていて、でも温かい。生活感に根ざしていて、まちがっても打ち込みなどで音を出さない。楽器の早弾きなどで技術を競うなんてこともなく、そこそこシュアに音を出す。リアルミュージシャンの生身の音が、そっとでてくる。そんな感じだ。そこがいい。

彼らは、メンバーがみんな仲良しの、例えば、大学の音楽サークルでやっているバンドのように映る。本来だったら、5-60人も入ればいっぱいになる小さなライヴハウスでやっているような仲間が、ノラのCDの大ヒットによって、5000人ものキャパシティーの大きな会場でやることになってしまっただけのことだ。5000人を相手にしようが、50人を相手にしようが、彼らがやることはいつも変わらない。そこがいい。

その不変なところがいい。その素朴さがいい。そのグリッター(光輝くけばけばしさ)がまったくないところがいい。素朴さこそが、見事に光り輝いていていい。(All that simplicity is gold)

ドラムス、ギター2人、ベース、コーラスにパーカッション。これにノラが歌とピアノ、キーボード。最近は、レイ・チャールズのカントリーでしばし、個人的にもカントリーへのなじみがあったためか、ノラのカントリー・フレイヴァーなサウンドも、違和感なく楽しめた。やはり、前述の「南部の音楽」というキーワードがいいのかもしれない。ブルージーでスワンピーで、カントリーで、どこかに一粒のソウルがある。そこがいい。

アルファー波がたくさんでて、しばしノラの歌声を子守唄にしてしまったが、彼女は自分が出したアルファー波の大きさを感じたのか、途中のトークで「みんな寝てるの? ずいぶん静かね。大丈夫?」と観客に声をかけた。空気を読むのがうまくていい。

最後のバンドの「ライフ・イズ・ア・カーニヴァル」はえらくよかった。こういうテンポのある曲をもう少し前半で挟めば、全体的な単調な流れにメリハリをつけられると思う。ノラのライヴはまあ、こんな感じでいいのだろうが、もう少しテンポのある曲をうまくいれるとなおいい。

個人的には、デューク・エリントンの「ドント・ミス・ユー・オール」(2作目に収録)とスタンダードの「ニアネス・オブ・ユー」(1作目)の2曲を歌ってもらえなかったのが、ひじょうに残念。歌ってくれたら、もっといい。

初めて日本で披露するという新曲(下記セットリスト15曲目)は「ロージー」というタイトルだ。ノラがローズ(キーボード)を弾きながら歌った。これもいい曲で、一度で覚えた。

ノラの歌声を聴いていると、アメリカの古き良き時代の「音楽の良心(conscience of music)」のようなものが強く感じられる。そこに「グリッター」(光輝くもの、けばけばしさ)は必要ない。そこがいい。

[タイトルのAll That Simplicity Is Goldは、All That Glitter Is Not Gold=
すべての光輝く物が必ずしもゴールドではない=をもじったものです]

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【ノラ・ジョーンズ関連記事】

ノラ・ジョーンズ・ライヴ『ヴェイカントな夜』(2002年9月7日)
http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/jones20020907.html
2002年の正式な日本初ライヴにインスパイアーされたショートストーリー。

2003/02/26 (Wed)
Experience you’ll never go through again
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200302/diary20030226.html

2002年4月の初来日時のショーケースライヴの模様を回想。

2004/01/20 (Tue)
Unchangeable Universality: Norah Jones Live @ Spiral Hall
http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200401/diary20040120.html

2004年1月のショーケース・ライヴの模様。

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【ノラ・ジョーンズ CD、DVD】

1) 『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』
2) 『フィールズ・ライク・ア・ホーム』

DVD
1) 『ライヴ・イン・ニュー・オーリンズ』
2) 『ライヴ・イン 2004』

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【Setlist】
2005.04.18. Live At Kokusai Forum Hall A

show started 19:15

01. Turn Me On ("Come Away With Me"-1st album)
02. Those Sweet Words ("Feels Like Home"-2nd album)
03. Nightingale ("Come Away With Me"-1st album)
04. What Am I To You? ("Come Away With Me"-1st album)
05. I’ve Got To See You Again ("Come Away With Me"-1st album)
06. She (Gram Parsons)("Live In 2004"DVD)
07. In The Morning ("Feels Like Home"-2nd album)
08. Carnival Town ("Feels Like Home"-2nd album)
09. Painter Song ("Come Away With Me"-1st album)
10. Humble Me ("Feels Like Home"-2nd album)
11. The Long Way Home (Tom Waits) ("Feels Like Home"-2nd album)
12. Don’t Know Why ("Come Away With Me"-1st album)
13. Creepin’ In ("Feels Like Home"-2nd album)
14. Above Ground ("Feels Like Home"-2nd album)
15. Rosie (new song)
16. Sunrise ("Feels Like Home"-2nd album)
17. Come Away With Me ("Come Away With Me"-1st album)
18. Life Is A Carnival (The Band) ("Live In 2004"DVD)

