☆◆ケイリブの地下鉄での第三種接近遭遇

【Kaleb’s Close Encounters Of The Third Kind】

遭遇。

先日(5日)、ソウル・サーチャーズのケイリブと次回(8月28日、29日)の「ソウル・サーチン~マイケル・ジャクソン・トリビュート」の選曲などの打ち合わせをした。その話はまたするとして、そのとき、彼がこんな話をしてくれたので簡単に紹介しよう。

ケイリブはニューヨーク出身のキーボード奏者、ヴォーカリスト。日本に来てもう20年近くになるが、ニューヨーク時代にもニュー・エディション、レニー・クラヴィッツなどのライヴ・サポートをしていた。1987年の夏の夜、レニー・クラヴィッツのツアー・リハーサルをマンハッタンのスタジオで終えた後、いつものように彼は地下鉄でブルックリンの自宅に戻るところだった。

リハーサルが終わって夜10時すぎのこと。ケイリブはマンハッタンからいつもの地下鉄に乗り、ブルックリンの乗換駅ホイト・スカマーホーン駅で乗り換え自宅に向かう。この駅には地下鉄がAトレイン、Cトレイン、Gトレインと3路線はいっていて、ここには6車線用のプラットホームあるが、実際は4ホームしか使っておらず、残り2ホームが使われていない。

そのために、よく映画のロケーションなどで使われることで有名だ。この2レーンを使えば、電車も走らせることが出来、ホームの一般客の乗り降りもすべてエキストラで撮影でき、しかも、通常の電車を止めることなく撮影ができる。

マンハッタンの公道を借りることもできるが、その場合、一般車両は一時的に通行止めになり、迷惑がかかるわけだが、このホイト・スカマーホーンではその必要はない。

その駅は地下鉄のプラットフォームの階、さらにその次の階、そして、地上といわば3層になっている。使用されていない2レーンの上の部分はいわゆる「デッド・スペース」になっており、ふだん人は立ち入らない。乗り換えのためだけで、出口もないからだ。

その日、ケイリブがその横を通ると、数人の黒人やいろいろな人種の男たちが上の方を皆が見て、何かを待っている様子だった。一人だけ、警官がいてトランシーヴァーを持っていた。そこで彼らの列に割り込み、上に何があるのだろう、と見上げた。だが、何もなかった。しかし、彼らはずっと上の方を見続けていた。すぐ隣の男は派手な服に何かをじゃらじゃらつけたものを着ていたようだが、気にも止めず、それよりも上に一体何があるのかだけが気になった。

するとまもなく、爆音が鳴り出した。音は割れており、しかも地下鉄の駅ということでエコーが反響し、実にノイジー、まさに騒音だった。そして、まもなくトランシーヴァーを持った男が何かを残りの連中に言い、彼らは急に走り出し、上の方に向かった。一体何が起こったのか、ケイリブにはまったくわからなかった。しかし、彼らもいなくなってしまったので、ケイリブはいつもの通りいつもの地下鉄に乗り換え、自宅に帰った。

それから1-2ヶ月して、テレビで今日スペシャルなプロモーション・ビデオが初公開されるとさかんに宣伝していた。そして、そのビデオが流れ、しばらくすると地下鉄の駅がでてきた。その瞬間、ケイリブはあの日のことが蘇った。「おおっ、これを撮影していたんだ」 そのビデオは、マーチン・スコセジーが監督したマイケル・ジャクソンの「バッド」のショートフィルムだった。

ケイリブがあのとき上を見上げていた真横にいたのが、マイケル・ジャクソンその人だったのだ。「おおっ、シッット、あれはマイケルだったのか? あのノイジーな音楽は、バッドだったのか」 しかし、地下鉄で聴いたときは、まったく曲としては認識できないほど、爆音でエコーがかかりただの騒音だった。 

このホイト・スカマーホーンの地下鉄駅は、『ウォーリアーズ』、『カミング・トゥ・アメリカ』『クロコダイル・ダンディー』などの映画にも使われている。

「あの駅ではよくロケがおこなわれているからね。そこにどんな有名人がいても不思議ではない。でも、まさかマイケルとは思わなかったね」 

どこで、だれと出会うかわからないニューヨーク。ケイリブのマイケルとの第三種接近遭遇だった。

■マイケル・ジャクソン BAD

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ENT>Jackson, Michael
MICHAEL JACKSON>Short Film>Bad