Enc. Lonestar ("Come Away With Me"-1st album)

show ended 20:49

(2005年4月18日月曜、東京国際フォーラム・ホールA=ノラ・ジョーンズ&ハンサムバンド・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Jones, Norah & The Handsome Band
微妙。

96パーセントとまで言っておきながら、この体たらく。一体どうなっているんだ、とお怒り、ごもっともです。御大に代わって、不肖・私目が謝らせていただきます。スティーヴィー、最新情報、4月17日付け。

まず、4月17日現在、マスターテープは日本に未着です。当初の4月27日発売はなくなりました。その後、発売日は29日、5月3日などと日々変化していますが、現時点でとりあえず、5月3日かその数日後みたいな感じののりです。

アートワークも未着です。レーベルコピー(曲目リスト、ソングライターのクレジットなどもろもろが書いてあるもの)も未着。したがって、最終的にどの楽曲がはいるのか、まだわかりません。

ただし、いくつか歌詞カードのテキストデータだけが到着しました。現時点で歌詞のテキストデータがきた作品は次の通りです。

1. So,What The Fuss(+)(Guitar by Prince)
2. How Will I Know(+)(Duet With Aisha Wonder)
3. I Can’t Imagine Love Without You (日本で演奏)
4. From The Bottom of My Heart(+)
5. Shelter in the Rain (for Syreeta and was written before she died)(+)
6. Please Don’t Hurt My Baby

この6曲目の「プリーズ・ドント・ハート・マイ・ベイビー」は、今回初めて見るタイトル。歌詞がきたのだから、おそらくアルバムには収録されるのでしょう。もちろん、この時点では確定はしていませんが。この他残る有力候補は、「トゥルー・ラヴ」、アリシアとの作品「イフ・ユア・ラヴ・・・」、「タイム・トゥ・ラヴ」、「ポジティヴィティー」、「スイート・サムバディー」の5曲。これで計11曲になります。

過去4枚のスタジオ録音アルバムの収録曲数は次の通り。

『イン・スクエア・サークル』(85年、10曲)
『キャラクターズ』(87年、12曲)
『ジャングル・フィーヴァー』(91年、サントラ、11曲)
『カンヴァセーション・ピース』(95年、13曲)

これらから考えると、やはり12〜13曲、多くて14曲いりといったところでしょうか。となると、11曲のほかあと多くて3曲ということになります。

ちなみに、3月17日付け日記でご紹介したアルバム収録曲候補は以下の通り。(+)は収録がほぼ確定。

1. So,What The Fuss(+)(Guitar by Prince)
2. How Will I Know(+)(Duet With Aisha Wonder)
3. True Love(+)
4. If Your Love Cannot Be Moved (Alicia Keys)(+)
5. Moon Blue (日本で演奏)
6. I Can’t Imagine Love Without You (日本で演奏)
7. From The Bottom of My Heart(+)
8. Shelter in the Rain (for Syreeta and was written before she died)(+)
9. Keep Fooling Yourself
10. A Time 2 Love(+)(Duet with India. Arie)
11. If the Creek Don’t Rise
12. Positivity(+)
13. Sweet Somebody(+)
14. Waiting For Eternity
15. The Well
16. Tears
17. Fear Can’t Put Dreams To Sleep
18. Passionate Raindrops
19. One Thing (Nigerian talking drum)

マスターはないんですが、しかし、ライナーノーツは4月7日までに書いていれました。何か到着したら、訂正とか加筆する時間はあるでしょうか。

ただし、シングル盤は日本で4月29日発売が決定しました。とりあえず、「ソー・ホワット・ザ・ファス」のシングルは出ます。

今日現在のアルバム発売確率は、う〜〜〜ん、少し落して、93パーセント! 微妙だなあ。 

ENT>MUSIC>ALBUM>Wonder, Stevie>A Time To Love

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